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ウォークマンZX1/F880で“圧縮音源もハイレゾ相当”にする「DSEE HX」の狙いと効果

ウォークマンのNW-F880で「DSEE HX」をONにしたところ

 ソニーは、12月7日より発売するハイレゾ対応ウォークマンの最上位モデル「NW-ZX1」などに搭載される「DSEE HX」に関する技術説明を行なった。

 「DSEE HX」は、圧縮音源を24bit/192kHzへハイビット/ハイサンプリング化する高音質化技術。NW-ZX1には12月7日の発売時点で搭載されるほか、既発売の「NW-880」についても、アップデートで12月中旬より対応予定。このDSEE HXなどの技術開発担当者により、その効果や従来のDSEEとの違いなどについて説明が行なわれた。

 なお、今回の説明は11月29日に開催された「ウォークマンM」(NW-M505)の説明会の中で行なわれたもの。ウォークマンM関連については、別記事で掲載している。

高域の抜けなどに違いを実感。再生時間が約半分になる点には注意

DSEE HX導入の背景について説明したソニーの企画マーケティング部門 Sound商品企画部 小野木康裕氏

 「DSEE HX」は、MP3やAACなどの圧縮音源でも、24bitへのビット拡張と192kHzへのアップサンプリングを行なうことで、圧縮で消えがちな微小な音の再現性を高めるというもの。

 約7年前に導入された既存技術の「DSEE」は、圧縮音源を“CD相当”とする16bit/48kHzの音質までビット/帯域拡張し、特に高域の“こもり感”解消を実現する技術としてウォークマンに広く採用されている。

 新しい「DSEE HX」は、ここからさらに一歩進んで“ハイレゾ相当”とする24bit/192kHzまでアップスケーリング。ソニーは、様々なジャンルのCDや圧縮オーディオとハイレゾ音源を多数解析。これを元にした独自のアップスケーリングにより、ビット/帯域拡張をより高精度に行なえるという。

DSEE HXの背景と狙い
従来のDSEEと、新しいDSEE HXの違い
DSEE HX技術の詳細を解説したソニーの知念徹氏

 ソニーのシステム&ソフトウェアテクノロジープラットフォーム 情報技術開発部門 オーディオ信号処理技術部の知念徹氏は「ビット拡張により、CDや圧縮音源では薄くなりがちなピアノの消え際、人の声などの微小部分で音が薄くなることを、元の厚みがあるしっかりした音にしたい」と導入の理由を説明。

 一方、再生帯域の拡張については、従来のDSEEで高域部を20~22kHzまで高めたのに対し、DSEE HXでは、サンプリング周波数192kHzまで拡張したことで、40~50kHzまで再現可能とする。「技術的には、96kHzまで帯域の再生が可能だが、実際の楽器音は40~50kHzまでの帯域しか持っていない。192kHzのサンプリングであってもむやみに帯域を伸ばすのではなく、なるべく原音に近づけたかった」と説明した。

 なお、24bitを超える32bitへの対応については、「拡張したとしても、現状ではヘッドフォンなど対応デバイスが無いと評価する方法が難しく、回路にも負荷を掛けてしまう。今回のDSEE HXは、ハードウェアのハイレゾ対応に合わせて24bit対応にしたため作りやすかった」(知念氏)としている。

 このDSEE HXは、前述した通りウォークマンのNW-ZX1にはあらかじめ搭載した形で12月7日に発売。さらに、10月より発売されているNW-F880も、アップデートで12月中旬より対応することがアナウンスされている。NW-F880のアップデートでは、新たにW.ミュージックにおいて「トラック検索機能」も追加される。

DSEE HXの効果を、ハイレゾの元ファイルとMP3 128kbpsの音と比較
DSEE HX技術の概要と効果

 DSEE HXは音質設定メニューでON/OFFの切り替えが可能。今回、試しに「NW-ZX1」と「NW-F880」で再生したところ、DSEE OFF時には高域が上から押さえつけられたように窮屈になっていた圧縮音源が、ONにすると格段に伸びやかな響きに一変した。また、音量をそれほど上げなくても、弦楽器などの細かな描写の再現を実感できたのも印象的だった。せっかくのハイレゾ対応ウォークマンなので「楽曲もハイレゾで揃えたい」のは本音だが、まだ全ての楽曲がハイレゾ配信されてはいない現状においては、自分の好きな曲がハイレゾで買えるまでの間、このDSEE HXを活用するというのも十分にアリだろう。

 なお、DSEE HXの設定画面には「連続再生時間が短くなることがあります」という注意書きがある。大まかにいえば、DSEE HXをONにすると、OFF時に比べて再生時間は約半分になるとのこと(通常の連続再生時間は、ZX1が32時間、F880が35時間)。従来のDSEEでは再生時間が2割ほどしか縮まらなかったというのに比べると違いは大きい。ただし、ハイレゾ楽曲再生時にはDSEE HXを効かせないようにしているとのことなので、例えば「ハイレゾ楽曲ではないプレイリストを聴くときDSEE HXをONにする」といった使い方もよさそうだ。

NW-ZX1でDSEE HXをONにした画面
DSEE HXはOFFにすることも可能(NW-F880)
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(中林暁)