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ひかりTV、4K IP放送を12月開始。HDR高画質化も検討
「Netflix参入で市場活性化」、年度内315万会員を目指す
(2015/4/9 19:28)
NTTぷららは9日、スマートテレビサービスの「ひかりTV」に関する2015年度上期の事業説明会を開催。板東浩二社長が、同事業の軸とする4K映像配信に関する新たな展開として、光回線を用いた商用IP放送サービス(4K-IP放送)を12月中に開始すると発表した。また、新技術への対応として、HDR(ハイダイナミックレンジ)映像や、MPEG-4 ALSによる高音質化も検討していることなども明らかにした。
今回の説明会では、国内で初となる地上波連続ドラマなどの4K見逃し配信を4月10日より順次開始することも発表。この4K見逃し配信については、別記事で掲載している。
12月より4K-IP放送開始。VODとIPの両方で4K対応
ひかりTVが12月中に始める4K-IP放送は、'14年6月27日よりNTT東日本/NTT西日本の光回線「フレッツ 光ネクスト」を通じてトライアルしていたもので、安定した映像が放送できると判断したことから、商用サービスとしての提供開始を決定。
ひかりTVでは'14年10月27日より、国内で初めて4K映像による商用VODサービスを開始している。今回の4K-IP放送開始により、4KによるIP放送とVOD配信の両方を提供する唯一のサービスになるとしている。
編成内容などのサービス詳細は明らかにしていないが、複数のチャンネルを用意し、既存の見放題サービス利用者などは、追加料金不要で視聴できるようになる見込み。様々な場所に置かれた固定カメラからの映像をそのまま流す「垂れ流し」についても検討しており、テレビショッピングなどを流し続けることなども含め、「現実的な編成を考える」としている。
利用するには、提供中のひかりTVチューナ「ST-4100」をファームウェアアップデートしてHDMI 2.0/HDCP 2.2対応の4Kテレビに接続するか、今後テレビメーカーから発売されるひかりTVの4K-IP放送対応チューナ内蔵4Kテレビが必要。NTT東西の光回線「フレッツ 光ネクスト」や「フレッツ・光プレミアム」、「Bフレッツ」への接続も必須となる。
映像は3,840×2,160ドットのH.265/HEVCで、フレームレートは60fps。音声はAAC。使用する帯域は約30Mbps。基本的な仕様は、IPTVフォーラムが定める規格に準拠する予定。
ひかりTVの4K-IP放送対応チューナ内蔵テレビは、シャープと東芝が製品化することを決めているほか、パナソニックも対応に向け検討中としている。機種名や製品化の時期などは未定。その他の主要テレビメーカーとも対応を協議中だという。
昨年10月より開始した4K-VOD配信は、当初の124本から、'15年3月末で276本まで倍増。'15年度末までに約700本までVOD作品を拡大する予定。その一環として、新たにテレビ東京やNHKの番組の見逃し配信を実施する。
このほかにも、「ナショナル ジオグラフィック チャンネル」と共同で、'14年にノーベル賞物理学賞を受賞した中村修二氏のドキュメンタリーを4K映像で制作。ひかりTVの4K-VODでは4月30日に配信し、ナショナル ジオグラフィック チャンネルでは5月3日よりHDで放送する。なお、中村氏は板東社長の同級生とのこと。
また、ハリウッド映画やライブショーなどの作品も強化。ブロードウェイミュージカルを映画化した「アニー」を5月より提供(HDは4月より)するほか、ウルトラマンのヒーローショーを4K映像化した「ウルトラヒーローズ THE LIVE アクロバトルクロニクル 4K」を5月に、OSK日本歌劇団による「狸御殿~HARU RANMAN~」を6月に配信する。
他社からの調達だけでなく、4K映像制作の新たな仕組み作りにも着手。クリエイターを対象としたコンテストを定期的に開催。第1回を第2四半期から開始する。さらに、4K映像制作に必要なカメラや編集機材などのメーカーと協力し、クリエイターや企業に機材を提供する制作支援の取り組みも開始。専門学校・HALの学生や、映像制作会社、プロ/アマチュアの個人クリエイターなどに機材を貸出し、制作された映像をコンテストで評価、優秀なクリエイターにはクラウドファンディングの「ひかりTVドリーム」で資金を集め、ひかりTV 4Kで配信するという一連の流れを作ることを目指す。
HDRやMPEG-4 ALS対応で映像/音声を高品質化
板東社長は、サービスの強化に向けた技術的な新しい取り組みについても説明。その中で、今後のトレンドになると見込まれるHDR映像への対応や、MPEG-4 ALS符号化による劣化の少ない音声の提供などを目指す。
HDRは、カメラで撮影した映像から、既存のテレビでは表現し切れなかった明るさと暗さを、より忠実に再現することを目指す技術で、パナソニックが新モデル「VIERA CX800」で対応するほか、映像配信では既にNetflixも対応を発表している。規格としては次世代Blu-rayの「ULTRA HD BLU-RAY」(UHD BLU-RAY)や、ドルビービジョンなど複数の仕様が標準化を進めているため、どの製品や規格に対応した映像品質にするかといった検討を今後進めていく。
音声については、現在のAAC圧縮ではカットされている高域も損なわずに聴けるようにするために、MPEG(Moving Picture Expert Group)の国際標準規格として承認された「MPEG-4 ALS」に対応することを検討。MPEG-4 ALSは、技術的にはマルチチャンネルにも対応可能。
現在のひかりTV 4K-VODや、12月より始まる4K-IP放送の配信ビットレートは最大30Mbps。HDRや、MPEG-4 ALSに対応すると映像データとしては容量が増大するが、ひかりTVとしては30Mbps内で収める予定。現在、HEVCの圧縮効率を高めることなどが、NTTグループの研究所で進められており、こうした研究が進むことで、実際のサービスへの採用も現実的になっていくという。
Netflix参入は「市場活性化を歓迎」。年度内で315万会員を目指す
板東社長は、今後も4K映像を事業の中心に据え、「日本最大のスマートテレビプラットフォーム構築」に向けた取り組みを推進すると説明。会員数の伸びを見ると、100万から200万へは約2年で達成しているが、200万から300万へは約3年を要しており、勢いはスローダウンしている。このため、会員数増加に向けた施策として、NTT光回線を使った“光コラボ”活用のサービス「ぷらら光」とひかりTVの低価格なセットメニューを提供することなどを挙げた。会員数は'15年3月末の301万人から、'16年3月末には315万人まで増加させることを目指す。
'15年秋に日本上陸予定で、各社テレビが対応を開始しているNetflixに対しては、「数千万の会員を持っており、これからコンテンツへ投資するといわれていることから、脅威であるのは間違いない。しかし、Huluの時もそうだったが、これまでと同じやり方が通用するかどうかは、今後を見ていかなければわからない。我々はVODだけでなく、クラウドゲーム、ミュージック(音楽配信)、ブック(電子書籍)、ショッピングを含めた総合サービスを展開しており、映像だけで勝負するつもりはない。(NetflixによってVODの)市場が活性化され、全体のパイが大きくなっていくことは歓迎したい」と述べた。
なお、現在の4K-VOD配信の会員数については明らかにしなかったが、「ピーク時の同時接続数は数百。サービスとしてはこれからのもの。プロモーションをやっていると反応は良い」と前向きな姿勢を示した。