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オーテク、Dnote技術を使った世界初のフルデジタルUSBヘッドフォン。実売6万円

 オーディオテクニカは、デジタル信号をデジタルのまま、専用ユニットまでダイレクトに伝送して再生する「Dnote」技術を採用した世界初のフルデジタルUSBヘッドフォン「ATH-DN1000USB」を11月21日に発売する。ハイレゾ再生対応で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は59,800円前後。

ATH-DN1000USB
使用イメージ
ATH-DN1000USB

 Dnoteは、デジタル音源をアナログ変換せずに直接スピーカー駆動できる技術。Trigence Semiconductorが開発し、音源のデジタル信号に256倍のオーバーサンプリング(44.1kHz×256fs=11MHz)とデジタル変調をかけ、複数のデジタル信号に変換。複数のデジタル駆動信号をダイレクトにボイスコイルに伝達し、正確なコーンストロークを実現するというもの。

 ユニットは4つのボイスコイルで構成された専用のものを採用。従来の方式ではデジタル信号をD/A変換し、さらにアンプで増幅するなど、複数の回路を仲介する事で音質が劣化するが、Dnoteでは必要な音声信号だけを選別、抽出し、最適な状態に合成された上で、ダイレクトにマルチボイスコイルへ伝送するため、劣化を抑えた再生ができるという。

Dnote技術を活用している
Dnote技術の概要

 簡単に言えば、デジタルデータをDnoteの特殊なデジタルデータに変換し、それをボイスコイルに伝達している。しかしPCM信号にオーバーサンプリングやデジタル変調をかける部分がDSDに対応していないため、再生できるデータは192kHz/24bitまでのPCMのみとなる。電池などは不要で、USBバスパワーで動作する。対応OSはWindows 7/8/8.1、Mac OS X 10.9。

通常ユニットの動き方
新開発マルチボイスコイルを使ったATH-DN1000USBのドライバユニット。水色の部分がボイスコイル

 入力端子はUSBを搭載。ドライバは53mm径で、再生周波数帯域は5Hz~40kHz。ハウジングは密閉型で、素材は剛性の高いアルミニウムを使い、不要振動を抑制している。

 重量は約380g。USBケーブルは2m。長時間装着しても圧迫感が少ないというトータルイヤフィット設計を採用。フリーアジャストヘッドサポート機構(PAT.P.)により、装着するだけで快適にフィットするという。

USBケーブルでPCと直接接続する
ハウジングの外側にある、太いアーム部分に基板などが入っている
ケーブルの着脱も可能
厚みのあるイヤーパッドを採用

デジタルとアナログの特徴を活かす

 開発を担当した、第一技術部の築比地健三氏と、商品企画部の高橋俊之氏は、開発のテーマとして「とにかく高音質を追求した」と説明。開発で一番困難だったところは、「デジタルとアナログ両方の特徴を活かしきるところ。デジタルには音の立ち上がりが良く、クリアだという特徴があり、そこにオーディオテクニカが培ってきたアナログの音作りのノウハウを投入した。両方の良さをどのように出していくかが鍵で、開発メンバー全員が納得するような音作りができた」(築比地氏)という。

 高橋氏も、「デジタルの良さを出しつつ、リアリティのある音を目指した。非常に良い形で融合できたかなと思う」と、音の仕上がりに自信を見せた。

左から第一技術部の築比地健三氏と、商品企画部の高橋俊之氏

音を聴いてみる

 発表会場のPCとUSB接続し、PCMのハイレゾデータを試聴してみた。

 すぐにわかるのが、ハッとするほどの分解能の高さだ。ヴォーカルの口の開閉、ブレス、シンバルの余韻など、細かな音の情報量がとにかく豊富で、鮮烈なほど良く聴こえる。耳の聴き取る能力がアップしたような感覚だ。

 イメージとして、ハイ上がりでキツい、カリカリしたサウンドを想像するが、実際に聴いてみるとバランスは良好。適度な締まりと音圧のある低域もシッカリ出ている。同時に驚くのは、低域の分解能も中高域に負けじと高く、ベースの弦の動きが、本当に細かく聴き取れる。

 全帯域で分解能が高いため、密閉型ヘッドフォンを聴いているにも関わらず、開放型のような清々しさ、抜けの良さを感じた。

 また、デジタルヘッドフォンの特徴として、小音量時でもバランスがまったく崩れない。通常のヘッドフォンでは、ボリュームを小さくすると低域が不足し、高域が目立っていくが、ATH-DN1000USBの場合は小音量でもバランスがそのままで、低域がしっかりと聴きとれる。試聴の際は、ぜひボリュームを増減させてみて欲しい。ヘッドフォンの新時代を予感させるサウンドだ。

(山崎健太郎)