Rovi、検索/配信などデジタルメディア戦略を説明

-UltraVioletやG-GUIDE進化、タブレット対応


Roviコーリー・フェレンガル氏

 Roviは1日、同社の世界市場、日本市場での展開を説明するプレスイベントを開催。デジタルコンテンツの「検索」、「動画配信」、「広告」の3つの領域に注力し、消費者のデジタルエンターテイメント体験の最適化を図る方針を説明した。

 同社はG-GUIDEに代表されるテレビ番組表のほか、ビデオ配信サービス向けのプラットフォーム、DLNAやホームネットワーク技術などを複合的に展開。主にメーカーやサービス事業者向けに同社技術やソフトウェアを提供していく。

 Rovi プロダクト担当エグゼクティブバイスプレジデントのコーリー・フェレンガル氏は、「デジタルメディアの利用が増え、ユーザーは膨大な数のデジタル端末やサービス、コンテンツを抱えている。コンシューマから見ればコンテンツのアクセスが複雑化しており、テレビやBlu-rayのメーカー、ハリウッドスタジオ、ペイテレビ、小売店までが複雑化したデジタルメディアの世界での収益化を課題としている」と現状を分析。そこで、Roviでは、検索機能とコンテンツへのアクセス、ビデオ配信、広告の3つの軸でこうした課題解決を目指すとする。


検索、ビデオ配信、広告にフォーカス

 検索については、電子番組表の「G-GUIDE」や放送/VODを横断的に検索/表示できる「Total Guide」といったアプリケーションを用意するほか、組み込み向けやクラウドサービス連携、豊富なメタデータの活用などRoviの持つ資産を効果的に活用し、コンテンツの見つけやすさをサポート。また、Webサービスを活用した独自のアプリケーション展開など、柔軟な製品導入ができる点や、番組や映画の豊富なメタデータ、世界中の多くの地域をカバーしているための世界展開するメーカーの要望に対応できる点などを訴求。製品メーカーやサービス事業などに採用を呼びかけていく。


Roviの検索関連技術検索関連のRoviの長所
放送のEPGとVODをシームレスに検索できる「TotalGuideG2」東芝液晶テレビの北米モデルにTotalGuideを採用

 動画配信については、米国のCinemaNowやFlixsterといったビデオ配信サービスで使われているプラットフォーム「Rovi Entertainment Store」を中心に、DivX Plusなどの配信技術、MainConceptのエンコーダ、オーサリングのTotalCodeなどをトータルで提供できる点を優位点とし、今後も事業拡大を図るとする。

Roviの動画配信技術エンコードから配信までのトータルソリューションを構築

 広告については、同社のプラットフォームを使った機器での、番組表への双方向広告配信などを想定。サービスプロバイダや家電メーカーとのコネクションを生かし、拡大を目指すという。

Roviの広告配信技術
Rovi大沢幸弘氏

 日本における事業展開については、Rovi シニアバイスプレジデント(日本CE統括)の大沢幸弘氏が説明。「日韓の有力家電メーカーが続々とRoviの製品を発売」、「Gガイド対応製品の増加」、「日本国内でのDivX対応製品の増加」などの事例を紹介した。

 具体的には、GガイドのBSデジタル放送でスター・チャンネルの2カ月先までの詳細情報案内に対応したこと、パナソニックDIGAのGガイドでスター・チャンネルの「番組特集」に対応したこと、パイオニアのCATV STBへのGガイド対応、日立WoooにおけるiPad用リモートアプリ「Wooo Remote for iPad」、東芝の北米向けテレビでの番組/VOD融合型UI「Total Guide」の採用などをあげた。

 なお、Gガイド関連では、かつては日本のテレビメーカーとの多くの特許侵害訴訟を行なっていたが、これらの訴訟は終息しており、ほとんどのメーカーとの協力関係を築いているという。

麻倉怜士氏

 デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏は、デジタルエンターテイメントとRoviの関係について解説。「Mediabolic(DLNA)やAMG(音楽DB)、Gemster(番組表)、SonicSolutions(DVDオーサリング、VOD)など、企業買収を繰り返して大きくなり、トータルなソリューションの会社になった。はっきりした目的があり、デジタルメディア時代の指針をユーザーに示して、それに向かって買収を実行してきたからこそ、ここまで大きくなった」とRoviの歩みを説明した。

 また、Gガイドについては、「個人的にはGガイドが嫌いだった。いまでもそんなに好きでもないんですが(笑)。最近は非常に見にくかった左側の広告枠が消えて、上にインタラクティブな枠ができた」と評価。「昔はマクロヴィジョン(Macrovison)という“ダビングさせない”技術の会社だったので、敵だと思っていた」と語りながらも、AMGのメタデータの信頼性や、UltraVioletへの取り組みへの支持を表明した。

UltraVioletのデモディスクからUltraVioletに誘導

 会場では映像配信サービス「UltraViolet(UV)」のデモも実施。UltraVioletは、対応のディスクを購入とともに、オンラインIDに紐づいた視聴権を得て、複数のデバイスで任意のコンテンツを楽しめるようにする規格。ハリウッド大手スタジオを中心に北米で昨年よりサービスが始まっている。

 今回は、対応ディスク以外でもUVのサービスへ誘導し、続編や関連製品をおすすめするというデモを行なっていた。SamsungのBlu-rayプレーヤーに通常のBDディスク(UV非対応)を挿入すると、UVのVODサービスを提供するFlixsterのサイトに案内し、関連のビデオ作品を紹介。HD/SDのコンテンツを購入可能にするというもの。

 例えば、セルBD/DVDの場合、安価なモバイル用のビデオファイルを販売したり、続編を紹介したりできるほか、レンタルBD/DVDの場合でも、セルスルーの配信の視聴権をやや安価に設定し、「レンタルで気に入ったからVOD権を購入する」というユーザーのニーズに応えられる。価格やナビゲーションの内容はコンテンツホルダが決定する。基本的にはディスクのTOC情報や一部の映像情報を参照して、コンテンツを特定し、案内するものとなる。例えば海賊版のBD/DVDを入れた場合でも、タイトルを特定し、正規価格のVOD購入を促すという誘導も、技術的には可能という。

 また、iPad用の番組表アプリ「Gガイド番組表 for iPad」の次期バージョンのデモも実施。新たに複数の地域設定を使った番組表表示に対応し、例えば東京在住でも、埼玉や群馬など最大4つまでの地域を設定することで、東京に加え、「テレ玉」、「群馬テレビ」などを加えた番組表を作成できる。また、現在放送中の番組を一覧表示したり、進行状況や次の放送番組を確認できる「現在番組表」にも対応予定。

 「新Gガイド番組表」は、まずOEM向けに提供し、その後今春をめどに一般販売用のアプリも無償でバージョンアップして、新機能に対応予定という。

新Gガイド番組表はAndroid版などもOEM向けに提供している新Gガイド番組表 for iPadでは、チバテレビや群馬テレビも含んだ番組表に現在番組表も新バージョンで対応予定
ケンウッドの新型ナビ「MDV-535DT/737DT」がスマートフォンによる最新楽曲情報取得に対応。Roviのメタデータ検索技術とスマートフォンの通信機能を使って最新のCDを挿入した際もスマホの専用アプリ「KENWOOD Music Info.」経由で楽曲情報を取得できる

(2012年 2月 1日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]