ニュース

【CEATEC 2013】ソニー平井社長、パナソニック津賀社長に聞く“手応え”

4Kへの期待、スマホ事業の明暗、消費税増税

 「CEATEC JAPAN 2013」が10月1日に幕張メッセで開幕した。初日となる1日には、各社の首脳陣も会場を訪れ、自社ブースや他社ブースを視察したほか、報道陣の質問にも答えた。ソニー平井一夫社長、パナソニック津賀一宏社長のCEATEC会場での動きを追った。

スター製品でステージ構築したソニー

CEATEC JAPAN 2013のソニーブースで取材に応える平井一夫社長

 ソニーの平井一夫社長が、幕張メッセで開催中のCEATEC JAPAN 2013のソニーブースにおいて、報道陣の取材に応じた。平井社長は、「ソニーのユニークさを感じてもらえる製品を展示できた」と自信をみせた。

--今回のCEATEC JAPAN 2013での展示の目玉はなにか。

平井:展示の目玉は有機ELの4Kテレビや、スマートフォンに接続するレンズスタイルカメラなど。新たな製品を紹介させていただいている。4Kの有機ELテレビは黒の沈み方や白の出方が美しいという評価を得ており、2D映像でも立体感ある映像を感じてもらっている。プレミアム商品を強化するというよりも、ソニーが培ってきた音に対するこだわり、映像に対するこだわり、デザインに対するこだわり、そして、面白い商品を出していこうというこだわりを、ソニーブースに展示している。お客様に感動してもらえる商品をソニーは出し続けないといけない。ユニークさを感じてもらえる製品が展示できたと考えている。展示会のブースは、いかに製品が輝くかということを念頭においてデザインしてほしいと社員にいっているが、白を基調とした明るい雰囲気で、スターである製品が輝く「ステージ」を表現できている。

日本では初公開となった4K対応有機ELテレビ

--4K対応テレビの手応えはどうか。

平井:日本においては量販店店頭で、美しい映像表示や、フルHDのコンテンツをアップコンバートして、4Kに近い形で楽しんでもらえるといった機能についても丁寧に説明できる状況が整っており、4Kのメリットを評価していただいた上で、購入してもらっている。これは大変いい状況だと感じている。

--スマートフォンにおけるソニーの課題はなにか。

平井:ソニーのXperia Z1は、社長就任以来申し上げている「One Sony」を実現した製品である。すべてのソニーの技術力を徹底的に活用し、スマートフォンという形に凝縮して、お客様に届けたもの。国内外で高い評価を得ている。これに、ソニーが持っているネットワークサービスやアプリケーション、もしくは様々なコンテンツを楽しんでいただける点が評価を得ている。一方で、ソニーモバイルのビジネスをグローバルに見た場合には、米国や中国でどのように展開していくかが課題となる。マーケットに対して、Xperiaのすばらしさをいかに伝えていくかが鍵。全世界のお客様に店頭でどうアピールするかという点もポイントになる。

--国内では、ドコモがiPhoneの取り扱いを開始したが。

平井:最終的には、お客様が選んでいただくものである。ソニーのXperiaをご検討いただけるように、いかにいい製品を作っていくかに尽きる。それをいかにマーケティングしていくかということに徹底的に注力していく。競争が激しいビジネスであり、5年前にはまったく別のトッププレーヤーがいた市場。強い製品を出して行かなくては、前には進めない。

トヨタ自動車の豊田章男社長(左)にレンズスタイルカメラを説明

--スマホを強化することで、デジカメなどのほかの製品に影響は出ないのか。

平井:スマホの強化は、普及価格帯のデジタルカメラに影響することになるのは確かである。しかし、これはソニー1社の問題ではなく、業界全体がそうした傾向に向かっている。普及価格帯のデジカメをスマホに代替しようと考えているお客様がいれば、その時にはソニーのXperiaを選択してもらい、ぜひ、ソニーファミリーの製品を使ってもらいたい。そのためには、撮像技術や知識、ノウハウをつぎ込んだスマホを出すこと必要であり、最終的にはそれがソニーにとってのメリットになると思っている。カニバリゼーションはあるが、それを恐れていては勝てない。

