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無料動画配信視聴が音楽購入のきっかけに。RIAJ調べ
有料聴取は減少。ライブ参加層の動向調査も
(2013/2/13 16:29)
日本レコード協会(RIAJ)は12日、2012年度の「音楽メディアユーザー実態調査」報告書を公開した。
同報告書は2012年8月に実施したインターネットアンケートの調査結果をまとめたもの。対象者は全国の12~69歳の男女で、サンプル数は4,948。CD購入や、音楽配信の利用、ポータブルオーディオプレーヤーなど音楽聴取機器の利用率等を調査している。
音楽購入/レンタルは全体で減少。男性若年層・50代以上のCD購入上昇も
過去半年間(3月~8月)におけるCD購入率は29.4%で、レンタル率は21.6%。CD購入とレンタルの併用は7.3%だった。また、有料音楽配信・着うたフルの購入率は12.1%。CD購入やレンタル、有料音楽配信などの利用率はいずれも減少したが、音楽購入数は増加。新品CD(アルバム・シングル)の平均購入数は男子高校生や50代以上の男性で上昇し、有料音楽配信(シングル)も男性の購入数が上昇傾向となっている。
年代別のセル市場におけるCDアルバム・シングルのシェアは主に30代~40代男性の割合が高く、30代で19.5%、40代が12.6%。有料音楽配信市場のシェアは30代~40代の男性、女性で割合が高く、30代男性が18.6%、40代男性が9.6%。30代女性は10.8%、40代女性は9.8%。着うたフル市場は20代社会人女性と30代~40代男性が占めており、20代社会人女性が15.6%、30代男性が18.1%、40代男性が11.6%。
購入した新品CDアルバムをジャンル別で見ると、最も多いのは「日本のポップス」の53.5%で、前年度比で3.2ポイント上昇。次に「日本のロック」(20.0%)、「日本のアイドルミュージック」(15.5%)が続いている。前回追加された「K-POP」は10.5%で、前年度比で1.0ポイント上昇。また今回から項目に追加となった「(初音ミク等の)ボーカロイドを利用した楽曲」は3.2%だった。新品CDシングルについても、「日本のポップス」が48.3%で最も多いが、前年度比で3.9ポイント減。続く「日本のアイドルミュージック」は同3.8ポイント増加の29.5%。「日本のロック」が18.3%(前年度比3.2ポイント減)、「アニメ音楽」が14.9%(同0.6ポイント上昇)、「K-POP」は9.9%(同3.3ポイント減)。「ボーカロイド楽曲」は4.4%だった。
有料音楽配信の購入ジャンルでは、「日本のポップス」が58.9%で最多。続いて「海外のポップス」(21.6%)、「日本のアイドルミュージック」(18.5%)が上位を占めた。性別・年代別では日本のポップスやアイドルミュージック、日本/海外のロックで男性の幅広い世代の購入値が平均より高めな一方で、若年層の女性の購入値は低めとなっている。また「アニメ音楽」や「ボーカロイド楽曲」、ニコニコ動画などを通じた「一般個人が制作しネット上で販売する楽曲」が、若年層の男女を中心に購入されている。
若年層の未知アーティスト音楽購入は「無料動画配信」がきっかけ
初めてCDを購入するアーティストの新品CDを認知するきっかけとなった媒体を年代別で見ると、中学生から20代社会人の間で最も多かったのが「無料動画配信サイト」で、中学生が29.3%、高校生は32.2%、大学生・専門学生は25.3%。20代社会人は22.5%だった。30代以上はテレビCM(楽曲CM)やテレビ番組が上位を占め、50代と60代では「FMラジオ」や「家族・友人・知人」のほか、「CD販売店」も上位に入っている。
また、有料音楽配信において、初めて知ったアーティストの楽曲ファイルを購入するきっかけについては「無料動画配信サイト」が幅広い世代で上位を占め、「30代以上においても無料動画配信サイトが従来のテレビのポジションに食い込んでいる」と分析している。
「音楽を楽しむために利用したサービス」として過去半年間(3月~8月)で最も多かったのも無料動画配信サイトで、60.0%。2位がAM・FMラジオの40.4%で、3位がテレビ(36.9%)、4位がカラオケ(35.2%)。コンサートやライブ等の生演奏は14.9%となっている。
今回の調査では音楽消費の変化を中心として、主にインターネット上での音楽配信や購入などに焦点を当てている。音楽を聴くために音楽商品を購入する「有料聴取層」は2009年の調査から減少し続けており、'12年の調査では特に40代の減少率が顕著だった。ただし、50代では前年比で3.5ポイント上昇で41.1%となっている。
「有料聴取層の購入が減った理由」についても調査。「現在所有している音楽で満足している」が38.0%で最多となり、次が「金銭的な余裕が減った」で29.6%だった。「好きなアーティストが曲を出していない/曲が減った」(26.8%)や「買いたいと思える曲の減少」(23.6%)を理由とする回答も上位に入っている。音楽商品にお金を支払っていない「無料聴取層」における、音楽非購入の最大の要因は、「(YouTubeなどで)購入しなくても好きなときに聴取できる」(32.0%)などの回答から、「無料音楽配信サイト等を通じた視聴が音楽の購入/所有を代替している」と分析している。
なお、音楽聴取で最も使われている機器は、家の中・外ともにデジタルオーディオプレーヤーで、音源のデジタル保存率は6割強。一人あたり平均でアルバム約100枚分をデジタル化している計算になるという。
ライブ会場での関連商品・グッズへの平均支出額は約5,982円/年
このほか、ライブ・コンサートに関する動向にも焦点が当てられている。ライブ・コンサートへの参加率は全体平均で約3割で、女性の全年代層においては3割~5割となっている。年代別シェアで最も高いのは20代社会人で、続いて60代が17.3%。ライブ参加層とメディア利用層の関係では、CDや音楽配信の購入層が59.7%で、これらを購入せずレンタル利用もしない層が32.6%。レンタルのみ利用する層は7.8%だった。
ライブ・コンサート会場での関連商品・グッズへの平均支出額は年間約5,982円で、CD・DVDの購入金額は年間1,519円。会場でのCD・DVDの購入枚数は0枚が8割近くを占め、年間平均枚数は約0.48枚。「CD販路としてのライブ・コンサート会場は、実店舗・ECサイトと比較すると限定的」としつつ、40代以上の「エルダー層」の利用率の高さ(40代/8.5%、50代/12.2%、60代/18.5%)から見て「重要なCD販路と評価できる」としている。