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8K相当の超4Kテレビ「AQUOS 4K NEXT」。80型で168万円
4Kの次へ。AQUOS史上最高テレビでシャープの復活を
(2015/5/21 13:30)
シャープは21日、“8K相当”の解像度を持つ4K液晶テレビ「AQUOS 4K NEXT」を発表した。80型の「LC-80XU30」の1モデル展開で、7月10日に発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は168万円前後。月産台数は200台。
4K+4原色+分割駆動エンジンで“8K相当”を実現
80型/3,840×2,160ドットの4K液晶パネルを搭載し、独自の4原色技術と超解像分割駆動エンジンの採用により、8K相当の解像度を実現する。動作原理は、同社のAQUOS XL20シリーズなど“4K相当”の2Kテレビで使われている「クアトロンプロ」と同様で、4原色の画素構成により垂直方向に明暗を感じる輝度ピークを2つつくるほか、1画素内を分割駆動することで2つの輝度ピークを作り水平方向の解像度を倍にする。水平/垂直の解像度がそれぞれ2倍相当に拡張されるため、4Kパネルで8K(7,680×4,320ドット)相当の表示が行なえる。
液晶パネルは独自のUV2A技術で、高コントラスト化。画素はRGB+イエロー(Ye)の4原色となり、パネル表面処理は低反射N-Blackを採用。映り込みを抑え、黒の沈み込みを高めている。
バックライトは直下型LEDで、ローカルディミング(LED部分駆動)を行なうことで、今まで表現できなかった光源の輝きや金属の光沢感などを再現。さらに、ダイナミックレンジ拡張技術「メガコントラスト」に対応。光源や反射する“輝き”部分を映像信号から解析し、エリアにあるLEDバックライトの輝度を周囲のエリア以上に高めたり、映像補正を行なうことで立体感や映像表現力を高めている。LEDのエリア分割数は非公開。
8K映像処理のために新映像エンジン「X8(クロスエイト)-Master Engine PRO」を開発。「超解像・8Kアップコンバート」回路により、2K/4K映像から8K映像情報に高めて表示する。映像の輝度と色情報を高め、その情報を元に4原色技術を用いた4Kパネルに再構成し、滑らかな表示が行なえるという。なお、X8-Master Engine PROは「独自設計で開発した」とのこと。
8Kアップコンバートにより、特に斜め線がより細く描けるようになるため、ディテール感の向上や字幕周囲のジャギーをスムーズにでき、映像全体の精細感を高めることができるとする。
ノイズ低減とともに、映像に応じてコントラストや色を自動補正する「4Kアクティブコンディショナー」も搭載。映像のオリジナルフレームと前後フレームを参照して解析し、ノイズの少ない高精細映像を実現。バックライトスキャンニングにより、4K倍速技術でクリアな動画性能を実現する。
4原色技術を活かすために、色域を拡張し、DCI色域以上の色再現範囲を実現するという「高演色リッチカラーテクノロジー」も採用。自然界に存在する物体色(SOCS)の再現を目指したもので、4原色技術によりイエローの表現力を向上。
さらに、新開発の緑色、赤色蛍光体によりシアンやレッドの表現力を向上。独自の配合技術による最適化により高色再現型LEDを実現し、業界最高レベルの広色再現性を実現したという。広色域規格のBT.2020映像信号にも対応する。
米THXによるTHX 4Kディスプレイ規格の認証も取得している。なお、4K映像配信や、次世代4K BD「Ultra HD Blu-ray」での採用が予定されるHDR(ハイダイナミックレンジ)については、「表現能力としては充分HDRに対応できるはずだが、まだ規格が確定していない。適宜検討しながら、規格が決まった時点で本製品での対応を検証していく」(デジタル情報家電事業本部 次世代AVシステム開発センター 加藤直樹所長)と説明。具体的にはUltra HD Blu-rayと、UHD AlianceのHDR規格について検証を進める方針という。
音質も強化。4K映像配信対応
音質も強化し、3ウェイ6スピーカーによる総合65W構成(10W×4ch+25W)とした。ツィータ×2、ミッドレンジ×2に加え、低振動ウーファ「DuoBass」を搭載し、幅広い音域をカバーする。ウーファには、スピーカーの振幅限界や耐熱限界などをあらかじめ解析し、最大入力レベルでの駆動を可能にする「インテリジェントドライブ」音声回路も備えている。
音声LSI「新・AudioEngine」を搭載し、反響する仮想音を組み合わせる倍音合成技術により、高・低音域の拡張と音の周波数や位相の乱れを補正。自然で聞き取りやすい音質を実現するという。
IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANやEthernetも装備。HEVCデコーダを内蔵し、ひかりTV 4Kや今秋サービス開始予定のNetflixなど、4K映像配信サービスにも対応。Netflixには秋のソフトウェア・アップデートで対応予定としている。
