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8K番組制作に必要な機材とは? NexTV-Fが運用中の最新設備を見学

 次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は、最新の8K制作設備を、会員各社や報道関係者に説明する見学会を、3月5日に東京・渋谷のNHKメディアテクノロジーで行なった。

編集室の機材

 この見学会は、放送/通信事業者や、機器メーカーなどで構成されるNexTV-Fの会員各社においても、まだ8K対応機材を目にする機会が少ないことや、実際に8K映像をまだ観たことがない人もいるといったことを理由に企画。今後の制作への意欲を高めることなどを目的としている。同日に行なわれたコンテンツ制作/技術者向けのイベント「4K・8Kコンテンツ制作者・技術者ミーティング」の第2回に合わせて行なわれたもので、このミーティングについては、別記事で改めてレポートする。

東京・渋谷のNHKメディアテクノロジーにNexTV-Fの8K機材がある

 8K撮影から記録の流れを大まかに説明すると、カメラヘッドの「SHV-8000」から、2芯カメラケーブル(Lemo)でCCU「SHV-8000」に入力し、BNC×16で接続したカメラ画像処理装置「VP-8404」を介して4Kモニタ「PVM-X300」にダウンコンバートして表示しながら色味などを調整。P2レコーダの「AJ-ZS0300」を使用し、P2カード17枚(うち1枚は管理データや2Kプロキシに使用)を使って、P2カード1枚につき、100Mbpsで転送/記録。全カードを合わせて8K映像を1時間程度保存できる。なお、カメラのレンズは、8K標準レンズとして、キヤノン「10X 18BN KASD」や、8Kワイドレンズのフジノン「HP5X12-M」、F65用ズームレンズとしてフジノン「HK5.3X75-M」などを用意している。

8Kカメラ「SHV-8000」
CCU「SHV-8000」(下)とカメラ画像処理装置「VP-8404」(上)
4Kモニタの「PVM-X300」
モニタを見ながら、コントローラで色味などを調整
P2カード(右)とLTOディスク(左)

 撮影後の素材のバックアップとしては、P2カードから、LTO 5に保存。LTO取り込みは、実時間の5倍で、ベリファイを行なうと7.5倍にも達するという。

 次のオフライン編集では、P2カードに収録されたHDのプロキシ映像(AVC-Intra100)を活用。オフライン編集機の「プラナス」は、スロット付きのため、ファイルの出力が容易に行なえ、ネイティブ編集が可能。オフライン編集後は、編集データのEDLファイルを書き出し、オンライン編集機器へと渡す。

 オンライン編集では、オフライン編集データのEDLを元に必要な素材をP2カードからリアルタイムキャプチャ。撮影時に自動生成されていたHDプロキシ映像で編集作業を行なう。その後、テロップなどの静止画や、音声ファイル(WAV)の取り込みも実施する。なお、SHV編集機の収録容量は10時間。静止画合成は実時間の4倍かかるという。

 カラーグレーディングは、いったんSSDレコーダに対象カットを送り、そこで行なう。カラーグレーディング装置において、リアルタイム補正、色収差/輪郭補正、センサー傷やレンズ歪みなどを修正し、処理後の映像が自動で差し替わる。その後、SHV編集機からリアルタイムで再生して、P2カードへ完成映像を収録する。なお、編集卓からチェックできるように、編集室には、シャープ製の85型8Kディスプレイも設置されている。

8K編集のワークフロー
編集室の機材
P2レコーダの「AJ-ZS0300」
85型8Kディスプレイ
編集卓からも映像をチェックできる
字幕の編集画面

WOWOWやスカパー、J SPORTSなどが8K制作を実施

 現状の4K放送について改めて説明すると、'14年6月に実用化試験放送の「Channel 4K」がスタートした後、'15年3月より初の商用放送となる「スカパー! 4K」が始まった。その次の段階として、'14年8月の「4K/8Kロードマップに関するフォローアップ会合」で制定されたロードマップによれば、2015年は3月に124/128度CSにおいて4K実用放送を開始し、CATVとIPTV(RF/IP)でも4K実用放送を開始。2016年にはBS(衛星セーフティネット終了後の空き周波数帯域)において、4K試験放送(最大3チャンネル)と8K試験放送(1チャンネル)を開始するとしている。さらに、'16年にはCATVやIPTVでも8Kに向けた実験的取り組みをスタート。2018年にはBSなどにおいて4K/8Kの実用試験放送を開始することが見込まれている。

 NexTV-Fでは、会員各社が8K映像制作も今後行なえるようにするため、8K対応のカメラヘッドやCCU、4Kモニタ、サーバーなどを用意しており、申し込んで審査等を経て、有償で貸し出しを行なっている。これまで、NHK、東北新社、J SPORTS、スカパーJSATの5社がこの施設を使って編集などの作業を行なっている。8K編集が行なえる今の環境が整ったのは、'14年に入ってからだという。

 4Kの先に見据えられている8K制作には、時間やコストがかかるという実態がある一方で、制作、編集機材の進歩が急速に進んでいることで効率がアップ。よりHDに近づいているといった点なども、今回の見学会などを通じてアピールしている。

編集室の奥にある部屋に、サーバーや、SSDレコーダなどを設置。WOWOWやスカパーなどが編集したコンテンツもここにある

(中林暁)