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パイオニアは“カーエレクトロニクス”企業に。新事業方針

「大きく変わる最後のチャンス」。AV、DJブランドは継続

 パイオニアは16日、ホームAV事業の譲渡DJ事業の譲渡に伴い、カーエレクトロニクス事業を主軸とした新事業方針を発表した。パイオニアの小谷進代表取締役社長は「パイオニアが大きく変わる最後のチャンス」と語った。

パイオニア 小谷進代表取締役社長

カーエレに集中投資。OEM、市販市場を攻める

カーエレクトロニクス事業の環境変化

 新事業方針では、カーエレクトロニクスに集中。自動車産業は新興国を中心に今後も継続的な販売が成長すると見込まれるほか、先進国においても自動車のIT化や自動運転などの取り組みが進められている。そのため、パイオニアは、高い信頼やブランド力、技術力を活かし、車室空間における快適や感動、安全・安心を創出する「総合インフォテイメントのリーディングカンパニーを目指す」としている。

 OEM市場においては、自動車メーカーやメガサプライヤーにとっての「なくてはならないキーサプライヤー」を目指す。市販市場においては、世界初・世界最先端の価値を他社に先駆けて提案、拡大し、「コネクテッド・カーライフ市場における先駆者としてカーエレクトロニクス業界を牽引する」としている。

パイオニアが目指す姿

 先進市場においては、車がクラウドにつながる「コネクテッド化」への対応を強化。地図データやスマートループなどの「情報サービス」、「車載機器」本体、照明やヘッドアップディスプレイなどの「周辺機器」などのそれぞれを強化し、市販や業務市場での成長を目指す。またこれらの開発により車の価値を最大化するキーサプライヤーとして、OEM市場でのポジション確立を図る。

 新興国では今後も大きな市場拡大が見込まれるが、一方で、パイオニアが得意としていた先進/ハイエンド層ではなく、小型化、大衆化が求められる市場となる。ここへの対応も成長戦略の一環となっており、新興国のスモールカーや既存のオーディオレスカーなどの市場対応を強化。シェアやブランド力を武器に、M&Aを視野に入れながら、新興国市場でもシェアの拡大を狙う。

戦略骨子
成長戦略
情報サービス、車載機器、周辺機器の強みと強化ポイント
コネクテッド化に対応し、OEM、市販ともに拡大へ
新興国市場でもシェア拡大を

ホームAVとDJはパイオニアブランド継続も持分法適用外に

 ホームAVはオンキヨーとの経営統合を目指し、DJ事業についても投資ファンドが設立する新会社に譲渡。外部パートナーとともに、引き続き“パイオニア”ブランドでの事業やブランド価値拡大を図っていく。ただし、出資比率は各14.95%とすることで、持分法適用子会社から外し、AVやDJの収益が本体の収益を左右しない、「カーエレクトロニクス集中」体制とした。

ホームAV、DJ事業譲渡の背景

 ホームAVについては、新会社を2015年3月に設立し、パイオニアから14.95%を出資するとともに、パイオニアブランドで継続。オンキヨーとの統合によるコスト競争力の向上や経営資源の有効活用などを狙う。

 DJ機器事業については、投資ファンドのKKRに590億円で株式譲渡した上で、パイオニアのDJ機器事業を切り出した「パイオニアDJ株式会社」を設立し、同社にパイオニアが14.95%を出資。PIONEER DJブランドを継続する。KKRによる事業分離、独立化のノウハウを活用するとともに、パイオニア単体では不可能だった成長投資についても期待しているという。

ホームAV事業の今後
DJ事業の今後

 小谷社長は、堅実な黒字事業となっていたDJ事業の譲渡について言及。「DJはハードウェアを中心にした400億円規模のニッチマーケットだが、すでに6割のシェアを獲得しており、大きな成長はハードの領域では難しい。今後の成長は、ひとつは約5万拠点といわれるクラブを対象にしたスピーカーなどの機器ビジネス。もうひとつがネットワークで、世界のクラブを結んで情報交換を行なう新しいビジネス。しかし、このネットワークサービスには大きな投資が必要となる。カーエレクトロニクスにも投資も必要なため、パイオニアとしてどちらかに集中する必要がある。また、本来DJの収益はDJ向けの投資に回すべきだが、それができない状況でもあった」と、外部パートナーとの協力を選んだ経緯を説明した。

 なお、カーエレクトロニクスへの集中に伴い、ホームAVは400名強が新会社に移動し、DJ機器事業は300名強が移動。さらに、国内で約800名、海外で約700名の合計1,500名規模の人員削減が行なわれる。人員削減は間接部門が中心となる見込み。

 カーエレクトロニクスについては、現在川越と川崎の2拠点があるが、これを川越に集約する予定。「川越、川崎の2拠点体制になったのは、2009年のプラズマ撤退時。コスト削減が最大の目的だったため、非効率なロケーションだった。今回の改編により、改善していこうという狙い。川崎をクローズするかどうかかは今後検討する」とした。

(臼田勤哉)