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KDDI、音楽ライブを映画館で生中継する「Live'Spot」

大画面映像と5.1ch音声で「ライブ会場とは違う価値」

Live'Spot

 KDDIは16日、音楽ライブ映像を映画館に生中継するサービス「Live'Spot」を、イオンエンターテイメントと共同で7月17日より開始すると発表した。

 チケットはサービスサイト内で予約/購入でき、チケット価格はイベントごとに異なるが、「一般的なライブの半分くらいの価格で考えている」(KDDI)としている。Live'Spotを実施する劇場は、イオンシネマ、109シネマズ、Tジョイ、TOHOシネマズ。

 ライブ配信の第1弾として、8月15日に「BLUE NOTE TOKYO」で行なわれるJUJUの「JAZZ TOUR 2013-DELICIOUS 2ND DISH-」ファイナル公演のライブビューイングを行なう。KDDIがコンテンツの配給とプロモーションを担当し、映画館のイオンシネマを展開するイオンエンターテイメントが各劇場、上映、プレイガイドに関わる調整を行なう。

情報入手、チケット購入、鑑賞の流れ

 「Live'Spot」は、映画館でドリンクやスナックなどを片手に音楽ライブの生中継を気軽に楽しめるというもの。劇場の大画面と5.1chサラウンド(劇場によってはステレオの場合もある)で音楽ライブを体感できる。チケット入手が困難な人気ライブや、遠出/立ち見での鑑賞がしづらい家族連れなどにも最適としている。

 8月15日に行なわれるJUJUのライブ生中継は、イオンシネマ約30館など、前述した4社の劇場合わせて約60館で実施予定。ライブの開始は20時30分。チケットはイープラス(e+)で販売され、価格は3,500円(全席指定)。チケット予約(抽選)は7月17日(水)11:00~7月24日(水)15:00に行ない、一般発売は7月31日(水)11:00から。上映劇場などの詳細はLive'Spotのサイトで案内している。なお、劇場ではなくライブ会場であるBLUE NOTE TOKYOで実際に観覧した場合のチケット料金は8,500円~(席によって異なる)。

 映像はフルHD(1,920×1,080ドット)のMPEG-4 AVC/H.264で配信。伝送には衛星と光回線を使用する。KDDIがこれまで行なった光回線での劇場向けの配信では、ステレオ音声の場合で約200スクリーン規模まで可能だったが、5.1chの場合は50~60スクリーン程度を上限としている。イオンエンターテイメントによれば、光回線環境が整った劇場は現状では少ない一方、衛星受信はチューナとアンテナ1基ずつで可能なため、対応する劇場が増えているという。このため、音楽ライブの観客動員規模に応じてライブ配信の劇場数を増やすことも可能としている。

劇場の大画面と5.1ch音声で音楽ライブを生中継
KDDIとイオンエンターテイメントの役割
第1弾となるJUJUのライブ概要

ODS市場の拡大に期待。「ライブ会場とは違う価値」

KDDI 商品統括本部サービス企画本部長 片岡浩一氏

 17日に横浜のイオンシネマ みなとみらいにおいて、Live'Spotの発表イベントを開催した。KDDIの商品統括本部サービス企画本部長 片岡浩一氏は、今回のサービスを開始する背景として「ライブ市場の活性化」と、「ODS(Other Digital Stuff/映画館での映画以外のコンテンツ総称)市場の立ち上がり」を挙げた。

 同社の試算によれば、音楽ライブの公演回数は'02年以降継続して増加。また、ODS市場については'05年のデジタル上映の規格統一に端を発し、'09年のマイケル・ジャクソン「THIS IS IT」などで上映実績が増え、'10年以降はパブリックビューイングの一般化により認知が拡大したと見ている。試算では、'12年度のODS市場は50億円で、'10年度の10億円、'11年度の28億円から成長を続けているという。

 こうした環境の中、実際にライブ会場へ行くことについて「競争倍率が高くてチケットを買えない」、「会場が遠い」、「立ちっぱなしで疲れる、お腹がすく、暑い」、「チケットの価格が高い」といった不満も存在すると指摘。「(JUJUライブ会場である)BLUE NOTE TOKYOは席が少なく、チケットも高額だが、同じような環境で楽しめるというのは分かりやすい良さになる」(片岡氏)とした。

ライブ市場の動向
ODS市場の動向
音楽ライブ時の不満
これまでKDDIの企画でライブビューイングを行なったアーティスト
利用者からの反響
今回のライブビューイングとは異なるが、きゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーに密着したドキュメンタリーの「劇場版きゃりーぱみゅぱみゅ」の上映に、100組200名を招待する企画も
SNSとの連携についても検討中

 ライブ鑑賞だけでなく、その感動をSNSなどで共有する仕組みについても計画中で、パブリックビューイング会場内でのつながりや、他の会場とのつながり、アーティストとのつながりにまで発展させていくことを目指す。片岡氏は「ネットプラットフォームを使った、+αの新しい音楽の楽しみ方を提供していきたい」とした。

 なお、今後の実施予定について詳細は明らかにされなかったが、「毎月、新しいアーティストのライブを配信していくことを検討している」という。

イオンエンターテイメントの大山義人 営業本部長

 イオンエンターテイメントは、ワーナーマイカルとの経営統合で7月に生まれた会社で、全国にイオンシネマを展開。これまでもKDDIとの協力で平井堅などのライブビューイングを行なっており、イオンが技術面をサポート、KDDIがau会員などへの告知を行ない、約40劇場で実施した。8,000人以上の観客を動員した。イオンエンターテイメントの大山義人 営業本部長は、「ODSの中でも特に人気の高い音楽ライブを定期的、継続的にシリーズとして提供できることに期待を持っている」と述べた。

 生で聴くことがライブの醍醐味といえる一方で、今回のサービスについては「ライブ会場とは全く違う価値として提供する。快適な空間でライブ楽しむことや、ゆったりと音楽そのものを純粋に楽しんでいただくことが支持されると考えている。これまで音声はステレオでの配信が多かったが、KDDIとの協力により5.1ch配信を実現し、劇場の施設をフル活用していく」とした。

 発表会には、ゲストとして品川庄司の品川祐さん、しずるの村上純さん、池田一真さん、タレントの水沢アリーさんも登場。会場のイオンシネマ みなとみらいで、K-POPアーティスト・BOYFRIENDのライブ映像(6月公演)をデモ上映した。

 今回のデモでは、イオンエンターテイメント本社から光回線で伝送した映像/音声を劇場のスクリーンと5.1ch音声で鑑賞。音声をステレオと5.1chで切り替えての比較を行なうと、品川さんは「クラブと田舎のスナックくらいの違い」と表現。水沢さんも「本当にライブ会場にいるみたいな重低音で、リズムを“足づたい”で感じる」と興奮した様子だった。映画監督も務める品川さんは、「生でいて臨場感もありながら、編集したようなカット割りもあるのが見どころ。ライブツアーに行く前後の予習復習にもいいのでは」とした。

ライブ会場の歓声もサラウンドで聴こえることから、「臨場感があって高揚できる」(品川さん)、「歓声がちょうどいいバランスで聴こえる」(村上さん)と評価。聴く前に「ダメだったらダメと書けよ!」と報道陣を挑発していた池田さんも、実際の音を聴くと「僕は音質にもこだわっていますが『ここまで来たか』と。重低音で体が動くんですよ」と驚いていた

(中林暁)