Dolby、スマホ/タブレット向け静止画HDR技術

-最高32bitで保存。JPEG互換性維持


 Dolby Japanは27日、スマートフォンやタブレット端末向けにHDR(High Dynamic Range)の静止画撮影を実現する技術を発表した。TIのプロセッサ「OMAP」に対応しており、携帯端末メーカーなどに向け、技術のライセンス提供などを行なう予定。スマートフォンなどへの搭載を目指している。

 東京大学発のベンチャー企業であるモルフォが開発したHDR合成技術「Morpho Full HDR」と、「JPEG-HDRを基にしたドルビーの新画像技術」を組み合わせたもの。撮影時に、露出設定の異なる静止画を自動的に3枚撮影し、それをHDR合成する事で、撮像素子のスペックを超えるダイナミックレンジの広い静止画を撮影できるのが特徴。3枚を重ねる際の、手ブレ補正技術や被写体動き補正技術も組み合わされている。

 同様の技術は他社の端末でも実現されているが、今回の技術は、HDR合成したダイナミックレンジの広い静止画を、豊かな階調情報を維持したまま保存できるフォーマットを採用しているのが特徴。JPEG-HDRと呼ばれるもので、通常のJPEGでは8bitの記録になるが、新フォーマットでは16bitから最高32bitでの保存が可能。同時にJPEGとの互換性を維持しており、従来のJPEGビューワーでは8bitの静止画として表示できる。

 このJPEG-HDRフォーマットは、Greg Ward氏とMaryann Simmons氏が、初のHDR画像フォーマットとして2004年に発表した「Radiance RGBE」をベースにしている。2007年にDolby LaboratoriesがGreg Ward氏が所属するBrightSide Technologiesを買収し、関連する知的財産権を取得。Dolbyはその後も開発を継続し、今回商用化に至ったという。

 JPEG-HDRは最高で32bitの豊かな階調データを保存・表示するために、保存時に独自のアルゴリズムによるエンコードにより、8bitの通常のJPEGデータに、輝度比率や色差の残差画像データを、JPEGのAPPマーカーセグメントに追加した形で保存。対応ビューワーで表示する場合は、追加データも含めて活用して豊かな階調で表示、非対応の場合は通常のJPEGデータのみを表示する形となる。保存時には1つのファイルとして保存される。

 なお、8bitしか表示できないディスプレイの場合は、ビューワーがJPEG-HDRに対応していても階調表現が不足する事になるため、試作されたビューワーには、ユーザーが保存された静止画に対し、後から任意に露出を変えられる機能が搭載されている。

タブレットの対応ビューワーで表示した画像。通常の露出を選択し、表示しているところ明るいライト付近に露出を合わせると、白飛びは無くなるが、周囲が暗く表示される暗い部分に露出を合わせると、人物は良く見えるようになるが、白飛びが多くなる

 表示静止画において、露出の基準としたいポイントに指を触れると、そこに合わせた画像が表示されるもので、例えば暗い室内と、窓の外の明るい屋外が一緒に撮影された画像の場合、8bitディスプレイでは屋外が白飛びしているが、屋外を指でタッチすると白飛びを抑えた表示になり、代わりに室内が暗くなる。逆に室内をタッチすると、屋外が白飛びする代わりに、室内の椅子やテーブルなどが階調豊かに表示され、何があるのかよく見えるようになる。

スマートフォンの対応ビューワーでの表示イメージ。窓のある部屋の写真だが、部屋の暗い部分に露出を合わせると窓の外が飛び、窓の外に合わせると部屋の中が暗く表示される
手前の暗い部分に触れると、芝生などは良く見えるようになるが、背後の建物の中が白飛びしている

 デジタルカメラでRAW形式で撮影した画像の露出変更を、JPEGビューワーで行なえるイメージ。そのため、試作アプリでは露出を調整した後で、調整後の画像を別の静止画として改めて保存する機能も備えている。

 露出の異なる複数枚の画像を合成する技術は、モルフォの「Morph Full HDR」を採用。東大の研究所をベースとしたベンチャーで、スマートフォンなどで採用されている。複数枚の画像を合成する際に問題となる、画像ごとの位置合わせ機能や、撮影中に被写体が動いた場合に発生するゴーストを除去する技術も内包。輪郭のブレがない、明瞭なHDR画像を撮影できるのが特徴となる。


(2012年 2月 27日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]