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“次世代ナチュラルサウンド”、ヤマハがフロア型最上位スピーカー「NS-5000」開発

 ヤマハは、フロア型スピーカーのハイエンドモデル「NS-5000」を2016年7月下旬に発売する。「次世代ナチュラルサウンド・スピーカー」をコンセプトに開発されており、価格は1台75万円。ペアでの販売となる。スタンドの「SPS-5000」も1台75,000円で同日発売する。

フロア型スピーカーのハイエンドモデル「NS-5000」

 9月25日~27日に、有楽町の東京国際フォーラムで行なわれる「2015東京インターナショナルオーディオショウ」のヤマハブースにて、試聴が可能。詳細はヤマハの特設ページに記載されている。

 ベリリウムに匹敵する音速を持ち、現存する有機繊維の中で世界一の強度と理想的な弾性率を持つという素材「Zylon(ザイロン)」を振動板に採用。3ウェイユニットの全てにZylonを使う事で、全帯域の音色、音速を統一しているのが特徴。

 Zylonは、東洋紡が開発した高い強度と難燃性を備えた繊維。650度までの耐熱性能を備え、引張強度も強いため、消防服や耐熱服、卓球やテニスのラケット、スノーボード、ライダースーツ、レーシングカーなど様々な用途に活用されている。

「NS-5000」。左はネットを装着したところ

 ヤマハでは理想的な音響特性を備えている事に注目。これを編んでスピーカーの振動板とし、NS-5000に採用している。しかし、繊維を編んでいるため、ユニットが動くとカサカサと繊維同士が擦れる音が出る。それを防ぐと同時に、金管楽器の華やかさも表現するため、振動板の表面にイオン化させたモネル合金を真空蒸着させ、薄膜を形成している。

左からツイータ、ミッドレンジ、ウーファ。いずれも同じ素材が使われているのがわかる。なお、編んでいる繊維の細さは、ユニットにあわせて異なる(ウーファよりもツイータの方が細い)

 ユニットサイズはツイータが3cm径のドーム型、ミッドレンジが8cm径、ウーファは30cm径の3ウェイ3スピーカー構成。磁気回路はフェライト。再生周波数帯域は23Hz~40kHzで、クロスオーバー周波数は750Hz、4.5kHz。

あえて四角いエンクロージャを採用

 エンクロージャは箱型。「曲線を多様した筐体など、様々な形状を検討したが、箱から発生する共振に対して、的確な対処をする事で音質を高めるという発想で開発した」(ヤマハミュージックジャパン AV流通営業本部 企画室 広報の安井信二氏)という。

 具体的には、フロントバッフルの裏の隅に2本の隅木を配置。7本の補強桟も配置し、箱から発生する共振ノイズを排除。さらに“J”のような形の新型共鳴管を内部の両サイドに内蔵。筐体内で発生する定在波を吸音する効果がありつつ、吸音材を最小限にして活き活きとした音の出方を維持できるという。

内部がわかるカットモデル
手前にある穴の部分がJの下側の先端(実際には吸音材が開口部に貼られる)
奥に曲がったパイプのようなものが見えるが、それがJの下部
“J”のような形の新型共鳴管

 ユニットの背後には、バックチャンバーを搭載。2本の特殊形状管で構成されており、共鳴を抑制。通常のチャンバーは内部に吸音材を充填するが、このチャンバーには最小限の吸音材しか入っておらず、暗くこもった音になるのを防いでいる。

複雑な形状のチャンバーがユニットの背後に取り付けられており、共鳴を抑えている
ネットワーク

 ネットワークは基板の両面に銅箔パターンを配置し、配線を最短化。銅箔の厚みも通常の4倍として、電流を流れやすくしている。阻止類もムンドルフ製のコンデンサ「MCap SUPREME EVO」、アッテネータ「MResist SUPREME」、単体質量1.6kgに達するウーファ用コイルなどを投入している。

 エンクロージャには北海道産の白樺材積層合板を採用。バッフル面は19層で29.5mm、他5面は13層で20mm。国産にこだわるのは、木材の節や穴などを丁寧に取り除いて加工する、国産材ならではの品質や、耐久性などを重視したためだという。これを、三方留めで固定。接合部の強度をアップさせているほか、ヤマハのグランドピアノと同じピアノ専用塗料と下地材、研磨工程による黒鏡面ピアノフィニッシュも施し、筐体の表面強度を向上させている。

 リアバスレフで、ポートは背面の上方に配置。風切り音を低減させる、ツイステッド・フレア形状のポートを採用している。スピーカーターミナルは真鍮切削タイプ。前述のように、同じ素材で全ユニットを統一し、音色、音速を統一しているため、あえてバイワイヤリングには対応しておらず、シングルワイヤリングとなっている。

 インピーダンスは6Ω。外形寸法は395×381×690mm(幅×奥行き×高さ)、重量は35kg。

保護ネットを取り付けるとレトロな雰囲気に。ただし開口面積が小さいため、再生時には取り外す事を想定している
ターミナルはシングルワイヤ

専用スタンドも発売

スタンドのスパイクは先端が丸くなっており、床が傷つくのを防いでいる

 SPS-5000はアルミ製のスタンドで、脚部の4本はアルミ無垢材。天板やスパイク、スペーサーはスチール製となっている。

 脚部は正面に対して斜め内側を向いた形状で、音の不要な反射を低減。設置したスピーカーの響きを殺し過ぎない工夫も施されている。

 外形寸法は392×374×309mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は8kg。リスナーが椅子に座った際に、耳の高さがNS-5000のツィータ位置と揃うよう、スタンドの高さを一般的な30cm級ブックシェルフスピーカーより高めの309mm(スパイク部除く)に設定している。

試聴してみる

 「NS-5000」の発売日は2016年7月下旬とかなり先だが、今後はインターナショナルオーディオショウをはじめ、様々なイベントで試聴デモを実施。来場者の意見も取り入れながら、発売日に向けて音をブラッシュアップしていくという。

 そのため、現時点では最終の音ではないが、ヤマハの試聴室で音を聴いてみた。

 外観は四角く、レトロな雰囲気。しかし、出てくる音は超現代的な最新サウンドだ。

 低域から高域まで分解能が非常に高く、ヴォーカルの口の中が見えるような細かさ、量感のある低域内部の動きも見やすい。同時に、上から下まで音の繋がりが良く、不自然なピークディップや音色の違いも感じられない。超ワイドレンジであり、フルレンジユニット1基のスピーカーを聴いているような感覚を覚える。

 四角いエンクロージャではあるが、立体感のあるリアルな音場再生も実現している。音像の定位も極めてシャープで、バッフル面の不要な反射なども良く抑えられていると感じる。

 細かな音の反応が良く、トランジェントに優れているので、ハイレゾ楽曲を聴くと静寂状態からスッと音が出て、スッと消える様子がわかりやすい。組み合わせるシステムの違いを、細かく描写してくれるタイプのようだ。

 付帯音は少なく、クリアなサウンドだが、音の質感としては“やや硬め”。これはエージングでも変わってきそうだ。個人的に、低域にもう少し響きが欲しいと感じるが、安井氏によれば、そこはヤマハ側も感じており、既に改良を進めているそうだ。発売までにどのように変化し、完成度が高まっていくかも気になる製品だ。

(山崎健太郎)