ニュース

Hybridcastも8K化、番組外アプリ連携へ。通信で番組データを自由に活用

NHK放送技術研究所

 日本放送協会(NHK)は、東京・世田谷区にあるNHK放送技術研究所を一般公開する「技研公開2014」を5月29日から6月1日まで開催する。入場は無料。公開前の27日に、マスコミ向けの先行公開が行なわれた。

 ここでは、2013年9月からスタートした「Hybridcast(ハイブリッドキャスト)」の新しい取り組みを中心に紹介する。なお、8Kスーパーハイビジョン(SHV)関連の展示は、別記事でレポートしている。

 インターネットを活用した放送通信連携技術であるHybridcast(HybridとBroadcast、Unicastを組み合わせた造語)は、対応テレビを利用し、HTML 5アプリケーションにより従来のデータ放送(BML使用)よりリッチなコンテンツを表示可能。スマートフォン/タブレットをセカンドスクリーンとして、関連情報の取得やテレビ側のHTML 5アプリの操作などができる。

8K高精細を活かして好きな映像と情報を表示

85型液晶を使った8KスーパーハイビジョンのHybridcast展示

 会場1階で目を引くのは、85型ディスプレイを使った8Kスーパーハイビジョン(8K SHV)に対応したHybridcastの展示。8K SHVの高精細な大画面を活かし、豊富な番組関連情報を一つの画面に同時表示している。

 今回デモ展示しているのは、テレビの番組映像に合わせて、通信経由で送られる番組関連情報を見やすく一覧表示したマルチウィンドウ型サービス。HTML5の表現力を活かしたCG表示や、放送と通信から送られる複数映像の同時表示などを可能にする。'16年の8K SHV試験放送の実現に向けて、技術仕様の標準化と放送システムの研究・開発を進めていく。

 8K SHVデータ伝送には、3月にMPEGで標準化されたMMT(MPEG Media Transport)多重化方式を採用。MMTは、現在のMPEG-2 TSに代わる次世代の多重化方式としてSHV放送時の採用が見込まれている。放送と通信の複数の経路から伝送されるさまざまなデータを柔軟に組み合わせて遅延なく同期表示できるのが特徴で、手元のタブレットなど携帯端末と連携したコンテンツ表示も行なえる。

 デモには、'13年10月に行なわれた「日本女子オープンゴルフ」の映像を使用。プレー中の映像を観ながら、出場選手107名のスコアなどを全て表示するといった、高精細を活かした表示を行なっている。文字だけでなく、特定選手だけを追ったライブカメラ映像の子画面表示も可能。また、CGを使った自由視点のインスタントリプレイで選手のスイングなどを確認でき、ミニゲームも遊べる。そのほか、SNSのコメントや、多言語対応の字幕も同時表示可能。

8K解像度を活かし、全選手のスコアが一度に表示可能
デモで使われたアプリのメニュー
特定選手の映像を子画面表示することも
リプレイをCGで表示。視点も変えられるため、スイングをチェック可能
ミニゲームも遊べる
多言語対応の字幕とSNSコメント表示

 8K SHVの字幕と文字スーパーは、文字の記述に国際標準文字符号のUCS(Universal Multiple-Octet Character Set)や、表示のタイミングやレイアウトなどの制御情報を指定できるTTML(Timed Text Markup Language)符号化方式を提案。従来のような画面下部の固定表示に加え、Hybridcastアプリによる動的な表示が可能になる。

録画番組やVODもHybridcast対応。番組データの様々な活用提案

Hybridcastの高度化に向けた新しい要素技術

 今後のHybridcastの高度化に向けた新しい要素技術として、「VOD/録画再生への対応」、「放送外マネージドアプリ」、「プッシュ型配信技術」なども展示。これらの要素技術の規格化や実用化を進め、Hybridcastサービスの充実を図る。

 「VOD/録画再生への対応」は、放送局が提供する番組表アプリからNHKオンデマンドのVODの再生を可能にするもの。従来のようにリアルタイム放送からHybridcastアプリなどの通信コンテンツにアクセスできるだけでなく、録画済みの番組や、NHKオンデマンドのVODコンテンツからも番組に連動したアプリを利用できるようになる。

