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ひかりTV 4K、月額500円に値下げした新チューナ。HDR含むコンテンツ拡充も加速

 NTTぷららは14日、4K映像配信サービスの「ひかりTV 4K」に関する'16年度上期の事業説明会を開催。この中で、月額料金を500円に値下げした新たな4K対応チューナ(STB)の提供や、4K/HDRなどの配信コンテンツの拡大と、それに向けた他社との取り組みなどを、板東浩二社長が説明した。

 発表会では、スマートフォンやタブレットで視聴できるモバイル向け専門チャンネルのリアルタイム配信を6月1日より開始することも発表した。プロ野球6球団の試合を含むスポーツや、ニュース、「ルミネtheよしもとお笑いライブ」などのエンタメ番組、スター・チャンネルなどを含む約20の専門チャンネルを、放送のようなチャンネル形式でインターネット配信するもので、サービスの内容は別記事でレポートしている。

機能を省いて月額500円の新チューナ。年度末にHDR対応も

 ひかりTVのHDと4Kに対応した新たなチューナ「ST-3400」を6月より提供。レンタル料金を、既存のST-4100の月額900円よりも低料金な月額500円とした。出荷状態では視聴できるのはHD番組のみだが、希望者は4,500円を支払うと後から4K対応にアップグレードできるのが特徴。6月以降は新チューナのST-3400のみの提供となる。

新チューナのST-3400

 トリプルチューナ内蔵で1番組視聴と別売USB HDDへの2番組視聴ができる点は従来のST-4100と同じだが、一部機能を絞ったことで低料金と本体のコンパクト化を実現。具体的には、本体メモリが従来の3GBから2GBにダウンしたほか、Wi-Fiや、アナログ音声出力も省かれている。リモコンは音声マイクとタッチセンサー付きの新リモコンを採用する。

 さらに、'16年末にはHDR画質で配信中の作品にも対応予定で、方式はHDR 10をサポート。なお、従来モデルのST-4100のHDR対応アップグレードは未定。

新チューナのST-3400(左)と、現在のST-4100(右)
Wi-Fiやアナログ音声出力を省いた
新リモコン
ST-3400の主な仕様
チューナ内蔵テレビも機種が増加

ドルビービジョンのHDRも配信。地方局とも連携し4Kコンテンツ拡充

 ひかりTVの4Kへの取り組みは、'14年10月にVODサービスを、'15年11月からはIP放送を開始。4KによるVODと放送の両サービスを楽しめる唯一のサービスとしてアピールしている。1月からは4KのHDRコンテンツも開始した。

 今回の説明会では、課題となっている4Kコンテンツ拡充に向けた取り組みも説明された。HDR作品は現在10作品だが、新たに「アメイジング・スパイダーマン2」や、「チャッピー」、「エリジウム」などの映画を含む12作品を追加。合計で全22作品となる。このうち、フリースタイル・モトクロスの「Red Bull X-Fighters World Tour Stop Abu Dhabi 2015」はHDRのドルビービジョン(Dolby Vision)に対応。LGのドルビービジョン対応テレビ新モデル発売(5月下旬)に合わせて提供される。

HDR作品の拡充。ドルビービジョン作品も

 放送局との連携では、既報の通り「フジテレビONE・TWO・NEXT」と4K共同制作プロジェクトを開始。「フジテレビONE」の人気ゲーム番組ゲームバラエティ番組「ゲームセンターCX」の4K特別番組を共同制作し、6月下旬にひかりTVで配信する。それ以外にも、オリジナルドラマを含めた4K作品を共同で制作する予定。

 また、現在は深夜番組を中心とした番組の4K共同制作を行なっているテレビ東京とは、新たにゴールデンタイムのドラマも4Kで展開。4月放送開始の新ドラマ「ドクター調査班~医療事故の闇を暴け~」(谷原章介主演、全7話)を、ひかりTVでは'16年夏より提供開始する。テレ東25時枠で放送しているドラマ、その「おこだわり」、私にもくれよ!(全11話)は、放送6日前より先行独占提供している。ドラマ24「ナイトヒーローNAOTO」(全11話)は、4月15日の放送直後より順次提供。

フジテレビとの連携
テレビ東京との連携

 地方局とも連携。岩手めんこいテレビと共同制作で、岩手出身のモデル・久慈暁子が初主演の「恋子focus ~ある女子校生の物語」(全12話)を制作。岩手めんこいテレビでは6月に放送開始されるがそれに先駆け、地上波では放送されない未公開シーンを含めて4月2日よりひかりTV 4KのVOD/IP配信を実施する。写真家・青山裕企監督が、多感な高校生の友情、喧嘩、恋愛などを描いた作品。

 このほかにも、「にっぽん4K巡り」という番組で、全国の放送局と連携。1月の北海道と2月の福岡からスタートし、長崎、沖縄、広島などにも拡大していく。

岩手めんこいテレビとドラマを共同制作
「にっぽん4K巡り」で全国の放送局と協力

 舞台作品では、ホリプロと協力。宮本亜門脚本で、鈴木亮平や倉科カナが出演する「ライ王のテラス」を5月から4K VOD/IP配信で提供する。三島由紀夫最後の戯曲とされる伝説の舞台の映像化となる。

