「ヘッドフォン祭 '12」STAXが携帯コンデンサイヤフォン
-オルトフォンの携帯アンプ。23,800円の真空管+USB DACも
今回も盛況の場内。10時半の開場前には入り口に長蛇の列ができていた |
東京・中野にあるAV機器の専門店フジヤエービックのデジタルスタイルショップが主催する「春のヘッドフォン祭 2012」が5月12日に開催された。会場は東京・外苑前駅近くの「スタジアムプレイス青山」。入場は無料。
ここでは8~9階の展示を中心にレポートする。
■スタックス
ポータブルタイプのコンデンサ型イヤフォンの新モデルを参考展示 |
コンデンサ型の据え置き用ヘッドフォンをメインに手がけているスタックスだが、'95年にインザ・イヤータイプと呼ばれるポータブルタイプのコンデンサ型イヤフォン「SRM-001」を発売し、バージョンアップを重ねている。
そのイヤフォンタイプの新製品が、参考展示された。型番はまだ決まっておらず、イヤフォン部分と、バッテリ内蔵の専用ドライバーユニットの組み合わせで構成。ドライバーユニットの表面には「SRM-002」というロゴが書かれていた。
特徴としては、従来モデルと比べて駆動時間を伸ばす事ができるエコモードを搭載。また、内蔵する振動膜を薄型化。より精細な表現が可能になっているという。
装着感も改善しており、3種類のイヤーピースが付属。耳に合わせたものをチョイスできるほか、イヤフォン部分をはめ込み、固定できるヘッドアームも同梱。イヤフォンが耳から落ちやすいという場合には、ヘッドフォンのようにして装着する事もできる。
展示機は残念ながら音を出していない状態だったが、今年の秋頃に発売を予定。価格は未定だが、3~5万円程度を想定しているという。
【お詫びと訂正】
記事初出時、底部写真のキャプションで「内部バッテリを充電できる」と記載しておりましたが、誤りでした。搭載した乾電池や充電池を充電する機能はありません。お詫びして訂正させていただきます。(2012年5月14日)
ポータブルドライバーの裏側 | 入力はアナログステレオ1系統。右にあるのがイヤフォン接続用端子 | 底部。スイッチはエコモードに切り替えるためのもの |
イヤフォン部分 | イヤフォンを保持するためのヘッドアーム。ヘッドフォンのように装着する事もできる |
■Parrot Zik
モダニティーが販売する、Parrotの「Zik」というヘッドフォンがイベント内で発表された。アナログライン入力を備えるほか、Bluetoothヘッドフォン機能も装備。騒音を98%まで排除するというアクティブノイズキャンセリング機能も備えている。
Parrotの「Zik」 |
ヘッドフォンのハウジングを操作し、接続しているBluetooth対応プレーヤーが制御できるのは他社製品と同様だが、ユニークなのは操作方法。ボタンは設けられておらず、ハウジングを指でなぞるようにすると操作が可能。例えば横になぞると曲送り、上になぞると音量アップ。さらに、首にかけるとそれを察知し、再生が一時停止される。
4つのマイクを内蔵し、骨伝導センサーも備え、ハンズフリー通話も可能。再生周波数帯域は10Hz~20kHz。iPhone/iPad/Android端末用に専用アプリも用意し、アプリから再生するとコンサートホールエフェクトをかけた再生もできる。
なお、発売日や価格は未定。
ハウジングを平らにする事もできる | ワイヤレススピーカー(ZIKMU/ズィクム)も展示された |
■オルトフォン
オルトフォンジャパンのブースでは、ポータブルヘッドフォンアンプの試作機が展示された。「MHd-Q7」というモデルで、試聴も可能だったが、外装が製品版とは異なり、隣に製品版のデザインイラストを添えて展示されていた。
発売中の据え置き型ヘッドフォンアンプ「Hd-Q7」で培った技術を投入して作られているという、ポータブルタイプで、デジタル回路を使わず、アナログにこだわった設計になっているのが特徴。
そのため、DACなどは搭載しておらず、ステレオミニの入力と、ステレオミニのヘッドフォン出力を備えたシンプルなアンプとなる。8月下旬の発売予定で、価格は4万円程度を想定しているという。
オルトフォンのポータブルヘッドフォンアンプ「MHd-Q7」試作機 | こちらが製品版の外観イラスト | 発売中の据え置き型ヘッドフォンアンプ「Hd-Q7」 |
■WiseTech
9階に設けられた「ヘッドフォンアンプ試聴会場」では、各社のヘッドフォンアンプ18機種を、ほぼ同じ再生環境で比較試聴できるコーナーが用意されている。基本は、既発売の製品を聴き比べるコーナーだが、新モデルを展示しているメーカーもある。
WiseTechは、同社の新ブランドNEW-TONE(ニュートン)の第1弾モデルとして、真空管を採用し、USB DAC機能やヘッドフォンアンプ機能も備えた「eDison-01」(エジソン-01)を初披露。6月下旬頃の発売を予定している。
「eDison-01」 | 背面 |
真空管とトランジスタプリアンプのハイブリッドとなっており、ライン出力は真空管の音とトランジスタの音を切り替えて楽しむ事ができる。真空管は「Chinese 6N3 Tube」を使用し、ユーザーが5670タイプの真空管と入れ替える事もできる。ヘッドフォン出力はオペアンプ。新日本無線のMUSES 8820が使われている。
DACは24bit/96kHzまで対応し、PCとUSB接続して使用する場合、専用ドライバは不要。入力はUSB以外に光デジタル、同軸デジタルを用意。アナログライン入力もアンバランス(RCA)を2系統を備えている。出力はアナログアンバランス(RCA)×2系統と、ヘッドフォン出力1系統。
他にも、アナログ基板とデジタル基板の電源供給回路を個別に構成して相互干渉を低減するなど、こだわりのモデルだが、想定売価は23,800円と低価格になっている。
■フルテック
