スマホ向け放送「NOTTV」は月額420円で4月1日に開始

-3ch放送と蓄積型。「オールナイトニッポン2部」など


左からmmbiの二木治成社長、同社の小牧次郎常務、NTTドコモの山田隆持社長、フジテレビの豊田皓社長、スカパーJSATの高田真治社長、日本テレビの大久保好男社長、TBSの石原俊爾社長、電通の橘益夫専務

 mmbiは、2012年4月1日に放送開始予定の携帯端末向けV-Highマルチメディア放送「モバキャス」事業に関する記者発表会を開催。「NOTTV」(ノッティーヴィー)の基本料金を月額420円とすることを明らかにしたほか、「オールナイトニッポン2部」を毎週月曜~金曜に放送することなどサービス内容を紹介した。

 また、mmbiは第三者割当増資を実施したことも発表。NTTドコモやテレビ局など既存の株主に加え、シャープ、東芝、パナソニックモバイルなど11社が新規株主となり、ドコモらも増資したことで481億円を調達、資本金を496億円に増強した。

 記者発表会には、NTTドコモの山田隆持社長のほか、フジテレビ、日本テレビ、TBS、スカパーJSAT、電通からも代表者が登壇。各社のモバキャスへの取り組みや、新放送への期待について語った。



■ 3chリアルタイム放送と蓄積型放送。「オールナイトニッポン2部」復活

 「モバキャス」は、ISDB-Tマルチメディアフォーラムが2012年春に開始予定の携帯端末向けマルチメディア放送(V-High)。mmbiは、このモバキャスにソフト事業者(認定基幹放送事業者)として参入。「NOTTV」という局名で放送する。

 地上アナログ放送終了後の帯域を使って放送され、サービスエリアは開始時点で関東(東京スカイツリーから放送)、東海(愛知、三重)、関西(大阪、京都、奈良)、福岡、沖縄の15都府県を予定。開始時は世帯カバー率約60%、1年目で約76%以上(29都府県)、3年目で約90%以上(+14道県)を見込んでいる。

 対応端末は、開始時の4月には、ドコモのスマートフォン/タブレット各1機種が対応予定。2012年上期(5月~9月)にスマートフォン3機種/タブレット2機種を対応機種に加えるという。

スマートフォンでの視聴時縦画面で、下にTwitter投稿を表示ドコモのスマートフォン/タブレットが対応予定

 NOTTVでは、3チャンネルの「リアルタイム放送」と、タイムシフト視聴できる「蓄積型放送」の2つを展開し、月額420円で利用可能。さらに、スポーツ中継や音楽などの一部を「プレミアムコンテンツ」として追加料金で視聴できるようにする。

 特徴は、スマートフォンを利用することにより「100%オンラインで双方向のソーシャルTV」としてSNSサービスなどと連携することや、「ワンセグの10倍」(WVGA/30fps程度)という高画質で放送すること、災害時など通信が使えない場合にも情報提供できることなどが挙げられる。

上の3chがリアルタイム放送、下の番組が蓄積型で視聴可能な番組のリスト

 リアルタイム放送の3チャンネルのうち、チャンネル1はオリジナル番組を提供。自主制作のバラエティや、フジテレビドラマ制作センターと協力したオリジナル連続ドラマ(各話15分/50話)、雑誌の「ファミ通」とコラボしたゲーム情報番組などを放送予定。

 ニッポン放送との協力で放送が決定した「オールナイトニッポン2部」は、放送開始45周年を記念してラジオでの復活が決まった「オールナイトニッポン2部」を、NOTTVでは映像付きで楽しめるというもの。時間は毎週月曜~金曜の27時(深夜3時)~翌朝5時。2012年1月より、各曜日のパーソナリティのオーディションを行なう予定。

 また、特徴であるネットとの連携については、放送中の番組に対してTwitter/Facebookでコメントしたり、スマートフォンアプリ紹介番組で、とりあげているアプリを放送中にダウンロードできるといったことが可能。バラエティ番組で、ゲストがSNSでつながっている人を数珠つなぎに紹介するといったものも予定している。

 チャンネル2は、追加料金で視聴するプレミアムコンテンツと、チャンネル1の再放送で編成。チャンネル3は24時間ニュースチャンネルとして、テレビ局らと協力してニュースを提供する。

