ミニレビュー
“声”特化でボーカル曲が心地良いだけじゃない!! final「UX3000 SV」
2025年4月11日 08:00
finalから4月18日に発売されるワイヤレスヘッドフォン「UX3000 SV」。「声」にフォーカスした音質設計という点も気になるところだが、直販価格の15,800円は、前機種「UX3000」から据置きとなっており、最近のワイヤレスヘッドフォンでは比較的手が出しやすい価格帯を維持しているのも魅力的なポイントだ。
今回、そんなUX3000 SVをお借りできたので、そのファーストインプレッションをお届けする。結論から述べると、好きなボーカル曲だけでなくYouTube配信やラジオなどの声も聴きやすい、ASMRの空間表現もしっかりこなせる、人の声を聴くのが好きな人にはバッチリ嵌るヘッドフォンだった。
基本的な情報はニュース記事で取り上げているが、ざっくりまとめると、final独自の音響研究で実現した人の声にフォーカスした音質設計と、final製品ではお馴染みの音質を優先したアクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載しているのが特徴。
電源のON/OFFとANCのON/OFFが分かれているのもポイントで、ANCだけをONにして無音で考え事や作業に没頭することもできる。また、付属の3.5mmステレオミニケーブルで有線ヘッドフォンとしても使うことができ、有線接続時もANCをONにできる。
対応コーデックはSBC、AAC、aptXに加えて、aptX HDにも対応しているので、ワイヤレスのハイレゾ相当での再生にも対応している。前機種は低遅延なaptX LL対応だったが、今回はこちらは非対応。aptX LLは便利ではあるのだが、対応スマホが少ないので、LLよりかは普及していてかつ高音質で聴けるaptX HD対応になったのは嬉しい。
生声っぽいボーカルが心地良い。有線化もしっかり音質有線
早速音を聴いてみる。今回はまずiPhoneでAAC接続で聴いてみる。Amazon Music Unlimitedで音楽を再生してみると、声にフォーカスしているというアピールポイントの通り、ボーカルが鮮明で、口元の動きが見えるような生っぽさが感じられる。
全体的にクリアで鮮明な印象があるのだが、モニターっぽい細かい音まで層が細かく分かれているというよりも、ボーカルと演奏がしっかり別のレイヤーにいて、演奏の音に包まれた真ん中からボーカルが浮き上がってくるような感覚。
HACHIの「まなざし(Acoustic Live)」を再生してみると、音場の広さは頭の周りを球体が囲む程度なのだが、“主役はボーカル”という立ち位置がしっかりとしていて、歌声をじっくり楽しむのにはこれで十分じゃん、と思ってしまう。
しかもPixel 8aでaptX HDで接続してみると、さらにもう一回り空間が広がるのでちょっと狭いかな? という不満も吹き飛ぶ。ボーカルと演奏のバランスはそのままに、ボーカルの鮮明さと音の広がりがより増すので、同じ曲を聴き比べるとグレードが1つ上がったかのような感覚になる。
パワフルな楽曲も、ボーカルが近く感じて面白い。Adoがずっと叫び続けている「唱」は、メガホンを持って真横で歌われているような感覚に陥る。低域は量感はそこそこなのだが、アタックが深く、胸の辺りにずっしり響く感覚が味わえる。
有線で使えるのも音楽鑑賞用として嬉しいポイント。UX3000 SVは有線接続するとヘッドフォン回路側の電源がOFFになるので、有線ヘッドフォンと同じく接続するアンプによって音が変わるようだ。
今回は手持ちのFIIO「Q7」に接続して使ってみたところ、先程挙げたAdo「唱」などで若干感じられる高域の鋭さがなくなり、さらに長時間聴きやすい音になった。クリアでより細かい音まで鮮明に聴き取れるのに、鋭さはなくゆったりと聴き続けられる、低域も心地良いので、ついついそのままじっくり聴き続けてしまう。
ちなみに、ヘッドフォンの電源をOFFにしても、バッテリーが残っている間はANCのみをONにできるので有線接続時にANCが使用できる。逆に手動で電源をOFFにしたときもANCはそのままONになっているので、使わないときは両方手動でOFFにするのが良さそうだ。発売前に試しているため、まだfinalアプリとの連携が試せていないが、おそらく細かい設定ができるようになると思う。
音楽だけじゃない。配信やASMRもばっちりこなせるお手軽ヘッドフォン
声にフォーカスしているとあって、楽しめるのは音楽だけではない。YouTubeの配信やラジオなどでも、人の声が聴き取りやすい。ゲーム配信などでも、ゲームの音よりも配信者の声がよりハッキリ聴き取れるので、筆者のように、配信している人の話を聴きたい人にはオススメだ。
finalで声にフォーカスしているとあって、忘れてはいけないのがASMR。イヤフォンではASMR向けの製品が展開されているが、やはり基本的にイヤフォンよりも空間表現能力の高いヘッドフォンの方がASMRをじっくり聴くのには向いていると思う。
UX3000 SVも頭周辺の定位感がハッキリしていて、コラボでお馴染みの周防パトラさんの安眠ASMR配信を聴いてみると、耳元の物が動いている感覚や、音の強弱が心地良く、ささやき声の生声感が自然と肩の力を抜いてくれる。
とくに安眠系は現実で聴こえる音の感覚とのギャップが少なければ少ないほど効果的だと思っているのだが、筆者がそこで求めるレベルにUX3000 SVの音はしっかり到達してくれている。あまりにも眠れないときに有線ヘッドフォンを使っていたが、ついに無線化できそうだ。
1万円台のワイヤレスヘッドフォンは、専門店に行ってもバリエーション自体が少ないほか、いざ試聴してみると、ちょっと物足りない感じがしたり、若干ヴェールがかかっているような聴き心地だったりと「お手軽なワイヤレスヘッドフォンが欲しいけど、手を出すにはちょっとな」と思うことが多々あったのだが、今回のUX3000 SVは、そこをピンポイントに解決してくれるようなヘッドフォンという印象。
しっかり音はクリアだし、そもそもの密閉型ヘッドフォンの遮音性に加えて、必要十分なANCも搭載していて、有線化もできる。比較的お手軽に買える音楽鑑賞用のワイヤレスヘッドフォンとして、とても満足のいく製品に仕上がっていると思う。