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'16年に8K試験放送、番組作りの課題と可能性。Channel 4K今の加入数は“数千”

 次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は、4K/8K映像のコンテンツ制作技術者向けのイベント「4K・8Kコンテンツ制作者ミーティング」を3月5日に開催。'15年度の「4K8K検証用コンテンツ」を制作したテレビ局や放送事業者らが、使用機材やワークフローを説明するとともに、制作を通じて明らかになった課題などについて説明。そこで得られたノウハウなどを共有する場となっており、今回は'13年12月に続き、第2回目となる。制作された番組は、NexTV-Fが現在行なっている実用化試験放送「Channel 4K」で順次オンエアされる予定。

4K・8Kコンテンツ制作者ミーティング

 '15年度の「4K8K検証用コンテンツ」制作には、NHKや地上波/衛星放送の民放各社、CATV事業者、コンテンツ制作会社らが参加。制作における課題や可能性を共有し、制作クオリティの向上と継続的なコンテンツの発信を図ることを目的としている。前回との違いとして、8K番組制作にはNHK以外の放送事業者も参加。'16年夏に控えている8K試験放送開始に向け、8K映像の持つ新たな可能性や、制作時の課題なども少しずつ明確化してきた。

 今回は、実際に4K/8Kコンテンツ制作に関わったテレビ局のディレクターや技術担当者、カメラマンらが登壇。「紀行/自然/教養/ドキュメンタリー」、「趣味/スポーツ/バラエティ/音楽/ドラマ」、「8K」の3部門に分かれて、実際の作業フローや、制作で苦労した点などを説明した。なお、同日に行なわれた8K映像制作設備の見学会については、別記事で掲載している。

映像の投写はソニーの4Kプロジェクタを使用。会場の都合で8K機材は搬入できなかった

4K空撮や2mmの生物クローズアップ撮影など新たなチャレンジ

 紀行/自然/教養/ドキュメンタリーの分野では、全国地域映像団体協議会(全映協)と、日本ケーブルテレビ連盟 コンテンツ・ラボ、日経映像、電通の各社・団体が登壇した。

 北海道や東北、中部、関西、九州といった全国各地の映像事業関連の10団体が加盟する全映協は、220社ある全国の加入社から企画を公募して4K番組を制作した。そのうちの1つ「写真家がミタ! 隠れたビューポイント」は、空撮や風景、鉄道、星座のジャンルで著名なプロカメラマン4人が、「日本の新たな魅力発見に挑む」という60分番組となっている。

 空撮専門カメラマンで、マルチコプター製品の制作にも携わっているという野口克也氏が、パナソニックのデジタル一眼カメラ「DMC-GH4」に3軸ブラシレスジンバルを使って撮影。都内のヘリポートから、昼と夜の風景をとらえている。また、星空写真家の三浦直氏は、ふたご座流星群を4K/60pでタイムラプス撮影。4Kで撮影すると、見える星の数が全く違うといった点などを紹介した。

全映協「写真家がミタ! 隠れたビューポイント」

 ケーブルテレビ連盟は、全国のCATV事業者が共同で取り組んでいる「けーぶるにっぽん」というシリーズで、合計10本の4K番組を制作。このシリーズは、地域密着メディアのCATVが、それぞれの地元ならではの視点で作った番組を、全国や海外に向けて放送することを目的として始まったもので、新たに4K制作にもチャレンジ。ただ、制作した10社のうち4Kカメラを持っていたのは1社のみだったため、連盟がXDCAMの「PXW-Z100」を購入し、制作局に貸し出した。今回を機に6社が4Kカメラを購入するなど、対応機器を揃えようとする機運も高まってきたという。

ケーブルテレビ連盟の「けーぶるにっぽん」

 日経映像は、テレビ東京/BSジャパン「追え! 光のメッセージ」を制作。“光を放つ生物”をテーマに、ホタルやキノコなどの生物が光るメカニズムの研究や、遺伝子組み換え技術でカイコが“光るマユ”を作るまでの過程に完全密着するという内容。最小で2mmという小さな生物のクローズアップ撮影で、使用できるマクロレンズが無かったため、スチルカメラと同じ要領でリバースして装着して撮ったというエピソードや、真っ暗闇での撮影ではF55で感度をISO 10000まで上げてノイズがどこまでのるかを試行錯誤したことなどを説明した。

