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ネットワークコンピューティングに特化した技術展示会「Interop Tokyo 2008」と、ワンセグやIPテレビ配信など、放送関連技術を中心に紹介する専門イベント「IMC Tokyo 2008」が幕張メッセで開催されている。会期は6月11日~13日まで。入場料は3,000円だが、事前登録することで無料となる。なお、InteropとIMCは同じフロアで行なわれており、入場すれば両方のイベントを観覧できる。
■ 讀賣テレビ開発の「とりし丸」が本格展開 讀賣テレビのブースでは、3月に開催された「デジテク2008」でも紹介していた、動画投稿サイトに違法アップロードされた動画を効率的に削除する、放送局やコンテンツホルダ向けソフトウェア「とりし丸」を紹介している。 デジテクのレポートでも紹介したように、PC上で動作する一種の動画検索ソフト。画面が左右に分かれており、右側が動画投稿サイトを表示するWebブラウザ、左側が動画のサムネイルを表示する領域。上部に用意されたウインドウに例えば「名探偵コナン」などを入力すると、投稿サイトの検索でヒットした動画が、サムネイルとして1,000件まで表示される。 サムネイル画面はタブで切り替えることで、YouTube、ニコニコ動画、GUBA、TVbreakなどを切り替え可能。そのサムネイルを放送局のスタッフがチェックし、違法なものをクリックしてチェックマークを付け、「削除申請メールを作成」ボタンを押すと、チェックした違法動画の全URLと、削除を依頼する定型文が書かれた削除依頼メールが作成されるというもの。必要に応じて右ウインドウのWebブラウザで動画内容もチェックできる。 従来は通常のブラウザで検索&チェックを行ない、メールソフトにそのアドレスを1つずつコピー&ペーストする手間がかかっていたが、同ツールの開発により、約200倍の効率化が実現できたという。讀賣テレビの著作権部門で4~5人のスタッフが実際に使用しているほか、NHKや在京の民放キー局にも既にソフトを紹介、良い反応を得ているという。
ここまでは3月の「デジテク」と同様。今回の展示では、「とりし丸」を9月からビジネスとして展開することが明らかにされた。ソフト開発は讀賣テレビだが、提供事業はアルビクス株式会社が実施する。このスタートに合わせ、「とりし丸」をASP化してブラウザ上で操作可能とした。IDとパスワードを発行し、放送局のスタッフなどが、いつでも、どこでも違法動画の検索/削除依頼ができるようになるという。 アルビクスでは新しい動画投稿サイトへの対応や、投稿サイトのデザイン/システム変更に合わせたプログラムの更新、ユーザーサポートなどを実施。月額有料サービスのビジネスモデルを予定している。 讀賣テレビ 技術局 電波技術部の中島良隆技術開発担当部長は、「とりし丸」の効果について、「導入当初は“毎日何千という違法動画の削除依頼を出さなければならないのか”と覚悟していたが、投稿されるたび、すぐに削除するという作業を繰り返していると“讀賣テレビの映像はすぐに削除される”、“チェックされている”という認識が広がり、投稿自体が減少した」という。 違法動画をコンピュータで解析し、自動的に特定/削除する技術の開発も各所で進められているが、中島氏は「今現在存在する違法動画を、なるべく早く削除することが重要。それが将来の違法動画そのものの数を減らすことにも繋がる。我々は動画内容の判断はあえて人間に任せ、申請処理をシステムで簡単にすることに注力した」という。今後はテレビ局以外にも、映画やゲーム業界、海外のコンテンツホルダにも「とりし丸」を紹介していくという。
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■ 日テレ開発の「ニコ動」的システムがテレビ金沢で放送テスト 日本テレビが開発を進めており、「デジテク2008」でも紹介されていたのが、テレビとワンセグ携帯電話を連携させ、テレビ番組を観ながら、複数の人と文字によるコミュニケーションがとれる「TVメッセンジャー」。 概要は既報の通り、サービス用のリンクサーバーが用意され、携帯電話を使って同サーバーの掲示板にコメントを書き込む。内容はそのまま、ほかのワンセグ携帯や、テレビのデータ放送画面などに表示され、参加者とコミュニケーションができるというもの。
B-CASカードの情報とメールアドレスを登録。ワンセグ対応携帯電話の場合もサーバーへあらかじめメールアドレスなどを登録することで個人を認証。従来は友人や家族など、招待した人のみがアクセスできるチャットルームを作り、その中でコミュニケーションを実施するものとして開発されていたが、今回新たにオープンチャットルーム的な「ゲストのぞき見」機能が追加された。
