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4K/8K放送新ロードマップ。NHK+1者が'16年にBS試験放送

伝送路やCASなどを整備。将来はBS/110度CS左旋を軸に

 総務省は7月23日、「4K/8Kロードマップに関するフォローアップ会合」の第6回を開催し、4K/8K推進に向けた新ロードマップをまとめた。2016年にBSを使った4K/8K試験放送をNHKともう1者の2者で開始することを定め、2018年にはBSと新たな110度CS左旋で4K実用放送を開始する。さらにBS左旋においても、4K/8Kの実用放送を行ない、2025年頃の4K/8K放送の主要伝送路に、BS左旋と110度CS左旋を利用することを定めた。

4K/8K推進のためのロードマップ(2015年7月公表)
【参考】2014年9月時点のロードマップ。'15年7月版では期間延長され、より具体化された

 前回('14年9月)の中間報告では、ロードマップは2020年までとなっていたが、新ロードマップでは期限を2025年まで延長。さらに前回で大きな課題とされていた2018年以降の4K/8K実用放送の伝送路については、新たなBS左旋/CS左旋を使って環境の整備していくことが盛り込まれた。

BS 17chで16年から4K/8K試験放送。将来はBS左旋を軸に

 2016年のBS(既存の右旋)を使った4K/8K試験放送は、衛星セイフティーネット終了後の空き周波数帯域を利用。1トランスポンダ(BS 17ch)において、4K試験放送(最大3ch)と8K試験放送(1ch)を、NHKとNHK以外の基幹放送事業者1者の計2者でスタート。4Kと8Kの時分割放送を予定している。

 2015年秋にはBS 17chでの衛星基幹放送試験局に免許、2016年春には実施主体が決まり、一定の準備期間を経て、BSによる4K/8K放送を開始する。NexTVフォーラムでは、高度広帯域衛星伝送方式(BS/110度CS)による4K/8K放送の技術仕様を検討中で、2015年秋には新CAS対応等の要件を反映し、12月には策定完了予定としている。

4K/8K推進のためのロードマップ(2015年7月公表)。2017年まで
4K/8K推進のためのロードマップ(2015年7月公表)。2018年以降

 BS右旋では、2018年に4K実用化放送を開始(8Kは対象外に)。その際にはBS 17chを含む2トランスポンダへの拡張を予定している。そのために、BS右旋の帯域再編の可能性も考慮し、既存受信機への影響の検討に着手。電子情報技術産業協会(JEITA)の机上調査では、「技術的な問題はないが、帯域再編に伴い録画予約失敗などが生じる場合があり、注意喚起の必要がある」とされている。そのため、「受信環境テストセンター」における実証検査などを進める方針。

BS 17chで4K/8K試験放送を16年から

 BS右旋だけでなく、2017年には110度CS左旋を使った4K試験放送を開始。2018年に4K実用放送に移行し、2020年にはトランスポンダの追加割り当てを予定している。

 新しいBS左旋は、2018年度に4K/8K実用放送を行ない、2020年にはトランスポンダの追加割り当てを予定。2025年ごろには、BS/110度CS左旋を4K/8K放送における中核的な伝送路として利用し、多用な実用放送を実現する。そのために右旋と同程度の左旋受信環境の整備に着手する。

 つまり、既に4K実用化放送を行なわれている124/128度CSに加え、BS右旋で4K/8K試験放送と4K実用放送、110度CS左旋で4K試験/実用放送、BS左旋で4K/8K実用放送が行なわれる。そして、2025年ごろの4K/8K放送の主要伝送路としてBS/110度CS左旋を位置づける。

 2015年度中にケーブルテレビやIPTVでも4K実用放送を開始。さらに、2020年に向けて8Kに向けた実験的取り組みに着手する。

新アンテナが必要など、課題の左旋受信環境整備に着手

 新ロードマップで重点的に説明されているのが「2018年以降の伝送路」。今回左旋における4K/8K放送の実施を制度上で明確に位置づけ、環境整備に着手することが強調された。

