裸眼3D普及に向け「ドルビー3D」を訴求。56型デモも

4K+裸眼3D立体視へ。タブレット向けも。FPD展へ出展


ドルビー3D対応のフィリップスの56型/4K裸眼3D液晶ディスプレイ

 ドルビーは23日、コンシューマ機器向けの3D技術「ドルビー3D」の説明会を開催した。10月31日から11月2日までパシフィコ横浜で開幕する「FPD International 2012」に出展する。

 テレビやパソコン、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなサイズのデバイスで、裸眼での3D立体視を実現するという技術。フィリップスとドルビーが共同で開発を行ない、ドルビーが「ドルビー3D」として機器メーカーやコンテンツ提供者などにライセンスする。なお、ドルビーでは、デジタルシネマ向けの「ドルビー3D」技術/ソリューションを有しているが、これも引き続き同名称で展開する。



■ リアルタイム奥行き抽出と多視点レンダラで裸眼3D

 ドルビー3Dは、裸眼3Dテレビや、視差バリア方式のスマートフォンやタブレット向けの基盤技術として、メーカーなどへの技術提供を見込む。

ドルビー3Dの主要コンポーネント

 技術的には、「フレーム互換フル解像度(FCFR)ビデオコーデック拡張」と、「リアルタイムでの奥行き抽出(裸眼3D変換)と多視点レンダラ」、「奥行き調整」、「2D-3D変換」から構成される。

 FCFRビデオコーデック拡張は配信側の技術で、主にサイド・バイ・サイドの3D映像配信時に利用。現在の放送/配信サービスにおける3D配信では、水平解像度を半分に削減したサイド・バイ・サイド映像の伝送がほとんどだが、ドルビーの用意する「ドルビー 3D フルHD エンコーダ」を利用することで、約10%のデータ増だけでフルHD解像度のサイド・バイ・サイド3D信号をトランスポートストリームで伝送可能になる。MPEG-4 AVC/H.264の拡張により、データ増を抑えてフルHD 3D伝送を実現。これにより配信される3D映像がより高画質になる。FCFRのデコードに受像機側が対応していれば、裸眼3Dだけでなく、アクティブシャッターメガネを使った3Dテレビでも、3D映像の高画質化が図れるとする。

 なお、FCFR技術はMPEG標準化を目指し、作業を進めているという。

 「リアルタイムでの奥行き抽出と多視点レンダラ」はデバイス側の技術で、テレビやタブレットへの組み込みを想定。3D信号から奥行きを抽出し、ディスプレイの視差数にあわせたレンダリングを行なう。例えば今回のデモで用意した56型4Kディスプレイの場合は、レンチキュラシートを用いて28視差の映像を生成することで、裸眼の3D立体視を実現しているが、この28視差の映像を作り出すのが多視点レンダラとなる。

 大画面テレビでは多くの演算量が必要だが、タブレットやスマートフォンなど視点がある程度固定されるディスプレイの場合は、2視差でも十分な3D効果が得られるため、多視点レンダラの処理量はかなり少なくなるという。奥行き抽出や多視点レンダリングにより発生する遅延は「1フレーム未満」。

 ドルビー3Dのライセンスを受けたデバイスメーカーは、機器に合わせて視差数や奥行きを調整できる。「奥行き調整」は、デバイス側でユーザーが奥行き量を調整できる技術。2D信号からの3D変換にも対応する。

 フィリップスは、ドルビー3Dに対応した56型/3,840×2,160ドットの4K裸眼3Dディスプレイを開発。レンチキュラシートを使うことで28視差での裸眼3D立体視を実現するものだが、フラクショナルレンズと呼ばれるレンズで光学的にずらすことでモアレを無くす効果を得ているほか、7視点相当の解像度を維持し、HD解像度での3Dを楽しめるという。

56型ディスプレイを使ったドルビー3Dデモ

 また、スマートフォン用のデモも実施。視差バリア方式の2視差の4.5型液晶を使っており、最大150%までの奥行き調整が可能となっている。

スマートフォンでも裸眼3D

■ テレビ応用は4Kとともに?

Dolby Japan 事業開発部 勅使河原氏

 Dolby Japan 事業開発部 マネージャーの勅使河原智氏は、ドルビーやフィリップスのこれまでの取り組みやドルビー3Dの概要を紹介するとともに、NABやIBCなどの展示会で高い評価を得たことなどを紹介。「メガネ無し3Dという体験を幅広く提供したい」とドルビー3Dの目標を説明した。

 裸眼3Dのテレビやディスプレイは既に数社から発売されているが、消費者にとってはクリアな3Dが楽しめること、機器タイプや画像サイズにあわせて最適な3Dで、スイートスポットなしに楽しめることなどを訴求。機器メーカーには、シャープでリアルな3Dを提供できること、ASICなどに実装可能なため、デバイスに依存せず搭載可能で、市場投入までの時間短縮や製造コストを削減できることなどを訴求する。


メリットのまとめ

 対応機器やサービスの展開については、デバイスメーカーや放送/コンテンツ配信事業社に依存するが、「3D対応のタブレットなどは処理能力も十分で、一般論としては採用が決まれば早期に実現できる。テレビについては、裸眼3Dタイプが2013年の後半から2014年に増えてくると予想している。4Kとともに、裸眼3Dが増えると考えており、それぐらいの時期が一つのターゲット」とした。

 なお、FPD International 2012のフィリップスブースでは、56型4Kの裸眼3Dディスプレイの他、23型のPC向け、9型のタブレット向けなども展示予定としている。


(2012年 10月 23日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]