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JVC、2ユニットで重低音“ライブビート”ヘッドフォン

空気室が2つ。25,000円から。'15年シェア15%へ

発表された2製品

 JVCケンウッドは、JVCブランドのヘッドフォンとして、2つのユニットを用いた「ライブビートシステム」を採用した2機種を5月下旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は、「HA-SZ2000」が35,000円前後、「HA-SZ1000」が25,000円前後。

 55mm径の重低音用のユニットと、30mm径の中高音用ユニットの2基をハウジングに内蔵したヘッドフォン。同社が発売しているサブウーファ内蔵のカナル型(耳栓型)イヤフォン「FXZシリーズ」で採用している「ライブビートシステム」のヘッドフォンバージョンとなる製品。どちらもアラウンドイヤータイプ。

HA-SZ2000
HA-SZ1000
左がSZ1000、右がSZ2000

 イヤフォンと基本的な考え方は同じで、スピーカーのサブウーファで使われている「ケルトン方式」を採用。ウーファユニットの前後を筺体で包んでしまい、ダクトを設けてそこから低音のみを出す方式で、ここから得られた重低音に、中高音ユニットの音をミックスして耳に届けている。

イヤフォンのFXZシリーズ

 イヤフォンのFXZシリーズでは、ウーファユニットから出力される音から、アコースティックで中高域を落とすために、注射針のような細くて長いストリームダクトを通じて、低音だけを放出していた。

 ヘッドフォンでも同じように、ウーファを空気室で覆い、そこからダクトを通じて低音を取り出そうとしたが、「低音はシッカリ出るものの、中高域まで予想以上に沢山出てしまい、上手くいかなかった」(ホーム&モバイル事業グループ 技術統括部 商品設計第三部の三浦拓二参事)という。その理由は、ヘッドフォンに必要な低音の量を得るため、太いダクトを設けた事で、中高域の減衰が不足したためだという。

SZ2000のハウジング

 そこで、空気室のダクトから出てきた音を、もう1つの空気室に入れ、そこに備えた2番目のダクト「デュアルストリームダクト」から低音成分だけを出す方法を考案。具体的には、ウーファユニットを覆う第1空気室を、ぐるっと取り囲むようなドーナツ型の第2空気室を用意。そこに太いストローのようなダクトを設け、低音だけをバッフル面まで引き出している。同社ではこの機構を「ストリームウーハーDB(ダブルバスレフ)」と名付けた。

 バッフル面には、中高域用の30mm径ユニットを搭載。ユーザーの耳の直前で2つの音が組み合わさり、鼓膜に届くようになっている。この機構では、ダクトのサイズや長さ、個数のバランスが肝となり、第1空気室のダクトは8φで8mmのダクトを3個、第2空気室のダクトは6φで70mmのダクトを2つ設けている。「ダクトを太く長くすると、それを収納するハウジングのサイズも大きくなり、ヘッドフォン全体が大型化してしまう。ポータブルとしても使えるサイズに抑えながら、ダクトや空気室を格納し、音も追求するのが難しかったポイント」(三浦氏)だという。

ストリームウーハーDBの構造。左上図のように2つの空気室を通過し、中高域を減衰させている。下図の金色の部分が第1空気室、緑色が第2空気室。赤いダクトを通して、低音だけが耳に届くようになっている
構成パーツの一覧。左から2番目が中高音用ユニット、右から4番目が重低音用のウーファとなる
周波数特性のイメージ。緑色がストリームウーハーDBで減衰され、低音のみが取り出されたウーファの音。青いラインが中高音用ユニットの音。赤いラインが、それらを組み合わせた総合特性
SZ2000の内部。金色の部分が真鍮のシリンダー。右にあるのが55mm径のウーファズ
第2空気室から低音をバッフルへと導くダクトパーツ
イヤーパッドを外したバッフル面。中央に見えるのが中高域用ユニット。その下に、2つの黒い穴が見えるが、これが低音が出力されるポートとなる

 なお、ウーファユニット、中高域用ユニットのどちらも、振動板にはカーボン素材を使用。ウーファには制動性に優れた高剛性ユニットベースも採用。中高域用ユニットにはカーボンナノチューブを使用し、専用チューニングを施している。

SZ1000のシリンダー部分。真鍮は使われていないが、銅板でチューニングされているのがわかる

 こうした基本構造は「HA-SZ2000」と「HA-SZ1000」で共通。SZ2000のみの特徴として、ウーファユニットを支えるユニットベースのシリンダーに、比重の大きい真鍮を使用。不要な振動を抑え、重低音のキレを追求している。

 また、鉄素材を加工する際に、材料の中に歪が残っていると音に影響するため、900度で熱した後、時間をかけて冷却する事で歪を低減。「奥行きのと芯のある、クリアな音が出せるようになった」という。

 さらに、ケーブルにもこだわっており、芯線を純銀でコーティングした銀コートOFCを採用している。SZ1000は通常のOFCとなる。また、SZ2000のみ、イヤーパッドに吸放湿性の高い出光興産のプロテインレザーを採用して、ムレを低減。ヘッドパッドにもメッシュ素材を使っている。「コスト度外視で、やれることを全部やったというプレミアムモデル」(三浦氏)と位置付けられている。