--黒字化に向けて、製品ラインアップ面での整備はできたのか。

シャープ奥田会長にもレンズスタイルカメラをアピール(撮影:太田 亮三)

平井:レンズスタイルカメラや4K対応テレビ、PlayStation 4といったように相次いで製品を発表したが、これが一過性のものではダメである。いかに今年後半、来年に向けて、ユニークな製品を次々と発表、発信し、アピールしていく継続性が、ソニーのビジネスの健全化につながっていくことになる。これからもソニーらしいといわれる商品を出し続けたい。花火が一度あがって、それで終わりということではいけない。日本の景気が上向いてくるなかで、自信を持ってユーザーに購入していただける製品をもっと投入したい。海外では回復基調にありつつも厳しいところもある。テレビとモバイルの黒字化について、第1四半期ではプラン通りである。年間を通じてどうなるかがこれからの取り組みとなる。

--エンターテインメント事業については今後どう考えているか。

平井:11月にエンターテインメントビジネスに関して説明する場を考えている。

--消費税増税の影響はどうか。

平井:短期的にいえば、製品の買い控えなど、少々ネガティブなこともあるだろうが、中長期的にいえば日本の財政を安定させるということは、国にとっても、企業にとってもいいことである。経済を下支えする重要なことであり、経済も上向きつつあるなかで増税に踏み切ったことはいいことだ。ポジティブな面が出てくることを期待している。ソニーとしては、今回展示しているような、喜んでいただける製品を出して、評価してもらうことが大切である。ソニーが力強い製品を出していくためには、サプライヤーと技術の面でも協力をしていかなくてはならない。消費増税を期に一方的な交渉によって価格転嫁するのではなく、パートナーシップをしっかり組んでいくことがソニーの力強い製品づくりにつながる。そのあたりを含めてパートナーとお付き合いしていきたい。

 法人減税に関してはいえば、国内では半導体製造をやっているが、需要動向をみながら必要に応じて日本への投資を考えていきたい。減税効果を賃金増加へと当ててほしいという要望もあるが、一企業としての業績回復の状況が影響することになる。

開催初日にはパナソニックの津賀一宏社長がソニーブースを訪問した

--アベノミクスの影響はどうか。

平井:ソニーは、国内と海外でビジネスを展開しているが、国内ではアベノミクスの影響がプラスに出ており、テレビの売り上げも好調である。個別の対策はあるが、日本が元気になるような政策を期待したい。国民が心配することなく、住宅や自動車、エレクトロニクス製品を消費して、生活を豊かにしようと前向きに思えるような政策をお願いしたい。

パナソニック津賀社長「4K」イチ押し。ドコモツートップ戦略に一定の理解

パナソニックの津賀一宏社長

 パナソニックの津賀一宏社長は、CEATEC JAPAN 2013のパナソニックブースにおいて、報道関係者の質問に応じた。津賀社長は、「有機ELテレビは、一刻も早く出したいが、まだ技術開発が追いついていない」などと語った。

--CEATECの会場を見てどう感じたか。

パナソニックのブースは、4Kの展示に絞り込んだ

津賀:これまではデジタル化の進展とともに、フルラインアップで商品を展示する形だったが、ブースが小さくなったこともあり、各社とも、自分たちの訴求したい「いち押し」のものを見せるという傾向が強くなった。会場で各社のブースをまわって感じたのは、「皆さん、まだまだ力があるな」という点。パナソニックブースは、スマートハウスを出すか、4Kを出すかに絞り込み、最後に私が判断した。理由は、日本の皆さんに、まだ4Kの有機ELディスプレイや4Kタブレットを見ていただいていないため。この機会に見て頂きたいと考えた。また、ちょうど4Kテレビの発売時期にも重なったので、4Kという形にした。4Kは、これからもどんどん技術が進化する。4Kの可能性は、我々自身も手探り状態であるが、今回、展示した20型の4Kタブレットは、紙の世界、印刷の世界、写真の世界、動画の世界が融合でき、しかも手元で見ても紙のクオリティ以上のものを出せる提案が可能になる。これが4K技術、4Kディスプレイが持つポテンシャルのひとつである。ただ、これは4Kテレビという形では、すぐに引き出せるポテンシャルではない。このようなところはメーカーである自らの努力で市場を広げることが大切だと考えている。コンテンツを広げる、カメラを広げる、新しい用途を広げるといったように、4Kの可能性はテレビだけでは終わらせない。

