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三菱、凹凸曲面に表示できる車載リアプロディスプレイ

独自の光学系で多様な曲面に対応。'17年実用化へ

開発されたディスプレイ試作機の搭載例。左がカーナビをイメージした凸面スクリーン、右がインパネをイメージした凹面/凸面混在スクリーン(周辺部が凹面/中央が凸面)

 三菱電機は7日、車載ディスプレイ向けの新技術として、車のインパネなど様々な曲面に自然な映像表示ができるというディスプレイシステムを開発したと発表した。自動車への搭載は、2017年を目指している。

 同一の光学エンジンで、様々な曲面や形状に投写できるというリアプロジェクション方式のディスプレイを採用。凹面/凸面混在のスクリーンと、凸面スクリーンを試作した。画面サイズは、いずれも130×290mm(縦×横)。車のインパネ内部(奥側)にプロジェクタを内蔵し、インパネのスクリーンに投写する。

 様々な曲面に対応するために、独自の「曲面可変光学系」を開発。従来は表示するスクリーンに応じた光学エンジンが必要だったが、同一の光学エンジンで多様なデザインのスクリーンに対応可能となった。この光学系について詳細は明かされなかったが、複数のレンズで構成し、投写するスクリーンに応じてレンズが可動するイメージだという。試作機の表示曲面率は、凹面/凸面混在スクリーンが100mm(中央部最小値)で、凸面スクリーンが300mm(最小値)。今回は球面ディスプレイを用いているが、技術的には自由曲面にも対応可能で、試作機の曲面率が限界ではないとしている。

 前述の光学系で補正した後、ソフトウェアの映像信号処理によって、スクリーンで発生する歪みを考慮した映像に補正。凹凸を組み合わせた曲面や、楕円、三角などのスクリーンにも自然な画像を表示できるという。これにより、曲面を多く取り入れたデザインの車内ともマッチした車載ディスプレイが実現可能だという。

 今回の試作機では、映像表示のデバイスにDLPを使用。解像度は、凹面/凸面混在スクリーン、凸面スクリーンともに1,920×861ドット。光源はRGB LEDで、白色LEDバックライトの液晶ディスプレイに比べて約1.5倍の色再現範囲を実現したという。また、光センサーを用いたLEDの発光制御により色バランスを保ち、車室内の幅広い動作温度でも安定した色再現を確保したという。

 車載を考慮し、信頼性を高めた構造も特徴。高温時の部品の性能低下(LEDの発光効率低下など)と寿命劣化を避けるため、高効率放熱構造と自然冷却/強制冷却を組み合わせたハイブリッド冷却による高効率冷却器を開発した。また、投写画像に影響する振動や衝撃が、光学エンジンや筐体を変形させるのを抑え、画像乱れが発生しないハードウェア構造を実現した。さらに、外光を吸収しやすい樹脂製スクリーンを採用したことで、明光下でも高い視認性を確保したという。

ディスプレイシステムの構成
RGB LEDで色再現性を高め、車室内の厳しい温度環境にも対応
車載に向けて、高い信頼性も確保

反射型/透過型液晶にも対応可能。検討中のメーカーも複数

三菱電機 先端技術総合研究所 映像入出力技術部長 南浩次氏

 三菱電機の曲面対応リアプロディスプレイは、2011年の「第42回東京モーターショー」のコンセプトカー「EMIRAI(イーミライ)」にも採用されていたが、当時は車載環境までを考慮したものではなかったという。

 同社の先端技術総合研究所 映像入出力技術部長 南浩次氏は「車のディスプレイは、表示する情報が増えたことに伴い大型化が進んだが、大画面の液晶ディスプレイを使うと“浮いた存在”になるので、車内デザインと一体化するのが必要という車メーカーからの要求があった」として、リアプロ方式を採用したと説明。同社がこれまで家庭用のリアプロテレビで培った映像技術や、グローバルで展開するカーエレクトロニクス製品の耐環境技術を活かす形で今回のディスプレイを開発した。

 今回のシステム全体のサイズは明らかにしなかったが、「ダッシュボードに収まるサイズで実現できる」とのこと。また、デバイスは今回のDLPだけでなく反射型液晶(LCOS)や、透過型液晶も考慮して検討しているという。

 既に複数の車メーカーが採用を検討しているとのことで、当初は高級車をターゲットとしているが「数が出て単価が下がれば、液晶ディスプレイ並みにしなければならない」(南氏)とした。車載に際して、既に仮想環境ではテストを行なっているが、実際に車に載せた上での視認性テストなどはこれから行なう予定。

2011年の東京モーターショーでの展示
開発の経緯

(中林暁)