シャープ、液晶テレビの年間出荷計画を下方修正へ

大画面化戦略が進展。北米市場で60型以上が56%に


シャープの代表取締役兼副社長執行役員の安達俊雄氏

 シャープは、2011年度上期(2011年4月~9月)の連結業績を発表。2011年度の液晶テレビの出荷計画を下方修正した。

 出荷台数は年間1,500万台の当初計画を1,350万台に修正。売上高も6,800億円から6,400億円に修正した。出荷台数に比べて売上高の修正幅が少ないのは、液晶テレビの大画面化の進展が見逃せない。

 とくに北米市場における60型以上の出荷台数が急激に増加しており、2011年度第2四半期(2011年7月~9月)の北米市場向け液晶テレビの出荷台数のうち、56%を60型以上が占めたという。上期全体でも北米市場向けに出荷した77万台のうち、49%が60型以上だったという。その結果、北米市場における第2四半期の液晶テレビの売上高は前年同期比57.3%増になっている。

 シャープでは、2011年6月3日に、亀山工場を中心としたモバイル液晶事業の強化と、大型テレビ向けおよびNon-TV向け大型液晶事業の拡大を目指す液晶事業の構造改革を発表した。第1四半期には、4月~5月の半ばにかけて液晶パネルの生産を停止しており、その影響が上期業績には残っているが、「北米市場においては、60型以上の大型液晶テレビ市場を自ら作っていったことが功を奏した。また、構造改革の進捗に対する成果が出ている。大幅な収益改善による液晶パネル事業の黒字転換が達成できたのに加えて、液晶テレビ事業においては、多くのメーカーが赤字となるなか、当社はリーマンショック以降、9期連続で黒字を継続している。第1四半期から第2四半期にかけ、業績の急回復が見られている」(シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の安達俊雄氏)などとした。

液晶事業改革のコンセプト第2四半期実績
シャープの取締役兼執行役員経理本部長の野村勝明氏

 堺工場においては、60型以上の液晶パネル生産比率を高めており、直近の稼働率は9割にまで高まっているという。

 シャープの取締役兼執行役員経理本部長の野村勝明氏は、「10~20%程度の生産調整はあるだろうが、今後も9割程度の稼働率を維持していく考えである」と語った。

 さらに、シャープ独自の中小型液晶パネル「IGZO(イグゾー)」の生産を、2011年11月から開始することを明らかにしたほか、来年春には亀山第1工場でスマートフォン向けパネルの生産も開始するとした。



■ 通期業績予測は下方修正。タイ洪水はBDレコーダに影響

通期業績予測は下方修正

 一方、シャープでは、2011年度通期業績見通しを下方修正した。

 2011年6月3日の公表値に比べて、売上高では2,500億円減の2兆8,000億円、営業利益では120億円減の850億円とした。経常利益および当期純利益については変更はない。

 「円高の影響や事業環境が厳しいこと、タイの洪水の影響がある。タイには2カ所の生産拠点があるが、直接的な影響はなく、8割程度の操業率を維持している。だが、今後は部品調達や物流面での影響が懸念される。事業環境と上期の業績をみて、修正を決定した」(安達副社長)という。

 タイの洪水の影響は年末商戦でのBDレコーダの生産にも影響すると見られるが、「HDDはウェスタンデジタルから調達している。10月分については確保しており、11月分から影響が出るとみている。また、12月はさらにその影響が大きくなると予想しており、代替品が確保できるかどうかが鍵になる」と語ったほか、「冷蔵庫のコンプレッサの調達や電子レンジの部品にも影響が出ることになりそうだ。生産規模で数100億円規模の影響が出るだろう」とし、業績見通し修正の要因のひとつに位置づけた。

 2011年度上期(2011年4月~9月)の連結売上高は前年同期比12.6%減の1兆3,145億円、営業利益は22.8%減の335億円、経常利益は10.6%減の208億円、当期純損益は前年同期の143億円の黒字から、398億円の赤字となった。

 また、第2四半期(2011年4月~9月)の連結売上高が前年同期比11.6%減の6,742億円、営業利益は43.5%増の300億円、経常利益は246.8%増の215億円、当期純利益は161.1%増の94億円となった。

 安達副社長は、「第2四半期は、第1四半期に対して増収増益を達成。だが、前回公表予想については、欧米や中国など世界主要市場における景気減速や、金融市場の混乱、価格ダウンの影響により、売上高は未達。しかし、各利益についてはほぼ計画通りの進捗」とした。

 上期の部門別業績では、エレクトロニクス機器の売上高が9.0%%減の8,674億円、営業利益は23.0%増の461億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が15.1%減の5,809億円、営業利益は21.5%減の153億円。

 液晶テレビの販売台数は前年同期比9.5%増の688万台。液晶テレビ事業の売上高は前年同期比14.8%減の3,112億円となった。

 地域別の出荷台数は、日本が前年同期比9%増の388万台、北米が2%増の77万台、欧州が4%減の62万台、中国が4%増の99万台、その他地域が60%増の61万台。

 「国内では、アナログ停波後にテレビの出荷台数が減少し、2~3台目の需要が中心となったことで平均単価が下落し、厳しい状況となっている。だが、欧州を除くすべての地域でテレビ事業は黒字化している。北米市場において、液晶テレビ事業が黒字化したことが大きい。今後は、軽量、薄型、ワイヤレス技術で新たな視聴スタイルを提案するフリースタイルAQUOSを拡大。大型液晶テレビのラインアップの拡充と、地域拡大を図る」(安達副社長)と語った。

 携帯電話の売上高は19.7%減の1,726億円、販売台数は22.6%減の411万台。

 「従来型携帯電話の落ち込みや海外メーカーとの競争激化により、厳しい状況で推移しているが、高画質、低消費電力を実現するパネルを搭載した製品による差別化によって、国内トップシェアを堅持する」などとした。

 また、健康・環境機器の売上高が10.6%増の1,477億円、営業利益が85.9%増の154億円。情報機器の売上高が2.4%増の1,387億円、営業利益は58.5%増の154億円。「国内における節電意識の高まりがある一方、ASEAN地域での冷夏により、海外でのエアコンの販売が減少。しかし、大型冷蔵庫やLED照明などの高付加価値商品が伸張し、モデルミックスが変化している」という。

 電子部品の売上高は前年同期比21.7%減の6,358億円、営業利益は72.5%減の44億円。そのうち、液晶の売上高は前年同期比24.2%減の4,098億円、営業利益は30.3%増の70億円。太陽電池の売上高は14.9%増の1,105億円、営業損失はマイナス85億円の赤字。その他電子デバイスの売上高は18.5%減の1,153億円、営業利益は11.7%減の59億円となった。

 太陽電池は、省エネ意識や再生可能エネルギーへの関心の高まりがあり、国内では黒字となったものの、主力市場である欧州での金融不安、欧州各国の電気買い取り制度の大幅かつ急激な見直しにより、需要が停滞。価格下落の進行と円高の進展などにより海外での収益環境が悪化。「2011年度下期まで赤字が続くだろう。2012年度にはこの状況を回復したいと考えており、地産地消の推進や、発電事業などの取り組みで改善を図る」と語った。


(2011年 10月 27日)

[ Reported by 大河原 克行]