 蓄積型放送は、放送波を使って番組を端末にダウンロードして、後から視聴できるサービス。時間帯ごとに異なる番組を配信し、コンテンツは映画など映像コンテンツのほか、スマートフォンアプリや、電子書籍、ゲームもラインナップ予定。映像は視聴期間や回数などに制限が掛けられる場合もある。

 蓄積型では同じ時間帯に2つ以上のコンテンツを同時配信することもでき、ニュースなど低画質でもよいものは複数同時、映画など帯域を多く使う場合は1つ、といった使い分けが可能。ダウンロードできるのは配信中の番組/コンテンツに限られるが、見逃しを防ぐため、雑誌の定期購入予約や、指定ジャンルの番組自動予約といった予約機能についても検討している。

リアルタイム放送の番組表旅行会社との提携で、放送画面の下にツアー情報を表示した例蓄積型放送では電子書籍も配信
NOTTVの主な特徴と、インターフェイスの説明放送エリアの拡大計画ワンセグの10倍という高画質などが特徴


■ ドコモ端末の半分以上を対応機種に

mmbiの二木治成社長

 前述の第三者割当増資で強化された資本金は、財務基盤の強化や設備、制作事業の運営資金、ハード事業を請け負う子会社のジャパンモバイルキャスティングへの増資などに充てられる。筆頭株主であるドコモの出資比率は、増資前の51%から、60.45%まで上昇する。

 mmbiの二木治成社長は、「新たな増資を受け、放送と通信、オールジャパンの体制が整った。ネット常時接続によりインタラクティブを前提とした魅力的な番組を作ることができる」と強調。「テレビにできないことをして、テレビを超えたテレビにする」と“NOTTV”に込めた想いを語った。

 現在、モバキャスに参加しているのはmmbiのみだが、二木氏は「どのようなサービスができるか、本当に端末が出てくるか、様子を見ているところも結構あると思う。NOTTVが始めることで、次に手を挙げてくる人も出てくるのでは」とした。


NTTドコモの山田隆持社長

 NTTドコモの山田隆持社長は、モバキャス普及に向けた取り組みとして「対応スマートフォン/タブレットの早期投入」を挙げ、前述の通り7機種を2012年度上期に投入することを予告。「対応端末は、価格でも引けを取らないものにしたい」とした。

 さらに「2012年の冬モデルには10機種くらいまで拡大し、そのとき出る端末の1/2~2/3くらいまでにしたい。現在ほとんどの端末にワンセグが載っているように、ゆくゆくはサービス進捗と共に標準搭載にできれば」と述べた。

 また、将来的な期待として「NOTTVが端末の魅力をアップする」、「放送波で動画配信することにより、通信のトラフィックを軽減できるデータオフロードの役割も果たす」との考えを示した。こうした端末の投入に加え、ドコモはmmbiへの資金面の支援や、ドコモショップでのNOTTVデモ機展示といった施策で普及促進を図る。

 今後の対応端末拡大については、スマートフォン/タブレット以外にも、カーナビや、家庭内のルータなどを通じてネット接続できる機器などによる対応を検討しているという。

 NOTTVの契約数の目標は初年度100万会員とし、最終的には1,000万会員を目指す。単年度黒字化については開始から3~4年後の達成を見込んでいる。

フジテレビの豊田皓社長。これまでのテレビを否定するNOTTVを支援する理由について「これまでフジテレビは映画を作り、芝居を作り、イベントをやった。ゲームも作っている。何でも食いつくのがフジテレビ」としたスカパーJSATの高田真治社長「これまでの地上波やBSでできなかった連携サービスを作って行く上で役立つことができる」日本テレビの大久保好男社長「新しいメディアが支持されるには、コンテンツが優れていないといけない。報道、娯楽、生活情報といった分野で制作力を活かして支援したい」
TBSの石原俊爾社長「デジタル技術の革新で様々な伝送路が生まれ、コンテンツ市場が拡大し続けている。最先端のmmbiも可能性が高いと確信している」電通の橘益夫専務「単なるメディアというより、新しい事業を作る可能性がある。NOTTVは、新しいサービスや事業を生み出すプラットフォームとして期待している」


(2011年 11月 29日)

[AV Watch編集部 中林暁]