JASRACら権利者、違法配信楽曲を特定する新技術の導入をISPに促す


新たな違法配信対策の仕組み

 日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本レコード協会(RIAJ)などの音楽権利者6団体2社は4日、インターネット上の違法音楽配信への新たな対策を発表。インターネット上の違法音楽ファイルを特定するというモジュールを、インターネットサービスプロバイダ(ISP)に対して導入するよう求めていく。

 このモジュールは著作権情報集中処理機構(CDC)が開発したもの。CDCが運用している正規音楽配信の利用楽曲報告データ処理のためのDBとシステムを活用して、違法音楽ファイルを特定するという。これを無料レンタル掲示板サービス事業者などのISPが導入することにより、事業者は違法音楽ファイルのアップロード直後に特定、削除が可能。「音楽権利者・ISP双方の負担が軽減されることが見込まれ、本モジュールの導入の推進・拡大が違法音楽配信根絶に向けた大きな前進になる」としている。

 音楽権利者6団体2社は、このモジュールが違法音楽配信の対策として有効であることを確認し、違法音楽ファイルのアップロードが顕著なISPに対して導入するよう共同で働きかけることで合意。その取り組みを開始した。

 これまで、権利者がISPに対して違法音楽ファイルの送信防止を求める対策(ノーティスアンドテイクダウン)により、削除要請を行なった総件数は、2002年以降現在まで200万件以上。しかし、この対策は権利者が違法音楽ファイルを個別に特定して該当のISPに通知して削除を依頼する手続きが必要なことから「事後的な対策とならざるを得ないため違法音楽配信の根絶にはつながっていない」と指摘。

 権利者にとっては、こうした手続きを実施するための監視専用の検索エンジンを運用するなどのコストをかけていることから「インターネットが飛躍的に発展し種々のサービスやプラットフォームが提供される中で、権利者は違法配信対策に非常に大きな負担を強いられてきた」との認識を示している。

 一方で、「ISP側は、アップロードされた違法音楽ファイルの個別の削除などに手間はかかるものの、速やかに削除していれば違法音楽ファイルによる損害賠償責任について免責を得ることができる。ここ数年、携帯向けの無料レンタル掲示板サービス事業者等、特定のISPのサービス上で違法音楽配信が顕著であることから、警察は多数の違法アップローダーを摘発してきた。その効果によって一部の無料レンタル掲示板サービス事業者は、自社のサービス上の違法行為の氾濫に危機感を募らせている」と導入の必要性を訴えている。



(2012年 6月 4日)

[AV Watch編集部 中林暁]