舞台作品の4K映像化

 映画は、劇場公開と同時に4K先行独占提供となった作品「リップヴァインクルの花嫁」を3月より提供中。また、'17年春からは、橋本愛や宮崎あおい、ユースケ・サンタマリア、須賀健太出演の「バースデーカード」(劇場公開は'16年10月)を、4K先行独占配信する。

 また、4月21日~24日に開催される「島ぜんぶでおーきな祭 第8回沖縄国際映画祭」へ協賛し、同映画祭に「ひかりTV応援賞」を新設。吉本興業と協力し、受賞した地域とともに、地域活性をテーマにした4K映像によるオリジナルショートムービーを共同制作。その作品は「ひかりTV」で独占配信される。過去に同映画祭の「地域発信型映画」プログラムで上演された10作品の独占配信も実施。無料作品としてHD画質で提供される。

新作映画を4Kでも配信
沖縄国際映画祭へ協賛し、4K先行独占配信作品を共同制作

 現在、4K IP配信している「モデルプレスTV by ひかりTV 4K」のリニューアルも実施。5月からは4時間のワイド番組を4Kで毎日生放送。このワイド番組には、筧美和子などの女性タレントがそれぞれの得意ジャンルを独自目線でナビゲートする番組のほか、インスタグラマーのやすだちひろとmicoの冠番組、企画・撮影・製作まで全て女子大生が行なう番組が含まれている。

 4K作品の拡充計画としては、VODは3月末の734本から、'17年3月末には1,200本へ強化することや、IP配信について現在の「ひかりTVチャンネル4K」(10時~26時)や「モデルプレスTV」(10時~25時)を、4月15日より24時間編成にすることなどを発表した。

4K作品の拡充計画
'16年度の取り組み

ショートフィルムの映画祭と共同で4K制作

 4Kコンテンツの拡充に向けた新たなパートナーシップとして、俳優の別所哲也氏が代表を務めるショートショート フィルムフェスティバル&アジアとの提携も発表。新たに2つの取り組みを開始する。

別所哲也氏(右)が代表を務めるショートショート フィルムフェスティバル&アジアと提携

 1つは「ひかりTVアワード」の新設と、受賞監督との連携。映画祭のコンペティション内に「ひかりTVアワード」を新設し、受賞した作品の監督を起用し、4K映像のショートフィルムを制作。制作にあたり、NTTぷららが4K撮影のノウハウを提供し、ショートショート実行委員会は、ショートフィルム制作のノウハウ提供やキャスティングの協力などを行なう。制作された4Kショートフィルムは、ひかりTVで独占提供する。

 もう1つは、昔話やパブリック・ドメイン化された小説などから二次創作した作品の4K映像化。2014年より、おとぎ話や昔話、民話、小説などをもとに二次創作した短編小説のコンペティション「ブックショートアワード」を展開。映像化を想起できる作品が大賞として選ばれるという。

 これまでの第一回と第二回の大賞作品に選ばれた2つを4K映像作品として制作。第一回の受賞作品「HANA」は、芥川龍之介の「鼻」を、女子高を舞台に大胆に書き換えた斬新な内容の短編小説。6月2日からの映画祭で上映するとともに、同日より「ひかりTV」でも4KやHD画質で配信開始する。'16年度のブックショートアワード作品の映像化は、映画祭の終了後に開始する。

 ショートショート フィルムフェスティバル&アジア代表の別所哲也氏が、14日に行なわれた発表会に来場。この映画祭は'99年から始まり、今年で18回目を迎える。別所氏は「ショートフィルムは、短くても“燃費のいい映画”。映画ファンだけでなく、情報を運ぶツールとしても注目されている。映画はこれまで新しい技術と共に進化してきたが、物語を制作していくうえで、これからテクノロジーがクリエイティビティの裾野をどのように広げていくのか、私たちも模索したい」と述べた。

提携の内容
別所哲也氏

純増の鈍化で、多様化や高度化がカギに

 ひかりTVの会員数は3月末時点で305万(前年度301万)。板東浩二社長は、「IPTVサービスで最大規模」と自信を見せる一方で、「映像を観たいお客様にはずいぶん使っていただいており、純増はスローダウンしている。今後はテレビを観るだけではなく、スマートフォンやタブレットを使った色々なサービス、クラウドゲームや音楽配信、ショッピングなどを含めたサービスの幅を広げ、価値を高めていくのがこれからのビジネス展開の課題」との認識を示す。

ひかりTV会員数の推移

 新規販売チャネルの開拓としては、JCC(ジャパンケーブルキャスト)との連携強化で、CATV事業者とのアライアンスを強化。ひかりTVのコンテンツをCATV向けにカスタマイズして、コミュニティチャンネルも含めた形で配信する枠組みを提供しており、現在愛媛CATVと協業を開始している。映像以外にも、クラウドゲームやショッピングといった他のサービスが利用できる「サービスの多様化」や、4Kなどの「サービス/コンテンツの高度化」、スマホなどを含めた「マルチデバイス」、テレビ向けサービスの「マルチネットワーク」の4つを、ひかりTVの目指す方向性として掲げている。

ひかりTVの目指す方向性
板東浩二社長
左から、別所哲也氏、板東浩二社長、フジテレビ総合開発局 開発担当局長の手塚久氏