チューナは地上/BS/110度CSデジタル×3で、2番組同時録画にも対応。ただし、4K放送チューナは内蔵しない。HDMI入力は4系統装備し、4K/60pやHDCP 2.2に対応。同社のAQUOS 4Kレコーダ「TU-UD1000」と接続して、4K放送を視聴できる。
4Kチューナの対応については、「テレビの内蔵には開発工数もコストもかかるが、現在の4K放送(124/128度CS)ではそこまで数が増えていない」(次世代AVシステム開発センターの加藤直樹所長)としており、TU-UD1000などの外部チューナとの連携を想定している。
番組表は4K解像度の「4Kクリア番組表」で、4Kウェブブラウザも搭載。なお、OSはAndroid TVではなく従来のAQUOSと同様にLinuxベース。テレビ向けのインターネットサービス「AQUOS City」からVODサービスなどを利用できる。
シャープは米国モデルなどで、Android TV対応を発表しているが、国内では未導入となっている。その理由については、「アメリカは映像配信/VODが進んでおり、サービス自体もAndroid対応が進んでいるため、そこは先に対応した。中国も含め海外は、サービスなどの関係からAndroidを先行している。日本でも開発自体は進めているが、チューナの対応など独自に行なう部分もあるため、そういったものを見極めていく段階」(次世代AVシステム開発センター 加藤所長)としている。
ホームネットワーク機能(プレイヤー・サーバー・レンダラー)も搭載し、レコーダの録画番組の再生や、本体で録画した番組の他のDLNA/DTCP-IPクライアントへの配信が可能。スマートフォンで、リモコン操作や番組検索が行なえる「AQUOSコネクト」にも対応している。
Bluetoothを内蔵し、Bluetoothスピーカーとしても利用可能。Miracastにも対応し、スマートフォンの画面をワイヤレスでAQUOSに出画できる。
入力端子はHDMI×4、D5×1、コンポジット×1、アナログ音声×1。出力端子は光デジタル×1、ヘッドフォン×1。USBは3系統備えており、8K写真の表示などにも対応する。消費電力や、外形寸法、重量は未定。
AQUOS史上最高のテレビで、シャープ復活へ
シャープ デジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム第一事業部の宗俊昭広事業部長は、AQUOS誕生から15年が経過し、「液晶テレビは2回目の買い替え時期に入った」と説明。近年のテレビの買い替えサイクルが、7~8年になっていることから、「買い替え需要と(オリンピックなどの)ビックイベントがテレビ市場を牽引する」と予測した。
テレビ市場においては、「4K」と50型以上の「大画面」が市場を牽引し、2015年には市場における50型以上の金額構成比が40%を超え、4Kテレビの金額構成比も30%超と予測。実際に4Kテレビについては、直近でも3割超えという状況となるなど、2007年ごろのテレビの30~40型台のテレビ購入者の買い替え需要が、50型超の4Kに向かっていると分析する。
4Kの需要拡大を担うのは、大画面や省エネ、解像度/高画質、ネット動画などのコンテンツ。これらの魅力を訴求し、4Kでは50型クラスに大きなボリュームゾーンができることから、6月30日発売のUS30/U30シリーズと、'14年のフラッグシップUD20シリーズを加えて、50型台で5モデルを展開。「選べるラインナップ」で夏商戦での販売拡大を狙う。
一方、今回発表のLC-80XU30の狙いは、「シャープのブランドイメージをもう一度復活させたい」というもの。「AQUOS 4K NEXTという名称には、4Kの次を目指したいという意味を込めた。8K時代を見据えて技術開発し、その中で生まれた超解像と4原色技術を加えて8K解像度を実現する。AQUOS史上最高のテレビ。『選べるラインナップ』と『AQUOS 4K NEXT』の両面でAQUOSのステージを上げていきたい」と語った。
なお、AQUOS 4K NEXT/XU30シリーズは80型の1モデル展開だが、「技術的には下のサイズまで対応できる。サイズ展開については、今後検討していく」とした。
シャープのテレビ事業は、'14年度の決算赤字の要因の一つ。'15年度は収益重視での事業展開を予定しているが、「AQUOS 4K NEXTは、4K/8K放送といった超高精細映像の時代に向けて開発した。世の中のインフラの整備や状況を見ながら、新しい価値を提案していく。伸びている50型ゾーンに対しては、収益面を考えながら進めていく」と説明した。
LC-80UX30は日本で製造。「日本製、日本の品質とモノづくりで、シャープの最高峰の製品にしたてていく。要素技術のほとんどは矢板工場で開発されており、矢板はマザー工場的な位置づけ。矢板で開発したものを水平展開して、海外工場などに移植していく。矢板無くしてシャープの液晶テレビはない」と矢板工場の重要性を強調した。