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角松敏生が「レーザーターンテーブル」の音を検証。TOKYO FM収録現場レポート

 TOKYO FMは、毎週土曜21時〜21時30分に放送しているラジオ番組「ODAKYU SOUND EXPRESS」において、レコードをレーザーで読み取って再生する「レーザーターンテーブル」を12月13日より3週連続で特集。パーソナリティの角松敏生さんが、レーザーターンテーブルとCD音源を比較して音の違いを検証した。この模様は、同番組において12月13日と20日、27日の回でオンエア。その収録現場の模様をレポートする。

角松敏生さん

 今回の特集では、ELP(エルプ)のレーザーターンテーブル「LT-master」をスタジオに持ち込んで使用。この製品は、レコード針ではなくレーザーで読み取って再生するため、レコードの傷を防げるのが特徴。レコードの音情報をありのままに再生するというレーザーターンテーブルとCD音源を比較し、角松敏生さんが音の違いなどを語った。

 角松敏生さんは'81年のデビュー後、シンガーとしてだけでなく、杏里「悲しみがとまらない」('83年)や、中山美穂「You're My Only Shinin'Star」など数多くの作品をプロデュース。自宅にレコーディングスタジオを持ち、レコーディングと音質への深いこだわりでも知られる。番組では、80年代にリリースされたアナログ盤の作品や、現在はレコード盤でしか聞くことができないというレア音源も登場。レーザーターンテーブルで実際に再生し、“マスターテープに近い形で真空パックされた当時の音を解凍する実験”が行なわれた。

角松さんが語るアナログの魅力。レーザーターンテーブルでレア盤を再生

 角松さんがレーザーターンテーブルと出会ったのは、あるレコードの存在がきっかけ。その作品とは、サンタナ(Santana)のパーカッショ二ストとしても知られるホセ・チェピート・アリアスが1974年に録音したソロアルバムのLP盤。CD化されておらず、角松さんは海外から取り寄せたとのことだが、それを何らかの形でアーカイブ化してくれる会社がないかと探していた中で見つけたのが、ELPのレーザーターンテーブルだった。同社は、角松さんが求めていたアーカイブ化を行なう会社でなかったが、製品について調べていくうち、実は角松さんが80年代からずっと求めていた製品そのものであると分かったとのこと。

角松敏生さんが手にしているのが、ホセ・チェピート・アリアスが1974年に録音したソロアルバムのLP盤。手前に置かれているのが、ELPのレーザーターンテーブル

 レーザーターンテーブルは、針でレコードの溝を読み取る一般的なターンテーブルとは異なり、レーザー(光)により非接触で読み取るため、レコードに傷を付けず、録音時の音を忠実に再現できる点が大きな特徴。既に針で傷んでしまった多くのレコードも読み取れるほか、演奏中の衝撃による音飛びや、ハウリングといった問題もほとんど発生しないとのこと。出力まで一切デジタル変換せず、レコードの良さをアナログのままで忠実に再現するという。

 ちなみに、近年のレコード市場の盛り上がりを受けて、8月にオープンしたアナログレコードとCDの中古専門店「HMV record shop渋谷」でも試聴機として導入されている。レコードを傷めないことから試聴機としても適しているという。

 TOKYO FMの収録スタジオには、ELPの企画営業部長・竹内孝幸さんがゲストとして登場。1カ月に15台ほどしか作ることができず、1台の価格は100万円を超えるというレーザーターンテーブルの“マスターモデル”である「LT-Master」を実際に持ち込み、角松さんもようやく実物とご対面。ブース内で、様々な名盤の試聴を行なった。角松さんの作品を含むアナログ盤を数多く所有するという竹内さんは、レーザーターンテーブルの仕組みや特徴などを説明した後、角松敏生さんの1981年のデビュー曲「YOKOHAMA Twilignt Time」を取り出し、さっそくレーザーターンテーブルでの試聴へ。音の違いを確認するため、同曲のCD音源と比較した。