同じ番組を観ている人であれば、誰でも参加できるルームで、動画に文字を重ねることはできないが、「ニコニコ動画」のようなサービスが実現できる。実際に6月7日にテレビ金沢の番組「百万石まつり」で試験的に導入。ゲストの矢口真里さんが祭りを見物中に「獅子舞に噛まれたいな」などと書き込みを行なったところ、「噛まれにいっちゃってください」などの視聴者からのリアクション書き込みがあり、そのコメントがそのままワンセグ放送版で字幕スーパーとして表示された。
なお、書き込み内容はテレビ局側がサーバーに反映させる前にチェックしているが、書き込み文字数をワンセグ画面の2行程度の26文字に制限しているため、チェック用スタッフ1人で瞬時に内容が判断でき、タイムラグや番組制作コストを抑えられたという。番組放送終了後には、視聴者がオススメとして書き込んだカレー屋さんにスタッフや出演者が行ってみるなど、番組放送時間に囚われないコミュニケーションも実現したという。
■ BitTorrentで携帯電話向け動画配信
BitTorrentのブースでは、「Interop Tokyo 2008」の開催に合わせて実施している、角川書店やGHDの映画/アニメの無料配信を実際に視聴するデモを行なっている。映画は720p(1,280×720ドット)、アニメは640×480ドットで配信。形式はWindows Media Video。P2Pを使ったファイル転送ソフト「BitTorrent」のプロトコルを拡張した、商用版のコンテンツ配信サービスBitTorrent DNA(Delivery Network Accelerator)を使用しているのが特徴だ。
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さらに、BitTorrent DNAを利用した携帯電話向けのコンテンツ配信システムも紹介。セントリックスが開発したもので、PCで動作する「コンテンツダウンローダー」と、携帯電話に搭載する「SDコンテンツビューアー」、コンテンツの登録や管理、Webサイトの自動生成などを行なう「モバイル メディア セントラルサーバー」で構成される。
ユーザーはセントラルサーバーが生成したWebサイトにPC、もしくは携帯電話でアクセス。そこに登録されたコンテンツから視聴したいものを選ぶと、PCではそのままBitTorrent DNAを使ってP2Pからダウンロード。携帯電話では、指定したタイトル情報がPCに転送され、PCでダウンロードされる。保存したコンテンツはダウンローダーでSDカードへのコピーも可能で、ユーザーはSDカードを携帯電話に挿入し、「SDコンテンツビューアー」で再生するという流れ。PCの代わりにキオスク端末などでも対応できるという。
動画解像度はQVGA程度、ビットレートは400~700kbpsを想定。携帯電話網を使って配信しにくい数百MB~数GBのコンテンツ配信も可能で、夜間の携帯電話網のトラフィック圧迫を防げるほか、高速なダウンロードが可能なため、「携帯電話のダウンロードよりも、観たいコンテンツをすぐに観られる」という。現在コンテンツホルダへの交渉や、配信サービス事業者へのプラットフォーム提案などを行なっている。「国内販売が決定したiPhoneにも興味を持っており、可能ならば対応したいと考えている」(堀亮一 代表取締役兼CEO)という。
同ブースにはバッファローのNAS「LinkStation Mini」に、BitTorrentのダウンロード用クライアントを組み込んだモデルが参考展示。新モデルになるか、既存のNASへの対応ファーム提供になるかは未定だが、「9月頃には利用できるようにしたい」という。
■ 日立はダウンロード型動画配信対応の液晶「Wooo UT」を参考展示 日立ブースでは、液晶テレビ「Wooo UT」をベースに、ダウンロード型映像配信に対応させたモデルを参考展示している。同社の映像配信サーバーシステム「Videonet.tv」シリーズと組み合わせた展示で、基本は同社の配信、制作管理、登録管理、認証鍵管理サーバーなどのラインナップを紹介するためのもの。 現行のWooo UTのチューナユニットを改造したもので、デモではダウンロードしたMPEG-2のフルHD映像を表示していた。同社は薄型テレビ専用ポータルサイト「Wooonet」を展開し、アクトビラもサポート。 Wooo UTではアクトビラ ビデオ・フルにも対応しているが、「今回の展示は技術的にダウンロードに対応できることを示したもので、実際のサービスがどのような形になるかわからない。Wooonetでダウンロード配信をしたり、アクトビラがダウンロード配信を開始した際にそれに対応するかなど、詳細は未定。しかし、HDD内蔵テレビはWoooの特長でもあるため、ダウンロード配信対応に向けた開発には今後も力を入れていきたい」としている。
