NICT、200型の裸眼3D技術を開発。JVCケンウッドが協力

-縞状ノイズを低減、滑らかなハイビジョン立体映像表示


200型の裸眼3D表示を実現

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT) けいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターは25日、プロジェクタを使った200型サイズの裸眼立体表示技術を開発したと発表した。

 今回の技術に使用したプロジェクタとスクリーンは、'09年度に総務省から受託した「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発」の一環として、JVC・ケンウッド・ホールディングスと共同で開発。複数台のハイビジョンプロジェクタユニットを配したプロジェクタアレイでスクリーンの裏側から投写、スクリーンを通じて映像を見ることで、見る人の動きに応じた自然な立体像を表示できるという。

 この技術をもとに世界最大という200型の裸眼立体ディスプレイを試作。実物大の車などの大型立体映像をハイビジョン画質で表示できるようになった。主な用途としては、車体などの工業デザインや、パブリックビューイングなどの電子公告、ショールームでの活用が見込まれている。

200型3D映像の表示例。左側から車体を見ると(写真左)、車内が少ししか見えないが、右側に回り込む(写真右)と、車内の様子がよく見える

 これまでNICTは70型クラスの3Dディスプレイを試作してきたが、「等身大の人物や実寸大の車などの立体物を多人数で共有できる200型サイズの大画面化技術が必要」として、開発を進めていた。しかし、画面サイズを大きくすると、縞状ノイズが生じる、立体像がぼやける、観察者の動きに対し不自然な見え方になるといった画質低下の問題があった。

 そこで、大画面化に伴う立体像の画質低下の原因を数値解析。大きな要因の一つは、視差画像間に生じる縞状ノイズだった。このノイズの量は、おもに視差画像間の輝度や色の違いに影響されることから、対策としてプロジェクタ内部に輝度分布や色バランスを精度よく調整する機能を実装、ノイズを低減した。

 表示するスクリーンには特殊な拡散フィルムと集光レンズを使用。このスクリーンの光制御の精度が立体像の解像度や運動視差のなめらかさに大きく影響することから、最適な光制御のために拡散フィルムの評価/選定と集光レンズの設計を行なった。その結果、50以上の多くの視差画像を高密度に表示できるようになり、なめらかな運動視差をもつハイビジョン画質の大画面立体像表示が可能になったという。

 なお、現時点ではCGの表示のみ対応しているが、人物や風景などの実写画像も表示できる技術の開発に取り組む。また、視差画像を約200まで増加させ、より多くの人が鑑賞できるようにする。

立体表示の原理開発された200型裸眼立体ディスプレイの構成図


(2011年 1月 25日)

[AV Watch編集部 中林暁]