テレビ東京/BSジャパン「追え! 光のメッセージ」

 一方、放送局以外の参加社である電通は、「コンクリート」をテーマに、普段見慣れたものをあえて4Kで見つめ直すというコンセプトでチャレンジ。カメラはGH4のみでレンズもほぼ1本という環境で撮影していく中、撮影者が意図しないものが映っているという発見があったことなどを紹介した。

電通「コンクリート時代」

錦織4K/HD同時生中継。ドラマには“映りすぎる”苦労

 趣味/スポーツ/バラエティ/音楽/ドラマの部門では、釣りビジョン、スカパー・ブロードキャスティング、WOWOW、J SPORTS、日本テレビの各社が4K映像を制作。

 釣りビジョンは、氏江大祐氏がカメラマンの立場から製作過程や課題を説明した。制作した「ニッポン釣り四景(4K)」では、F55やCN7で予測不能な魚の動きを追うことにチャレンジ。ハンディ撮影時はISO 1250〜1600程度として、F値を稼ぐことを優先。パンフォーカスに近い画角で撮影したという。魚が逃げないためにモニターなども持ち込めないため、「ビューファインダの目視だけによるフォーカス/露出に限界を感じた。撮影者の立場として、納得がいくレベルに達していないのが現状」と述べ、機材メーカーに対して、より取り回しの良いモニターの登場への期待を示した。

釣りビジョン「ニッポン釣り四景(4K)」

 スカパー・ブロードキャスティングは、昨年11月に行なわれたJリーグの横浜F・マリノス×浦和レッズにおいて4K中継を実施。カメラ9台で、うち4Kハイスピードカメラ1台を使用したことなどを説明した。4Kスロー映像の活用で、従来は分かりにくかった選手同士の接触などもはっきり見えることなどを利点としてアピールしたほか、4K中継可能なスタジアムが、'14年は5会場のみだったのに対し、'15年からは札幌ドームや鳥栖スタジアムなど含め、一挙に30会場まで増えたことも紹介した。

スカパー・ブロードキャスティングによる横浜F・マリノス×浦和レッズの4K中継

 WOWOWは、'14年11月の錦織圭選手とアンドレ・アガシ選手による夢の対戦を、4KとHDのサイマルで生中継。一旦4Kで作ってからHDにダウンコンバートし、両方を放送するという手法を取った。朋栄の4K切り出しシステム「ZE-ONE」などを活用。HD用の映像を生成すると、通常のモニタリング用ダウンコンバータではエッジが立ちすぎてジャギーやモアレが出たため、フィルタリング処理でカバーしたといったエピソードを紹介した。

WOWOWによる、錦織圭×アンドレ・アガシ戦の生中継
HDダウンコンバート映像。左はコートのラインやアガシ選手の服にジャギー/モアレが目立つが、右のフィルタリング後は抑えられている

 J SPORTSは、自転車競技の「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」の4K制作を説明。カメラはF55×7台を使用し、観客目線に設置したカメラでワイドな画面構成を採用。全長3km以上のコースへのカメラ設置、長尺ケーブル敷設といった、4Kライブ制作の課題も克服したという。また、HDレンズは使わずに全てシネマレンズで撮り、カメラごとの画質差を無くすことにも取り組んだ。

J SPORTS「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」

 対象作品の中で唯一のドラマを制作したのは日本テレビ。三浦春馬主演で、32年前の火曜サスペンス劇場作品「受験地獄」をリメイクした「殺人偏差値70」において、4K撮影を敢行した。F55とシネマレンズを使い、大画面を意識した構図やカット割りなども導入。過去の4Kドラマ制作でも挙げられた、“意図しないものまで映りすぎる”という点に触れ、「(主人公の父を演じた)高橋克実さんの“頭のうぶ毛”が美しすぎて、4K侮るまじと思った。同時に、(4Kではシワが気になってしまうような)大女優さんがいなかったのがセーフだった(笑)」との本音も漏らした。また、“機材待ち”で編集作業が遅れるという、担当者にとって初の体験もあったという。

日本テレビ「殺人偏差値70」
メイキング映像も。新たな試みとしてプロジェクションマッピングも活用した

GoPro活用の空撮や、クラシック、カブトムシなど様々な8K番組登場

 8K番組を制作したのは、NHK広島放送局、J SPORTS、WOWOW、東北新社、スカパーJSAT。

 NHK広島放送局は、70年前の原子爆弾投下後に見つかった“被爆遺品”の数々を、8Kで記録した番組「ヒロシマ 被爆遺品が語る」を制作。資料館では普段近づいて見られない遺品を、様々な角度で撮影。熱線で焼かれたアルミ製の弁当箱に彫られていた使用者の名前や、溶けてしまった中の料理の質感など、これまでは気づかれにくかった部分まで映像で克明にとらえることで、リアリティを追求している。

