国民生活センター、地震によるTVの転倒対策をテスト

-震災後に問合せ急増。「対策知らない」人は37.8%


テストに使った振動台

 国民生活センターは15日、地震による薄型テレビの転倒防止対策の重要性に関する調査結果を発表。テレビの地震対策の有無による違いをテストしたほか、消費者や製造事業者、家電量販店を対象にアンケート調査を行なった。

 2011年7月のアナログ放送終了に伴い液晶/プラズマテレビが普及し、移行が進んでいた同3月11日に東日本大震災が発生、多くの被害があったことを受けて行なわれたもの。同センターにおける「地震でテレビが転倒した」という相談事例は、2011年3月11日以前では5年間で3件だったが、3月12日以降は60件寄せられており、その多くが画面等を破損して修理が必要となっていたという。

 相談事例には、「42型のテレビが地震で倒れて液晶が粉々になってしまった。小さな子供が危うく下敷きになるところだった」という危険なケースもあったほか、事業者に転倒防止措置の義務はないものの、対策の実施や説明がなかったことに不満を感じた事例が半数以上含まれていたという。そこで、同センターでは、テレビの地震対策の有無がどのような違いにつながるのかをテストした。

 テストは、テレビの取扱説明書等に記載された転倒防止対策や市販の粘着マットの効果を確認するために、震度5弱~6強に相当する地震波(耐震試験に使用されている阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震の神戸海洋気象台の波形)で加振。加振中と加振後のテレビの状態を調べた。

 テレビは、32/42/50型の液晶とプラズマを使用(シャープ「LC-32E9」と東芝「42Z3」、パナソニック「TH-P50GT3」)。それぞれ「転倒防止対策無し」と「粘着マット」、「テレビ台に固定」(木ネジ使用)、「壁に紐で固定」という4つの条件で比較した。調査結果は下記の通り。


    【転倒防止対策なし】
  • 転倒防止対策を実施しなかった場合、震度5弱相当ではテレビに大きな揺れは見られなかったが、震度5強相当では大きな揺れが見られ、震度6弱相当ではすべてのテレビが転倒し、テレビ台から落下した。

    【粘着マット】
  • 粘着マットを使用した場合、50型を除き震度6強相当でも大きな揺れは見られなかった。50型は震度6弱相当までは大きな揺れは見られなかったが、震度6強相当で転倒はしなかったもののスタンドとテレビ本体をつなぐ部品が折損した。

    【テレビ台に固定】
  • 木ネジでテレビスタンドをテレビ台に固定した場合、震度5弱相当では大きな揺れは見られなかったものの、震度5強相当から震度6弱相当では大きな揺れが見られた。50型は震度6弱相当で移動が見られたが後方への移動であり、危険性は小さいものと考えられた。震度6強相当では32型は大きな揺れが見られたが移動や転倒はなかった。42型はスタンドをテレビ台に固定していたネジが抜けたために転倒し落下した。50型はスタンドの首振り機構の回転軸が折損し、テレビ本体が前方に落下した。

    【壁に紐で固定】
  • 壁に紐で固定した場合、震度5強相当で大きな揺れや移動が見られ、震度6弱相当では42型や50型に後方への転倒や落下が見られたが、前方に落下する危険性は見られなかった。震度6強相当では32型に移動が見られた。

 

 こうした結果から、「対策がない場合は震度6弱相当でどのテレビも前方へ転落したが、対策がある場合は同じ震度でも前方への落下がなく、1階級上の震度でも転倒しない場合があり、転倒防止対策はいずれもその効果が発揮された。テスト結果を総合的に見ると、スタンドの固定に加え、テレビ本体も壁に紐等で固定することにより、効果が上がる」とまとめている。

台に固定し、震度6強相当でスタンド部付近が損傷した50型壁に固定して、震度6弱相当で転倒した42型壁に紐で固定して、震度6強相当で移動した32型


■ 「転倒防止対策があることを知らなかった」という人は37.8%

 消費者向けのアンケートは2月にインターネットで実施。47都道府県の人口分布に応じて割り付けた、薄型テレビ所有の2,000人を対象に行なった。

 回答では、「転倒防止対策があることを知らなかった」が37.8%と最も多く、次いで「テレビ購入前から知っていた」が35.1%だった。これらに「転倒防止対策を知らない、実施していない」との回答を合わせると約7割あり、実施しているとの回答は約3割だったことになる。また、「必要性を感じながら実施していない」という回答もあった。

 転倒防止対策として行なっている内容は、実施者の591人のうち標準添付品のネジやバンド等でテレビ台に固定しているという人が316人で最も多く、次いで市販の耐震・粘着マットが248人だった。

 製造事業者へのアンケートでは、主要6社(シャープ、ソニー、東芝、パナソニック、日立、三菱電機)に対して、転倒防止策の実施の有無や内容を尋ねた。各社からは、バンドや金具を使って固定するとの回答があったが、壁へ固定する紐などが付属しないことから、国民生活センターでは「必要となる用品が同梱されているとは限らない」としている。

 家電量販店へのアンケートでは、主要9社にアンケートを送り、エディオン、ケーズホールディングス、上新電機、ノジマ、ビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラの7社が回答した。

 購入者に対して転倒防止策の必要性を伝えているかという質問には7社すべてが「伝えている」と回答。また、購入者から対策を求められた場合に実施しているかどうかという質問には、「実施する」との回答が多く見られたが、「その場で実施できない」といった答えや、別料金が必要といった回答もあったという。

 これらの結果から、同センターでは消費者に対し「転倒防止対策は有効であるため、特に転倒したときの危険性が高い大型テレビは確実に実施すること」、「テレビの設置を販売店に依頼する場合、転倒防止対策についても相談すること」を呼びかけている。

 また、業界への要望としては、製造者、販売店ともに、消費者へ転倒防止対策の重要性について周知徹底すること、転倒防止対策に必要なネジなどの標準添付または、使用する用具の目安を示すこと、テレビの設置の依頼を受けた際は、特に大型のテレビは転倒防止対策も同時に実施することの3つを挙げている。



(2012年 3月 15日)

[AV Watch編集部 中林暁]