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■ iVDR関連機器も アドバンスト・コミュニケーションのブースでは、デジタル家電プラットフォーム「iSence」をベースにした、iVDR、およびiVDR iO、iVDR Xtremeに対応した機器を参考展示している。基本はIPベースのSTBだが、今後リリースされるというコンテンツを収録したiVDRメディアを再生するプレーヤー機能も内蔵。iVDR iOにも対応しているため、同スロットに地上/BS/110度CSデジタルチューナユニットや、FeliCa対応リーダ、メモリーカードリーダなどを別途追加できるという。 同じく参考展示されたホームサーバーは、複数のiVDRを搭載して大容量記録が可能なほか、iVDR iO対応スロットも備え、テレビ番組を大量に録画するビデオサーバー機能も備えているという。iVDRメディアは書き込みも可能な特性を活かし、「サッカーの動画を収録したメディアの再生メニューに、サッカー観戦チケット購入窓口を設け、チケット情報をiVDRメディアに記録。それをそのままサッカー場に持って行ってチケットの代わりに認証させることもできる」という。将来的には認証機能のみをカードに抜き出すことも検討している。
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■ そのほか
TBSのブースでは、デジタルラジオの1セグメント放送において、64kbpsという少ないデータ量で5.1chのサラウンド再生を実現する技術を紹介。5.1chのソースを2chのAACデータにダウンミックス。低ビットレートでも高音域を高音質にサンプリングできるSBR、チャンネル拡張情報(MPS)も組み合わせ、放送。受信機側でデコードする場合は2chのAAC+SBRからMPS情報を元に5.1chに復元。非対応のデコーダでは2ch音声として出力されるという。松下電器の協力で開発したというもので、今後はARIBなどに提案。カーステレオなどで対応機器が開発されるよう働きかけていくとしている。
また、デジタルラジオ関連の新情報としては、時期は未定ながら、AMラジオのサイマル放送実現に向けた検討が進められているという。 ACCESSとの協力で展示しているのは「NetFront Transcoder」を使用し、PC向けWebサイトをデジタルテレビのWebブラウザで表示できるよう変換するデモ。例えば通販番組を視聴中、データ放送画面からリンクを押すと、テレビ画面でPC用の通販ページを表示。その場で購入/決済などが行なえる。データ放送用に放送局が専用ページを作る手間が省けるのが特徴。FlashやJavaが使われたページでも、「Transcoder」側で処理し、その描画結果だけを転送しているため、携帯電話への負荷が低い。 ほかにも、動画配信「TBS BooBo BOX」のブースでは、720pのHD映像配信のデモを実施。フォーマットはWindows Media Videoで、プレーヤーを「Silverlight 2.0」のβ版を使って作成している。HD動画の配信は具体的に決定していないが、チャプタ選択で目的のシーンに飛べる機能の追加などと合わせて検討しているという。
朝日放送のブースでは、NTTなどの協力で、大阪にある朝日放送と、幕張メッセのブースを10Gbpsの高速回線で接続。4K2Kの映像を6.5GbpsのストリームデータとしてIP伝送し、ほぼ遅延無く、表示するというデモを実施。ブースにアストロデザインの56型、4K2K対応液晶モニターを用意。AV機器と組み合わせ、「未来のシアタールーム」としてアニメ映画「Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」などを上映した。「フルHD解像度の4画面として配信し、同期を取って表示している。具体的な高速回線の導入というよりも、将来の設備に向けた技術デモというイメージ」だという。
□IMC Tokyo 2008のホームページ
(2008年6月12日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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