 なお、BS/110度CS左旋の電波を家庭等で受信するには、対応テレビ/受信機のほか、新たなアンテナ設備が必要。さらに、建物内配線等の改修が必要になる可能性も高い。中間報告案でも「2018年の実用放送開始時点においては左旋の受信環境に一定の制約がある」と認めている。

 こうした受信環境の整備について、NHKアイテックの調査を元に報告。左旋伝送(〜3.2GHz)の改修方法を検討したところ、集合住宅共聴において、68.5%は世帯立ち入りが不要な小規模な改修で対応できることがわかったという。ただし、改修なし(アンテナ導入のみ)で対応できる共聴設備はゼロだった。個別受信(戸建等)でもアンテナやブースターの交換で多くは対応可能としている。

 技術規格においても、電波産業会(ARIB)で標準規格「STD-B63」として、左旋円偏波対応の宅内配信方式を規格化。CATVのパススルーでの左旋対応などの技術規格の改訂作業も進めている。

 こうした取り組みを進めることで、「2025年頃には、現在の右旋受信環境と同程度の左旋受信環境整備が進むと期待され、BS左旋および110度CS左旋において多用な実用放送の実現を目指すことが適当」としている。

 2K、4K、8Kと様々な種類の放送が混在することになるが、当面は「視聴者のニーズに応じて併存を前提」と位置づけている。ただし、報告案には「2Kからより高精細・高機能な放送サービスへの移行(マイグレーション)について議論をしていくことが必要との考え方もある」とも記載され、技術の進展や諸外国の動向などを踏まえ、放送の将来像を検討していく、としている。

 地上デジタル放送については、「4K/8Kの実現には技術やコストなどの解決すべき課題は多い」とし、伝送実験の検討や研究開発の推進に触れる程度にとどめている。

 消費者にとっては、124/128度CS、BS、110度CS(左旋)、BS(左旋)と多くの伝送路での4K(一部8K)放送が行なわれるため、現行の「4K放送対応テレビ」が、将来スタートする4K/8K放送にそのままでは対応できないという課題もある。そのため、JEITAの「4K・8K関連テレビ受信機のカタログ等表記ガイドライン」も改定予定。例として「今後新たに始まる高度BS・CS(仮称)を楽しむには、今後発売される別売のチューナー内蔵機器が必要です。」といった表示を行なうなど、消費者の誤認/混乱を避ける施策にも取り組むとしている。

CASなど周辺環境も整備。7月中に第二次中間報告

 今回のフォローアップ会合で報告された第二次中間報告案は、若干の改定などを行なった後、7月中に正式版が公表される。

 今後関連会社は、ロードマップに基づいて技術的や制度面の課題を解消しながら、4K/8K放送を推進。関係各社が、放送設備や、コンテンツ制作環境、テレビ、8K対応のHEVCデコーダの開発などを進める。4K/8Kについては、技術規格を同一とし、送受信側でアップコンバート/ダウンコンバートによる柔軟な運用を可能とする。

 新CAS(限定受信システム)についての開発に着手。NHK、スカパーJSAT、スター・チャンネル、WOWOWの4社が新CAS協議会準備会を組織し、4K/8K対応のCAS ICチップの開発に取り組んでいる。

 このCAS ICチップは、現2KCASと4K8KCASの両方に対応し、4K8KCASではスクランブル暗号鍵(Ks)の128bit化に対応するほか、Ksを暗号化して受信機に受け渡すなどセキュリティを強化。2018年秋ごろのICチップ出荷を見込んでいる。なお、ICチップ供給前の4K/8K試験放送においては、ICカードなどでの新CAS対応も予定。4K/8K実用放送でも継続使用できるよう検討しているという。

伝送路明確化は歓迎。HDR対応はどうする? の声も

 会合では放送事業者やメーカーの代表者が意見を表明。基本的にはロードマップの長期化と左旋の位置づけを歓迎するコメントが多かったが、民放のビジネスへの影響や、帯域再編への危惧なども語られた。

