NEC、2秒の違法動画も自動検出できる識別技術

-加工済み動画も検出可能。「MPEG-7」でも採用へ


5月7日発表


 NECは7日、インターネット上に違法でアップロードされたコピー動画を瞬時に自動検出できるという映像識別技術を開発したと発表した。

 この技術は、オリジナルの動画から、識別用の指紋情報(ビデオシグネチャ)を生成し、他の動画と照合するもの。単にコピーした動画だけでなく、テロップの追加や、カメラでの撮影、アナログコピーなど改変を行なった動画でも、高速/高精度に検出でき、違法アップロードの事前ブロックが可能になるとしている。

 また、現在の違法動画アップロード防止策である、目視によるチェックや、コンテンツに埋め込んだ特殊コードによる識別(電子透かし)などに比べ、高精度化と効率化が図れるという。

 この技術の特徴は主に下記の4点。

1.シグネチャを用いて改変動画を識別可能
映像の各コマの様々な位置に、大きさ/形状の領域をペアで複数設定し、各ペアの領域における輝度の差分値をシグネチャとして抽出。シグネチャは人間の指紋のように画像ごとに異なるため、従来対応が難しかったアナログキャプチャや再エンコード、テロップ重畳など改変を加えた動画でも正しく検出可能。
2.高い識別率と低い誤検出率を両立
フレーム中で輝度の差が少ない場合はその信頼度を低くするなどシグネチャの有効性を推定し、有効なシグネチャを重視して識別に利用。安定した高精度の識別率と、低い誤検出率を実現。国際標準化機関のテストにおいて、平均96%の識別率と、5ppm(5/100万)という低い誤検出率が実証された。
3.動画の一部のシーンでも検出可能
生成したシグネチャは高い識別性能をもっているため、従来検出が不可能であった2秒程度の短いシーンでも正しく検出可能。
4.家庭用パソコン程度の処理能力でも動作可能
シグネチャを1フレームあたり76バイトまでコンパクトに設計したことで、照合に用いる動画の特徴量を保持するのに必要なメモリ容量を大幅に削減。家庭用パソコン程度の処理能力でも、1秒間に1000時間程度の照合が行なえる。

 今回の技術は、動画の識別方法に関する国際標準規格「MPEG-7 Video signature Tools」として規格化される予定で、4月19日~23日に独ドレスデンで開催された第92回ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11(MPEG)会議においてISO/IEC 15938-3/Amd.4最終規格案として承認。今後、ITTFによる加盟国投票を経て、9月頃に正式な規格案として発行される予定。

 なお、5月12日から14日まで東京ビッグサイトで開催される「第13回組み込みシステム開発技術展」にもこの技術が出展される。



(2010年 5月 7日)

[AV Watch編集部 中林暁]