フルテックは、ADL(ALPHA DESIGN LABS)ブランドの新製品として、据え置き型のDAC兼デジタルプリアンプ「ESPRIT(エスプリ)」を参考展示した。価格は71,400円。7月の発売が予定されている。
「ESPRIT」 | DAC兼デジタルプリアンプ |
入力として、USB、光デジタル、同軸デジタル、アナログ音声(RCA)を各1系等装備。24bit/192kHzまで対応するDACを搭載しているが、192kHzまで対応するのは光/同軸デジタルのみで、USB1は96kHzまでとなる。
出力はアナログ音声(RCA)、光デジタル、ヘッドフォンを各1系等用意。
3月から発売が開始された、ポータブルヘッドフォンアンプの新モデル「STRIDE(ストライド)」も展示。アルミ合金を使ったスタイリッシュな筐体デザインが特徴。ライン入力に加え、USB DAC機能も用意。DACはWolfson製「WM8716」を、USBコントローラーはTENORの「TE7022L」を採用し、24bit/96kHzまで対応する。カラーはBlack、Silver Whiteの2色 |
■ラトック
ラトックシステムのブースでは、11日に発表されたばかりで、6月中旬発売予定の24bit/192kHz対応のDAC内蔵ヘッドホンアンプ「RAL-24192DM1」が展示された。価格は246,750円。
4月下旬から発売が開始されている「RAL-24192HA1」と同様に、OS標準のUSB Audio Class 1.0クラスドライバを使いながら、24bit/192kHzの音楽データの転送を可能にしているのが特徴。
USB EHCI(High Speed 480Mbps)デバイスドライバーが持つ「High Band Widthモード」を利用して実現しており、USBデバイスドライバ(UHCI/OHCI Full Speed 12Mbps用)のIsochronousパケットの最大サイズは、1フレームあたり1,023バイト(データ部)であるのに対し、EHCI(High-Speed)ドライバは、ビデオデータや9.1chのDTS-HD、ドルビーTrue HDといった、大量データに対応するため、1マイクロフレームあたり3,060バイトのデータを転送できる。このため、理論的には標準ドライバで32bit/192kHz(1,536Bytes)までの転送が可能(ただし、内蔵しているDACは24bit/192kHzまでの対応)。
DAC内蔵ヘッドホンアンプ「RAL-24192DM1」 | 「RAL-24192DM1」と同様に、標準ドライバで24bit/192kHz伝送が可能な「RAL-24192HA1」 |
2個の独立した高精度水晶発振モジュール(22.5792MHz/24.576MHz)を搭載し、生成した低ジッタのビットクロックを直接DACに供給。DACチップは24bit/192kHz対応の「PCM1704」をL/Rチャンネルそれぞれに搭載している。
ほかにも、デジタル部とDACデジタル部、アナログ部の電源回路は、それぞれ専用の独立したトランスと回路により分離して、相互干渉を排除。USB入力などデジタル処理部のグランドとDAC、アナログ部のグランドも分離している。
なお、ラトックのオーディオ機器としては高価なモデルとなるが、同社では従来からの低価格製品と共に、よりハイエンドへの展開も検討しているという。
■オヤイデ
オヤイデブースでは、FiiOのヘッドフォンアンプ・フラッグシップモデルとして、4月上旬から発売されている「E17」をメインに展示。USB DAC機能も備えており、DACはWolfsonの「WM8740」を採用。24bit/96kHzまで対応する。USBインターフェイスはTENOR「TE7022」。付属のアダプタを使い、光/同軸デジタルの入力も可能で、その場合は24bit/192kHzまで対応する。実売は2万円程度。
FiiOのヘッドフォンアンプ・フラッグシップモデル「E17」 | ポータブルDACと「E17」を組み合わせた提案も |
また、ShureのイヤフォンSEシリーズ用の交換ケーブルも参考展示。来月、もしくは再来月頃の発売を予定しているもので、ブラック、シルバー、レッドの3色展開。価格は7,000円~8,000円ほどになる予定。
オヤイデ製の、Shure SEシリーズ用交換ケーブル |
さらに、 「ZEPHONE」というブランドの交換用ケーブルラインナップも展示。新製品の参考展示も行なっている。同じケーブルを使い、Shure SEシリーズ用コネクタを備えたモデルと、Westoneのイヤフォン用コネクタを備えたモデルの2バリエーションを用意。
グレードとしては、12,000円~15,000円程度の上位モデルと、5,000円~6,000円程度の下位モデルを追加予定で、上位モデルは3本のケーブルを編み込んだ強固なケーブルを、下位モデルは細身で柔らかなケーブルになるという。
「ZEPHONE」のケーブルラインナップ | 「ZEPHONE」の新ケーブル。上が上位モデル、下が下位モデル | 上位モデルをアップで撮影したところ |
■その他
試聴機の用意だけでなく、ユニークなイベントを行なっているブースもある。初の開放型ヘッドフォン「SRH1440」、「SRH1840」の試聴コーナーが人気のShureブースでは、米Shure本社からモニタリング・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏など、開発スタッフが来日。直接質問などができるようになっている。さらにShureブースでは、Shureの製品を持参したり、展示機を試聴するとオリジナルグッズがもらえる企画なども行なっていた。
「SRH1440」、「SRH1840」の試聴コーナー | 開発スタッフに直接話しを聞く事もできる | 試聴したりShure製品を持参するとオリジナルグッズのプレゼントも |
(2012年 5月 12日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]