 NHKは、「今回の案で4K/8K放送の進んでいく道が明らかになった。左旋の新たな周波数には、国の支援が必要で、左旋普及を先導してほしい。魅力あるコンテンツを放送することはもちろん、オールジャパンで4K/8K放送の普及に取り組むことが必要」とコメント。また、BS右旋の本格放送に向けた周波数帯域再編については、「2K放送の視聴者に迷惑を掛けないことが重要。帯域再編には『受信環境テストセンター』でしっっかり検証し、適切な対応が取られるようお願いしたい」とした。

 日本テレビも、左旋利用の明確化に触れ、「第2次中間報告ではロードマップの精度の面で進んだ。2020年以降の展開がわかりやすくなった。まずは2016年の試験放送への取り組みとなるが、事業性も含め精査していく。4K/8Kの普及に向けて、周知徹底、広報活動がいろいろな局面で進めなければならない。NHKと民放との協調体制をきっちりとって進めていくことも重要。また、民放のビジネスの根幹は地上波。ビジネスの主軸である地上波が、BSのリッチコンテンツに劣後しないよう、考えていかないといけない。残課題の解決にこれからも取り組む」と語った。

 テレビ朝日は、「2025年までのロードマップが示されたのは重要。将来像をより具体的に描いて、一丸となって推進することが利益になる」とコメント。TBSテレビは「4K/8Kの自律的発展のために、事業性を意識する必要がある。また、新CASチップは2018年秋となっているが、こういう部分も考慮して、放送開始時期は検討されるべき」とした。

 テレビ東京も、「民間放送で重要なのはビジネスモデル」とし、受信環境の整備とビジネス計画が立てられる状況の構築のため、受信機メーカーとの協力を呼びかけた。フジテレビは、「映像文化の発展のために歓迎したい」とロードマップを評価するものの、「2K/4K/8Kの放送と、さらに右旋、左旋がある、このマイグレーションが円滑にならないといけない。そこを市場の見えざる手に解決を委ねるというのは難しいのでは」と意見した。

 メーカーも基本的に歓迎のコメントが多かったが、2018年のBS右旋4K本格放送における帯域再編についての危惧の声が複数社から出た。「帯域再編は、大きなインパクトになる。国内は非常に多くの受信機があるので、早いうちに進めないといけない」(東芝)、「JEITAと一緒に机上で検証しているが、実際にはやってみないとわからないこともある。受信環境テストセンターについては、国の支援もお願いしたい」(パナソニック)という。

 また、「放送インフラが非常に高度で、(多重化方式の)MMTや新しいCAS、デコーダはHEVC、新たな変調方式など、新しいものが山ほどある。遅れなく開発するためにも支援をお願いしたい」(パナソニック)という意見も出た。

 NexTV-Fからは、「報告書に書かれなかったこと」について、4K/8K放送の普及推進団体の立場から異論を表明。「2020年あるいは2025年に、何チャンネルの4K放送、8K放送が放送されているのが望ましいのか。あるいは2KのMPEG-2はいつまでやるのか、どういう計画で4K化を促すのか。課題や目標は定義されたが、全体が具体的になっていない。サービスや衛星や放送機器の設備投資、製品開発において、中長期的な電波制作の道筋無しに、サービス事業者/機器ベンダなどが企業として意思決定しなければいけないという状況に懸念がある」とした。

 さらに、高画質化対応についても、「18年のBS 4K実用放送に集中するあまり、ネットメディア等で急速に進んでいる、“より高画質な4K”、色の表現や、ハイダイナミックレンジ(HDR)などを日本でどうするかに踏み込んでいないのは残念。せっかく“4K放送”で世界のトップランナーになっても、IP系事業者やコンテンツ事業者が、HDRや広色域へ急速に舵を切っている中で、4K実用化放送だけに集中し、周回遅れになる、あるいは競技のルールそのものががかわっていた、ということにならないか心配だ。8K他チャンネル化や、より付加価値の高い4Kなど、あまり時間をおかずに、より幅広い視点から検討が行われて欲しい」と意見した。

(臼田勤哉)