--4Kでは規格の標準化の問題もあるが。

津賀:4Kの場合は、圧縮方式が次世代のもので決まれば、あとの規格はそんなに大きくは変わらないだろう。規格の中でバリエーションが出るとすれば、ネットへの対応をどうするのかという点がポイントになる。ネットの進化は速く、ネット対応は否定できないだろう。圧縮が中心になって規格が決定するはずだ。あとはHTML5や、標準ブラウザ機能は何にするのかといったプラットフォームの議論はあるだろう。

--4Kのブラズマテレビはどうなるのか。

津賀:パナソニックは、早い段階でプラズマテレビで4Kを実現した。103型のプラズマディスプレイは4K対応であり、NHKと一緒に試作した146型は、8Kに対応している。高精細化のなかで、フラットパネルの方向性を決定づけるという点では、プラズマディスプレイは大いに貢献してくれた。ただ、65型で4Kを投入するのは、PDPの技術では非常に厳しい。得意な技術を活用して、4Kのパネルなり、テレビなりを作っていくことになる。

--有機ELテレビの投入はどうなるのか。

津賀:一刻も早く出したいと考えているが、まだ技術開発が追いついていない。もっと歩留まりを上げて、信頼性を上げる努力をしていく。

--パナソニックは、コンシューマ向けスマホ事業を休止したが。

津賀:パナソニックは、国内向けスマホ事業に出遅れ、一生懸命キャッチアップし、良い商品を作ったつもりだが、数がある程度取れないとやはり開発費が回収できない。これを考えると、これだけ多くのメーカーがひしめくなかで、赤字を垂れ流してまでこの領域でやるべきなのか。技術者や資金を生かすならば、我々はもっとやりたいことがある。それが、スマホによるBtoBの展開。また、通信技術を様々な業務用機器に組み込むような展開もある。4Kタブレットのような取り組みもある。多くの領域で技術がオーバーラップしているので、選択肢としてメリハリをつけた対応をせざるを得なかった。

津賀社長は展示をひとつひとつ見ながら感想を述べていた
4Kタブレットは実際にペンを取って書き込んでみる

--NTTドコモのツートップ戦略が影響している部分もあるのか。

津賀:ツートップ戦略は唐突のことだったので、我々も準備ができていなかった。ものができあがったところで数が出ない。その点では、今年は計画倒れになってしまったことが厳しかった。ただ、ドコモの状況や周囲環境をみると、この事業は非常に厳しい。あのような戦略的な決断はやむなしと考えている。

--消費増税の影響はどう考えているか。

津賀:消費増税前の駆け込み需要がある一方、その後には、反動による需要減がある。我々としては安定的に景気が回復していくということを、様々な施策において、ぜひ優先してもらいたい。消費増税そのものは、いまの日本の状況を見ればやむを得ない。各種施策を通じて、景気回復を皆が実感できる形にして頂きたい。

--法人減税についてはどう捉えているか。

津賀:もともと日本の法人税は高いというところがある。パナソニックは、二年続けて赤字を計上しており、十分な法人税が払えていないという状況がある。まずは法人税を払えるように事業を立て直すのが第一だ。日本での雇用、日本の技術を、どう守っていくのかが一番大事だと思っている。各種施策と連動することで、実現が容易になるはず。その点では、大いに期待している。

--法人減税は賃金上昇につながるのか。

津賀:それは事業の競争力次第である。競争力が無いのにベースアップはできない。競争力がある事業は多くの賃金を払える。事業そのものの競争力によって決まっていくと思う。

パナソニックブースでトヨタ自動車の豊田章男社長と談笑

--パナソニックブースを訪れたトヨタ自動車の豊田章男社長と話をしていたが。

津賀:私は最近、レクサスを発注しており、納車待ちなのでそれに対するお礼を述べた。また、有機ELはじめてご覧頂いたので、これが将来のテレビを変え、壁が有機ELに置き換えられていくという話をした。トヨタのショウルームやディーラーでも、車のパンフレットをこれに置き換えることができるという話もした。

(大河原 克行)