【IFA 2010】シャープ、3D DLPプロジェクタ試作機など

-「クアトロン3D」を欧州に投入。UEFA協賛も決定


 シャープは、IFA 2010開幕前日に行なったプレスカンファレンスにおいて、液晶テレビ「AQUOSクアトロン(Quattron)3D」の欧州市場への投入を発表した。

 また、3日に開幕したIFAの同社ブースでは、AQUOSクアトロン3Dに加え、3D対応の新DLPプロジェクタ試作機なども展示されていた。

「AQUOSクアトロン3D」のLE925シリーズ

 欧州に投入されるのは「AQUOSクアトロン3D」LE925シリーズの2機種(46/60型)と、「AQUOS クアトロン」LE924/LE824/LE814シリーズの5機種。9月初旬に欧州(約40カ国)で発売される。3D対応モデルの店頭予想価格は60型が4,000~4,500ユーロ、46型が2,500~2,800ユーロの見込み。

 「AQUOSクアトロン3D」は、4原色技術のQuattronパネルと、高開口率化のUV2A技術、配線幅削減で光の透過率を高めるFRED技術、残像感を低減するスキャニングバックライト技術の4つを搭載。3Dテレビの課題だった明るさ不足やクロストークなどの解消を図っていることが特徴となっている。


シャープの欧州・中東欧本部長、佐々岡浩氏

 会見ではシャープの欧州・中東欧本部長である佐々岡浩氏が同社のこれまでの3Dディスプレイ開発について「1992年に研究開発を初め、2000年には世界初の携帯電話向けのカラー3D/2D対応ディスプレイ技術を開発するなど3D液晶技術をリードしてきた」と振り返る。近年の3D需要の高まりに期待を寄せながらも、従来の3Dテレビ技術に対しては「映像が暗い」との指摘もあったことから、同社の「AQUOSクアトロン3D」による“明るく、クロストークを抑えた3D”の強みをアピールした。

 なお、クアトロン技術は欧州の「EISA(European Imaging and Sound Association)アワード」においても2010-2012年の「European TV Innovation 」を獲得。受賞製品はEISAのロゴを冠して訴求されることが多いが、クアトロンは「技術」そのものが受賞したことにより、対象製品すべてにEISAロゴを使用することができるという。


グリーンフロント堺におけるCO2削減への取り組みなども説明された

 2010年度の液晶テレビの販売台数はグローバルで1,500万台(前年比147.2%)、うち欧州は160万台を計画しており、その中で3Dテレビの今年度下期の販売目標は、60型/46型の2モデル合計で約2万台を見込んでいる。なお、同社では2010年度にグローバルで販売する液晶テレビの5~10%程度を3D対応にすることを目指している。

 また9月からは、欧州のワーナー・ブラザーズ・ピクチャー(WBP)とコラボレーションし、店頭においてAQUOSクアトロン3Dにワーナー作品を流すといったことも行なわれる。



■ UEFA EURO 2012に「トップパートナー」として協賛

 同社は、欧州で人気の高いスポーツイベントであるUEFA欧州サッカー選手権「UEFA EURO 2012」などに“トップパートナー”として協賛することも決定。欧州サッカー連盟と契約を8月31日に結んだことを明らかにした。

UEFAのデビッド・テイラー氏(左)と、Sharp Electronics Germany/Austria社長のフランク・ボルテン氏(左から2番目)、ミス IFA(右から2番目)、佐々岡氏で、UEFAの優勝カップを囲んで撮影

 欧州のナショナルチームが4年に1度の戦いを繰り広げ、欧州においてはワールドカップを凌ぐ人気ともされる国際サッカー選手権「UEFA EURO 2012」。

 スポンサーの中でも最上位とされる「トップパートナー」となり、大会期間中は液晶テレビAQUOSなどのAV製品や、ソーラー関連製品などの広告に大会ロゴが使用される。同社は今回の協賛契約を通じて「環境先進企業」としてのブランドイメージを向上させ、欧州を中心に事業拡大を図る。

 IFAの会見では、UEFAのCEOであるデビッド・テイラー氏も来場。「フットボールは、これまでペイテレビやHDTVなど、テレビ業界の歴史に大きなイノベーションをもたらしてきた。今回の強力なパートナシップは大変喜ばしい」と歓迎の意を表した。



■ ブースでは3Dプロジェクタ試作機や裸眼3Dデジカメのデモも

シャープブースの入り口

 IFAのシャープブースでは、欧州における発売が決まったAQUOSクアトロン3Dを展示。3Dでも高画質を追求するため、UV2Aなど4つの主要技術を解説するコーナーを設けるなど、他社3Dテレビとの差別化を図った構成となっている。

 また、新モデルの大きな特徴であるネット機能「AQUOS NET+」についても紹介。日本における「アクトビラ」のように、PhilipsやLoeweといった複数社との共通プラットフォームを採用し、インターネットを通じたビデオなどのコンテンツ配信に対応している。


クアトロンシリーズの展示クアトロンの技術展示。右が4原色(RGBY)、左がRGB4原色パネル(右)とRGB(左)の明るさ比較
4原色パネル(右)とRGB(左)の色表現の違いスキャニングバックライト技術の説明「AQUOS NET+」の展示

 その他では、試作モデルとして3D対応のDLPシアタープロジェクタを出展。型番は「XV-Z17000」で、3D映画のトレーラーを使った投写デモを行なっている。発売日や価格などは未定。試作機は0.65型のフルHD DMDを搭載。明るさは1,600ルーメン、コントラスト比は3万:1となっている。

 また、欧州でAQUOSクアトロン3Dと同じタイミングで発売するという薄型デザインのBlu-ray 3D対応プレーヤー「BD-HP90S」をテレビと組み合わせ、3D対応ホームシアターとして提案するコーナーも用意されていた。
 

3D対応プロジェクタ試作機のデモ上映も3D対応Blu-rayプレーヤーと組み合わせたシアター提案
裸眼立体視対応の小型液晶ディスプレイ

 また、裸眼立体視対応の中小型液晶も展示。3.8型/800×480ドットと10.6型/1,280×768ドットの2種類で、いずれも視差バリア方式を使った裸眼立体視が可能。3D表示時は横方向の解像度がそれぞれ半分(3.8型は400ドット、10.6型は640ドット)となる。立体視可能な距離は3.8型が約30㎝、10.6型が約50㎝。

 このうち3.8型の液晶を使った、3D静止画カメラのコンセプトモデルも展示。レンズ2個を備えた薄型のカメラで、撮影した3D静止画を本体の液晶で立体視できるほか、3DテレビにHDMI接続して3Dで観ることも可能となっている。


3D対応デジカメのコンセプトモデル背面液晶で裸眼立体視が可能奥にあるカメラに向けて立体的な静止画撮影ができるというデモを行なっていた


(2010年 9月 4日)

[AV Watch編集部 中林暁]