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シャープ、MEMS-IGZOディスプレイを2017年量産。-30度でも動作

車載やタブレットなど新ディスプレイ市場を開拓

 シャープは12日、MEMS-IGZOディスプレイの量産化に目処が付いたとし、技術説明会を開催した。MEMS-IGZOディスプレイは、次世代の中小型ディスプレイとして、シャープが米Qualcommの子会社Pixtronix(ピクストロニクス)と共同で開発しているもの。2015年のサンプル出荷と2017年の量産化に目処が付いたことから、今後の展開を説明した。

シャープが公開した7型MEMS-IGZOディスプレイ

色再現や耐環境性能で新しいディスプレイ市場を開拓

 今回披露したMEMSディスプレイは、7型で解像度は1,280×800ドット。2013年のCEATECに出展したものとサイズや解像度は同じだが、色再現性などが大幅に向上しているという。

 MEMS-IGZOディスプレイは、MEMSシャッターとスリット、LEDバックライトだけという単純な構造。RGBのLEDバックライトが順次点灯するフレームシーケンシャル方式で、画素毎にMEMSシャッターが高速で開閉制御し、画像を表示する。シャッターの開閉速度は約100マイクロ秒。

 製造時に既存の液晶ディスプレイ製造装置を活用できるため、液晶を手がけるシャープは、次世代の特徴あるディスプレイとしてMEMSを推進している。

MEMS-IGZOディスプレイの動作原理
MEMS-IGZOディスプレイの動作原理
バックライトの消費電力を大幅に削減

 ディスプレイ開発本部 副本部長 兼 デバイス技術開発センター所長の伴厚志氏は、MEMS-IGZOディスプレイについて、「低消費電力」、「高色純度/色再現性」「表示コンテンツに応じた低消費電力性能」、「耐環境性能」の4つの特徴を説明した。

 MEMSでは、液晶のようなカラーフィルターや偏光板などが不要となるため、LEDバックライトの光を高効率で利用できる。液晶ディスプレイに比べ2〜3倍の光学効率を得られるため、バックライトの消費電力を大幅に抑えられるとする。

高色再現性を実現

 色再現性については、カラーフィルターを利用しないというMEMSの特性のほか、RGBバックライトを活用するため、色純度が高く、NTSC比で約120%の高色再現性が実現できるとする。実際にデモ展示も行なっており、カラーの動画での広色域/動画表示時にはMEMSシャッターを高速動作させ、静止画ではMEMSシャッターの速度を抑制、モノクロ表示ではバックライトを白色点灯させ、シャッター速度をさらに抑えることで、消費電力を抑えることができることを紹介した。

表示コンテンツに応じて駆動制御を変えて消費電力を削減
動画から静止画にコンテンツが変更されると、右側の消費電力メーターの値も減少する

 最後の特徴が耐環境性能。高コントラストかつ高輝度な表示が行なえるため、外光下でも鮮やかに文字や動画が見えるとして、実機デモも交えて紹介。液晶との見え方の違いなどをアピールしており、スマートフォンやタブレットだけでなく、屋外業務用端末などでも大きな可能性があるとした。

外光下での視認性の高さもMEMS-IGZOの特徴

 また、液晶の場合は、-30度といった超低温では動画ボケが発生したり、80度などの高温環境では色再現性の低下が見られるが、MEMS-IGZOはそうした過酷な環境での表示も可能。そのため2015年のサンプル出荷以降、こうした特徴を活かしたアプリケーション(用途)開発を進める方針という。

-30度の超低温環境下でのMEMS(左)と液晶(右)の動作比較。液晶は動画ボケが発生する

 MEMS-IGZOの量産化は2017年を予定しており、それまでに量産技術の確立とともに、製造コスト削減などに取り組む。現時点では車載ディスプレイやタブレットなどの用途を提案しており、2017年までの間に市場性の調査やパートナー企業との協力作業を進める方針。特に車載については、「信頼性の確保など、採用企業との作業に時間がかかる」(シャープ 代表取締役 専務執行役員 方志教和氏)とした。

MEMS-IGZOディスプレイのロードマップ
米子工場で試作

 現在のサンプルは7インチだが、大画面化ついても「用途があれば、技術的な制限は無い」(ディスプレイ開発本部 伴厚志副本部長)と説明。また、高精細化については、「どこまで必要なのか、人間が認知できる精細度はどれくらいか、議論は分かれるが、現在の液晶で達成している500〜600ppiはひとつのターゲット」(方志氏)とのことで、2017年に向けて高精細化も推進していく。

 現在はシャープ米子工場の2.5世代の試作ラインで開発を進めており、2015年のサンプル出荷までは同ラインを利用する方針。今後の投資については「未定」。

 量産に向けた課題としては、「基本的には液晶と同じプロセスだが、MEMSシャッターやその周辺技術などMEMS固有の部分については課題がある」(伴副本部長)とした。

新たな競争軸を狙うMEMS

シャープ 代表取締役 専務執行役員 方志教和氏

 シャープ 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当 方志教和氏は、同社の中小型ディスプレイ事業の現状について、「新たな競争軸が必要」と切り出し、MEMS-IGZOディスプレイの展開を説明した。

 方志氏は、現在の液晶における競争軸である「高精細」、「狭額縁」は、いずれ飽和すると予測する一方、さらなる「低消費電力」へのニーズは今後も続くとみる。さらに今後の競争軸としては、異型ディスプレイのような「デザイン性能」、屋外視認性や低温化での表示性能などの「耐環境性能」、センサー統合などの「ユーザーインターフェイス革新」などが必要と予測している。

新たな競争軸としてMEMS-IGZOによる耐環境性能や低消費電力を追求
フリースタイル液晶でデザイン性能を開拓

 このうちデザイン性能については、6月に披露した「フリーフォームディスプレイ(FFD)」のような提案で、車載などの用途開拓を狙っているが、今回発表のMEMS-IGZOでは、従来の液晶で達成できなかった「超低消費電力」、「耐環境性能」、「高色純度」などの特徴を訴求し、新たな用途、市場開拓を図る。

 また、Qualcomm/ピクトロニクスとの協力については、特にMEMSシャッターに強いピクトロニクスの技術を活かし、その量産に共同で取り組む姿勢を強調した。

ピクトロニクスのグレッグ・ハインジンガー社長

 Qualcomm上級副社長でピクトロニクス社長であるグレッグ・ハインジンガー氏は、ピクトロニクスの沿革ともに、両社がデータなどを共有し、MEMS-IGZOの立ち上げに積極的に協力している姿勢を強調。早期の量産化に向けて自信を見せた。

(臼田勤哉)