 なお、どちらのモデルもケーブル着脱はできない。入力はステレオミニで、iPhoneなどのスマートフォンを保護ケースに入れている状態でも挿入しやすい形状のプラグを採用。ハウジングは折り畳みもでき、ポータブルでの利用も想定されている。

ケーブルは着脱できない
ハウジングは折り畳み可能
正面から見たところ
SZ2000の入力プラグ
SZ1000の入力プラグ
型番 HA-SZ2000 HA-SZ1000
ユニット 重低音用:55mm径
中高音用:30mm径
重低音用:55mm径
中高音用:30mm径
出力音圧レベル 108dB/1mW 107dB/1mW
再生周波数帯域 4Hz〜35kHz 5Hz〜33kHz
インピーダンス 16Ω 16Ω
最大許容入力 1,500mW 1,500mW
ケーブル 1.2m 銀コートOFC線 1.2m OFC線
重量 480g 450g

2015年に国内台数シェア15%目指す

ホーム&モバイル事業グループの宮本昌俊音響事業部長

 ホーム&モバイル事業グループの宮本昌俊音響事業部長は、これまでJVCが「ダイレクトマウント構造」や「ウッドドームユニット」、「トップマウント構造」、「ツインシステムユニット」、「ストリームウーハー」など、独自技術を採用した製品を多く手掛けて来た事や、マルチカラーを採用したイヤフォン「Gumy」シリーズなど、新スタイルを提案するイヤフォン/ヘッドフォンを投入してきた経緯を説明。

 こうした製品により、2012年の台数シェアはイギリスで第1位(4年連続首位)、フランスで第3位、アメリカで第2位を獲得。日本では第3位だが、「お膝元でもあり、さらに上を目指したい」という。

 そのための施策として、今回のSZ2000やSZ1000など、商品力の高い新製品の投入を加速させるほか、Webなどを中心としたパブリシティの積極展開、丸の内ショールームなどを活用したユーザー体験機会の増加、店頭演出の拡大なども実施。こうした取り組みを通して、「2012年に11%の台数シェアを伸ばし、2015年に15%をターゲットにしたい」と、目標を掲げた。

各国での台数シエア
2015年に国内でシェア15%を目指す

音を聴いてみる

会場で試聴してみた

 発表会場で短時間ではあるが試聴できたので、印象をお伝えしたい。プレーヤーはiriver「Astell&Kern AK100」やiBasso Audio「HDP-R10」を使用した。

 SZ2000で「イーグルス/ホテルカリフォルニア」(24bit/192kHz)を再生すると、冒頭からベースの量感と、沈み込みの深さに驚かされる。「ゴーン」という地を這うような低域で、迫力が凄いが、同時にタイトで芯がシッカリとあり、不必要にボンワリと膨らまない。トストスと切れ込むような鋭さも同居しており、心地良い。

 三浦氏によると、磁気回路にはネオジウムマグネットを使っているが、その中でもグレードの高い360kJ/m3のものを採用。さらに、前述のように真鍮パーツで制動をシッカリと行なうことで、この情報量の多さと迫力が同居した低音を実現しているという。低域のドライブ能力が高い「HDP-R10」で再生すると、屋外用ヘッドフォンではあまり味わった事のないレベルの低音がズシンと頭蓋骨に響き、驚かされる。

 これほどパワフルな低音を出すと、通常のヘッドフォンでは中高域にまで影響が及び、全体としてモコモコした、抜けの悪い音になりがちだが、中高域と低域を個別ユニットで再生する独自構造であるため、パワフルな低音の影響を受けず、非常にクリアな中高域がスッと抜け出てくる。

 イヤフォンのFXZシリーズを試聴した際に、「ホームシアターで例えると、サブウーファの音量だけを、ちょっと上げ目にしたような感覚」と記載したが、まさにあのイヤフォンの感覚を、ヘッドフォンにしたモデルと言える。同時に、ヘッドフォンならではの音圧、量感といった要素も加わり、独自の魅力に昇華している。サイズは大ぶりではあるが、ポータブル利用もできるヘッドフォンの、従来の低域イメージを覆すサウンドと言って良い。同時に中高域のクリアさも兼ね備えているため、派手ではあるが、やり過ぎ感は無いため、重低音よりもニュートラルなハイファイ系のサウンドが好きというユーザーにも、一聴の価値があるだろう。

 この低域を、強固に制動しているSZ2000に対し、SZ1000はある意味“パワフルさ”がむき出しになったモデルとも言える。そのため、低域の中の細かな描写まで聴きとるというよりも、空間に充満する低音の音圧が押し寄せてくるようなバランス。SZ2000と比べると、クリアさや中高域の抜けの良さは若干落ちる。だが、パワフルさがより前面に出ているため、クラブ系サウンドなどを、よりアグレッシブに楽しみたいというニーズにはSZ1000の方がマッチする事もありそうだ。

(山崎健太郎)