NHK広島「ヒロシマ 被爆遺品が語る」

 J SPORTSは、プロペラ飛行機による“エアロバティック”を撮影した「SKY」を紹介。日本人パイロット室谷義秀氏と、エアロバティック専用に作られた機体「EXTRA300S」による、時速400kmのスピードとダイナミックで華麗な技を撮影。周りの雲や地上の風景などと合わさった美しさを表現している。空撮にはF65を使ったほか、GoPro HERO4を機体に3台取り付け、4つの4K映像の合成による4分割の8Kリアル解像度の映像にもチャレンジ。合成には、NexTV-Fの機材は対応していなかったため、Mac ProとFinalCut Pro Xを使用し、10秒のカットを作るためにTIFF静止画60コマ×10の合計600枚を用意。このTIFFをNHKの編集機に持ち込み、連番で読み込んで動画化した。「単体の8K編集機では合成処理はできないが、手間さえ掛ければ、FinalCutで合成作業もできることが分かった」としている。地上撮影には8K 4板方式カメラのSHV-8000(池上通信機)を使用した。

J SPORTS「SKY」

 WOWOWが8Kでとらえたのは、カブトムシやカタツムリなど「小動物の世界」。2月に群馬県・ぐんま昆虫の森で、F65 RSを使用。モニターはPVM-2541などを使用。「カブトムシの触角の先にある毛など、見たことのない世界が8Kで初めて見えた」という。

WOWOW「小動物の世界」

 東北新社は、'14年12月にサントリーホールで行なわれた「炎の第九〜小林研一郎と日本フィル」を8K収録。センターからのフィックスで“観客席のような没入感”を追求したという。ただ、ゲネプロ時に2階客席最後列から撮影したものの、F65のメカニカルノイズと冷却ファン音が大きかったため、急きょガラス越しのブースから撮影することを決定。「今後も没入できる“一枚の絵”という作りを目指す」としている。

東北新社「炎の第九〜小林研一郎と日本フィル」

 スカパーJSATは、JリーグのJ1第34節 FC東京×横浜F・マリノス戦を8Kカメラでテスト収録。味の素スタジアム内の屋上カメラスペースに1台を設置したほか、アストロデザインの35mmフルサイズセンサー搭載カメラヘッド「AH-4800」による8K収録と4Kダウンコンバート同時収録を行なった。今回はMac Proでの大まかな編集を行なった後で仕上げたが、8K編集作業については、例えば30秒ほどの映像を作るのにインジェスト(取り込み)だけで数時間〜半日かかるという現状も明かした。

 一方で、8K収録により“スポーツの臨場感や緊張感”に大きな違いがあったとのことで、現在のフルHDでも単板式と3板式で変わるように、グリーンの表現などでも8Kカメラに大きなメリットがあるとした。4K制作の番組でも一旦8Kで撮って4Kダウンコンバートすることで効果があるとのことで、「8Kでは選手とピッチの際(境目)がはっきり見えるだけでなく、陰影ができて選手がちゃんと“立って”見える。4Kでも解像感はあるが、そこまでの立体感は無い。もっといい表現をするという意味で、8K機材を利用することにも可能性はある」とした。

スカパーJSATによる、FC東京×横浜F・マリノス戦の中継

現状のChannel 4K契約数は“数千”、ポスプロからの要望も

 最後に、来場者からの質問も受け付けた。この中で、4K試験放送の「Channel 4K」の現在の会員数についての質問が出ると、NexTV-Fは「件数は“万”のオーダーには達していない。“数千件”という状態」とした。加えて、「3月のスカパー4K開始などにより、登録数が伸びているという状況にある」との見方を示した。

 また、“ポスプロからの要望”として、Channel 4Kの現在の「搬入基準書」に対する意見も出た。現在、制作した番組はXAVCでの納入となっているが、Premiere Pro CC 8.0においてこれまでXAVCの扱いで問題が発生し、その後8.2にアップデートされたが、未だNexTV-Fの搬入基準書には8.2が含まれていない点を指摘。これに対しては、3月にChannel 4K送出サーバーのバージョンアップを予定しているとのことで、それが正式に決まる3月中旬をめどに基準書を改定するために調整中だという。

(中林暁)