「LT-Master」本体。一度読み込むことで、頭出しなどもできるほか、BPMを変えるといった様々な機能を備える
背面

 CDと、レーザーターンテーブルでのアナログ盤との音質の違いは明らかで、ブース外のモニタースピーカーで聴くと、アナログ盤では豊かに感じられるダイナミックレンジが、CDでは大きく損なわれて平坦な印象を受けてしまうほど。ハイレゾと圧縮音源を比較した時のようなはっきり違いが表れていた。ブース内でモニターヘッドフォンから聴いた角松さんも「スタジオで生まれ落ちたときの音がする」と表現。

 続いて、竹内さんが今回のために用意した、The Beatlesのアナログ盤も再生。1963年の「Twist & Shout」を聴くと、角松さんは「リンゴ(・スター)のキックの音が、すぐそこで叩いている感じがする」と話して竹内さんも笑顔でうなずいた。このほかにも、角松さんの“幻のアナログ音源”である、1983年リリースの「Do You Wanna Dance」の12インチシングル盤から、「Fly-By-Day」を再生。この曲にまつわる角松さんの様々なエピソードが語られるとともに、熱烈な角松ファンである竹内さんのレコードへのこだわりも随所に飛び出し、2人のトークはさらに熱を増していく。

角松さんとアナログへの深いこだわりを語り合った、エルプの竹内孝幸さん(右)

50年先の人も楽しめる“アナログアーカイブ化”を

 様々な名盤を楽しむ流れから、角松さんと竹内さんのマニアックな音楽トークは、音楽産業の未来にまで発展。最近は世界的なアナログレコード復権の流れを受けて、国内でも若いアーティストを含めたアナログ盤リリースが盛り上がりを見せ始めている。しかし、国内外の数多くのアナログ盤を所有する竹内さんによれば、制作環境が良いレコードも悪いレコードも、そのままの音を忠実に再現するというレーザーターンテーブルで再生すると、日本の市場のレコードの9割以上が「アナログなのに“らしさ”が出ていないと感じる」とのこと。角松さんは、アナログ制作で“職人技”が求められるカッティング技術を持つ人が減っているという現状を憂慮し、「作る側ももっと考えていかなければ」と語った。

 最近はスピーカーやアンプといったオーディオを聴く環境を家にそろえる人が減っているということから、「ファンから“いいヘッドフォンを買いました”と聞くと、まだましなのかなと思う」と話す角松さん。それでも「音に向かい合うこと」の大切さを改めて見つめるという想いから、20分にも及ぶ“組曲的”作品もリリース(アルバム「THE MOMENT」に収録)。「向かい合わざるを得ない作品を作った(笑)」とのこと。

 今回の収録に際し、竹内さんは自身のコレクションから、角松さんの数々のアナログ盤を用意。ブースの周りを取り囲むように並べられ、これには角松さんも圧倒された様子。竹内さんは角松さんの“解凍”(角松さんは1993年に、歌手としての活動を“凍結”。約5年を経て活動を再開している)後の作品をアーカイブとしてアナログレコード化して欲しいと熱望。今回試聴したBeatlesのアナログ盤も50年以上前の作品だが、「100年前の、この世にいない人の声も生々しく聴ける。今はデジタルでしか残っていない作品を、ぜひアナログでアーカイブして、50年先の子供たちにも聴けるようにしてもらいたい」と竹内さんが想いを語る。

 角松さんは「僕らも今マスターとして、全部HDDに保存していますが、HDDも壊れますからね。それを考えると、アナログアーカイブとして持っておくというのは、逆転の発想として面白いかもしれないですね」と深くうなずいた。

 ここまでお伝えした内容は、番組のほんの一部。今回の特集では、このほかにもレーザーターンテーブルの魅力や、再生される様々な名盤、角松さんが係わってきた多くのアーティストやエンジニアとの制作エピソード、竹内さんとのディープな音楽談義が展開。そしていよいよ、角松さんとレーザーターンテーブルが出会ったきっかけとなったホセ・チェピート・アリアスのLP盤もスタジオで再生される。その模様は、12月13日から3週に渡ってオンエアされる実際の番組で楽しんでいただきたい。

収録スタジオには、角松さんや竹内さんの用意した数々の名盤がずらりと並べられていた

(中林暁)