ニュース
4K/8K放送のロードマップ具体化へ。総務省が新会合
(2014/2/26 18:53)
総務省は26日、4K/8K放送実現へ向けた「4K/8Kロードマップに関するフォローアップ会合」の第1回を開催した。4Kの試験放送は、'13年6月に「放送サービスの高度化に関する検討会」において定められたロードマップを元に、'14年内にスタート予定だが、同会合では、4K/8K放送実現に向け、ロードマップの具体化や課題解決策の検討などを行なう場所として設置された。6月頃までに目処として、取りまとめを行なう予定。
'14年の4K放送はHEVCで
'13年6月に設定されたロードマップは、「2014年に124/128度CSとCATVにおいて、4K、スマートテレビを一体として放送開始」、「2016年には110度CSにも拡大し、4Kだけでなく8Kを放送開始」、「2020年には、124/128度CS、110度CS、CATVに加え、BSでも放送を拡大」する、というもの。2013年には官民共同の推進母体としてNexTVフォーラムが立ち上がっているほか、関係団体/企業が協力し、技術仕様の策定や実証実験、コンテンツ制作などに取り組んでいる。
技術的条件については、すでに「超高精細度テレビジョン放送システムに関する技術的条件」のうち「衛星機関放送及び衛星一般放送に関する技術的条件」に関する委員会報告案が取りまとめられており、現在パブリックコメントを募集中となっている。
'14年開始予定の4K放送で使用予定の狭帯域伝送(124/128度CS放送)は、8Kを含まず、4Kでの利用を想定。映像フォーマットは解像度が4K(3,840×2,160ドット)で、フレームレートは120/119.88/60/59.94Hz、色域はBT.2020。映像符号化方式はMPEG-4 AVC/H.264より高効率なHEVC(H.265)を採用。符号化信号方式は4:2:0、符号化ビット数は10bit。
音声符号化方式はMPEG-4 AACで最大22.2chに対応。また、ロスレス向けにMPEG-4 ALS(Audio Lossless Coding)にも対応する。伝送路符号化方式や、多重化方式、限定受信方式は基本的に現行方式を踏襲する。
一方、16年以降の実用化を見込んでいる広帯域伝送(34.5MHz帯域幅。BS、東経110度CS)では、4Kだけでなく8Kを追加し、映像フォーマットは解像度が4K(3,840×2,160ドット)と、8K(7,680×4,320ドット)となる。フレームレートや色域、映像/音声符号化方式などは狭帯域と共通。
新たな伝送路符号化方式の採用などで、伝送容量は最大100Mbpsまで拡大。多重化方式は新しいMMT・TLV方式を基本に据える。ただし、現行のMPEG-2 TS方式についても、HEVC対応のための規定を追加している。限定受信方式は、スクランブル暗号アルゴリズムとしてAESとCamelliaを選択できる。
2014年の4K試験放送については、NexTV-Fによる「次世代衛星放送テストベッド事業」を利用し、各社が制作した4Kコンテンツを年内の放送予定。スカパーJSATやWOWOW、NHK、民放キー局、東北新社、ジュピターテレコムらが4Kコンテンツ制作を担っている。
コンテンツ制作負荷などが課題に
今回の会合では、4K/8Kロードマップの共有と、意見表明が中心となった。具体的な検討課題についての議論などは、新たに設置されるワーキンググループで議論し、4月の会合で論点整理。6月に最終的なとりまとめと公表を予定している。
総務省情報流通行政局の福岡局長は、「2014年は4K/8Kロードマップの最初の目標年。まずは4Kの試験放送に向けて、新しいサービスを視聴者に体験頂ける環境を作る。4Kテレビ需要も立ち上がりつつあるので普及のきっかけにしたい。ロードマップ確定後、東京オリンピック確定などの状況変化もあった。昨年定めたロードマップの具体化がこの会合の目的」と説明した。会合の座長には、東京理科大学の伊藤晋教授が、ワーキンググループの座長には、NHK技研の藤沢秀一所長が就任する。
会合では、各事業者やメーカーらが意見を表明した。
NHKは、「8Kが東京オリンピックが決まったことで、更に具体的になってきた。NHKでは送出設備の整備や、コンテンツについても検討/勉強しており、常にロードマップを意識して進めている。ロードマップはある種の『バイブル』になっている。しかし、例えば2016年の8K試験放送。試験放送だと考えているが、このロードマップには、“試験”とは書かれていない。ロードマップを決めるときにはまだわからないこと、書きにくいことがあったが、いまでは多くの場面で使われるものになった。もっとわかりやすく、誰が見てもわかるロードマップにする必要がある」とコメントした。
民放キー局からは、「巨人戦の3時間コンテンツを作成したが、84型で4K/5.1chでみると、まさにその場にいるような効果がある。“没入感”とはこういうことかと理解できた。ロードマップは確実に進んでいるものの、事業性の面からは奇跡的な努力とブレークスルーが必要。制作環境は地デジとは程遠く、どこに出して、どう回収するかなどの道筋はまだこれからのチャレンジ」(日本テレビ)や、「コンテンツ制作が局の役割。マスターズや世界遺産、バレエなどを撮影したが、確かに没入感は素晴らしい。ただし、製作時間やコスト、機材調達などでは多くの課題がある(TBS)」、「フィギュアスケートのグランプリファイナルを4K撮影してプレビューしたが、多くの人が見に来た。ゴルフの全英オープンや世界水泳なども制作した。ただし、制作からは“4K酔い”という課題も挙げられた。どのような制作環境が望ましいか、検討している。また、編集時間も思っていた以上にかかる」(テレビ朝日)、「早期に4Kカメラを導入し、検討した。地デジと同じような環境の構築が理想だと考えているが、難しいと実感している。現在は力づくで作っている段階で、(4K)番組を量産化するのはハードルが高い」(テレビ東京)、「フジサンケイクラシックを4Kで撮影した。ピントや機材運用の問題はあるが、4Kの表現力は、スポーツや技術局の現場は評価し、やる気にあふれて制作できた。4Kのための予算も作り、来年度は本数を上げていく。ただし、継続的に4Kをやるのであれば、地上波も4K制作しながら、ダウンコンバートする形にしていかないと増えていかない。場合によってはドラマやバラエティなども4K制作になるが、負荷も高いので作り手の自主性に委ねたい。積極的に取り組む方針だが、費用は持ち出しで、手間もかかる。今は好奇心とやる気でカバーしているので、大きなブレークスルー、ビジネスベースに移すための支援、特に機材や制作予算の支援を頂きたい」(フジテレビ)とした。
WOWOWは、ドラマ制作の実績の紹介のほか、「ビジネスプランニングとなると、チャンネルプランの可能性や有料放送に当たっての課金の仕組みなどが必要。この場で進めていきたい」とコメント。J:COMは、傘下のJ SPORTSでの4K制作やCATVにおいてもNexTV-Fの放送と同時期に4K放送を行う準備を進めていることを紹介した。
また、スカパーJSATは、プラットフォームと番組制作の両面で協力することを表明。特に、2015年には事業として、4Kチャンネルを立ち上げる方針を明らかにした。NTTグループの光回線を使った「フレッツテレビ」についても、4K対応を進めるという。
機器メーカーでは、パナソニックやソニー、東芝らが、4K/8K放送の本格化を歓迎。シャープは、「8Kのフルスペックパネルを早急にやろうと思っている」とコメントした。