 例えば、レギュラーの情報番組などで、ある話題が先週オンエアした内容に関係していた場合、視聴者が希望すれば先週の該当シーンをすぐ再生できる。そのシーンは、レコーダなどに録画済み番組から、該当の時間を指定してその部分だけを観られる。こうしたサービスを実現するには、Hybridcastの仕様おいて、アプリからテレビなどの機器を操作することが許可され、実際にメーカーがその機能を採用することが必要となるが、技術的には可能だという。

放送中に、前回オンエア分の特定シーンが関連していることを画面上に通知。観たい場合はタブレットから操作すると、録画番組からそのシーンを呼び出して再生可能

 「放送外マネージドアプリ」は、放送局がチャンネルごとに提供するアプリだけでなく、他の事業者が制作し、チャンネルをまたいでサービスを利用できるもの。例えば、視聴中に表示させたHybridcastアプリが、チャンネルを変えても引き続き表示できるようになる。ある局は番組にアプリをオーバーレイ表示することを許可し、他の局は許可していない場合も、アプリの表示方法だけ変えることで、チャンネル変更後もアプリの利用を続けられる。放送外マネージドアプリは、Hybridcastの次期バージョン(フェーズ2)に盛り込まれる予定で、6月~7月にIPTVフォーラムから技術仕様が公開される。

放送外マネージドアプリの概要
受信チャンネルを変えても、同じアプリを引き続き利用できる

 「プッシュ型配信技術」は、Hybridcast対応の受信機やスマートフォンなどの携帯端末に、インターネット通信経由の情報をプッシュ型で配信することで、リアルタイムで多様な情報を取得できるようにするもの。放送局以外の事業者も、番組の進行に合わせた関連情報や、視聴者個別の気象/災害情報などのデータをリアルタイムに提供できる。

 上記のように、放送局や事業者をまたいでデータのやり取りを簡単に行なえるようにするため、NHKは「番組関連データの配信管理技術」を開発。メタデータなど放送番組に関連する情報を外部サービス事業者へ提供可能にすることで、番組連動アプリを放送事業者以外でも制作できるようになる。VODサービス向けには「事業者間連携メタデータ」という共通化されたデータが存在するが、これにHybridcastアプリ用などを想定したより詳細なデータを加えた形で、よりリッチなコンテンツを制作できるという。NHKは現在、IPTVフォーラムなどにこの配信管理技術を提案している。

プッシュ型配信技術
番組関連データの配信管理技術
サービス事業者向けの、番組関連データ取得ソフトの画面
「テレビノート」のデモ。タブレットをタップすると、テレビ画面上に矢印が表示され、そのシーンをクリップ

 そのほか、Hybridcastアプリの一例として「テレビノート」も展示。番組視聴中に気になるシーンがあった場合、手元のタブレットなどをタップすると、その情報を「クリップ」しておき、後からそのシーンに関連する情報をネット経由で詳しく調べられる。タップされたタイミングをアプリに記録され、番組で紹介した本をAmazonで購入したり、登場した地名を地図で調べるといったことができる。単にスマホなどでテキスト検索するのと今回の「テレビノート」の違いは、番組視聴中の操作はタップだけなのでテレビに集中でき、見終わった後で振り返って関連情報を探せるという点。

 現時点では、タブレットでタップした「画面の位置」をアプリ側では記憶できるものの、それを番組と連動して「どの位置がタップされたか」を実際のサービスに活用することまでは、番組側でメタデータ化されていないためできない。今後は、出演者や登場した商品などの細かいデータベースを作ったり、ロケのスタッフしか知らない情報など独自のデータを集約することで、様々なサービスへの発展が期待できるという。

番組を観たあとで、クリップしたシーンを確認。関連する地図や商品などの情報をチェックできる
民放各局が現在取り組んでいるHybridcast活用のデモも行なっていた

(中林暁)