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スカパー、'16年度は3年ぶり加入者純増で最高益。4K/HDRや新CASなど新中期計画

 スカパーJSATは12日、2015年度通期決算説明会を開催。高田真治社長が、'11~'15年の中期経営計画を総括したほか、新たに'20年度に向けた中期経営計画を発表。今後の4K/8KやHDRを含む有料多チャンネル事業や、宇宙事業などの展開について説明した。

スカパーJSATの高田真治社長

加入者数は3期ぶりの純増、過去最高益。'16年度はFTTH/OTTを軸に拡大図る

 前日の11日に発表された'16年3月期('15年4月~'16年12月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.2%減の1,629億500万円、営業利益が同23.3%増の242億1,000万円、純利益は同24.8%増の168億6,700万円。減収とはなったものの、営業利益や経常利益、当期純利益は通期予想を上回り、いずれも過去最高益を達成した。

'16年通期損益概要

 有料多チャンネル事業の新規加入数は44万2,963件で、純増減数は20,631件のプラス。'12年度以来、3期ぶりの純増を達成した。前年度は25万件を超える純減だったが、今年度は大幅な上昇となった。累計加入件数は348万2,326件。

 有料多チャンネル事業は、スカパー! の累計加入件数の増加により業務手数料収入が伸びた一方で、'14年5月のSD画質サービス終了による収入減、スカパー! プレミアムサービスのハイビジョンサービス累計加入件数減少などで、売上は前期比1.3%減の1,204億1,500万円となった。また、BSスカパー! や4K放送のコンテンツ費用は増加したが、番組供給料や広告宣伝費などが減ったことで、営業費用が減少。同セグメントの利益は前期比156.6%増の62億4,100万円となった。

セグメント別連結業績の推移
有料多チャンネル事業
宇宙・衛星事業

 '11年度に公表した中期経営計画では、'15年度の目標値として売上2,000億円以上、営業利益200億円以上、営業利益率10%以上、有料多チャンネル放送加入件数400万件以上を設定していた。売上は前述の通り1,629億円で未達となった一方、営業利益は242億円、営業利益率は14.9%で目標を上回った。ただし、加入件数は放送だけでなく配信(スカパー! オンデマンド)を加えても352万件で未達となった。

'11年発表の中期経営計画のレビューと総括

 '16年度業績予想は、有料多チャンネル事業はFTTH販路拡大によるコスト増などを理由に、売上2,215億円、営業利益225億円の微増収減益を見込む。

 '16年度はインターネット動画配信など他サービスとの顧客獲得競争の激化が見込まれる中で、プラットフォーム全体としてのコンテンツ差別化や、FTTH/OTTサービスの展開拡大により、加入者基盤の維持/拡大を図る。スカパー! 3サービス合計で、新規加入件数は43万件('15年度実績44.3万件)、純増数2万件(同2.1万件)、解約率は16.3%(同16.6%)、累計加入件数は350万2,000件を目指す。

'16年度加入目標

 PC/スマホなどへインターネット配信する同社OTTサービスの「スカパー! オンデマンド」では、サービス内容や機能の向上により、年度末である3月の有料商品契約者数について、'15年度の4.3万件から、'16年度は7.2万件の増加を目標とし、登録者数85万件を目指す('15年度実績は累計登録者数68.7万件)。

 宇宙・衛星事業は、4機の衛星打ち上げを行ない、アジア・オセアニア地域をカバーするJCSAT-14打ち上げを契機に、グローバル・モバイルビジネス領域を中心に海外のサービス事業者との提携拡大などで海外市場へ積極的に取り組む。

'20年に向け、4K/8Kや左旋インフラ拡大などの中期経営計画

 2020年に向けた「中期経営計画2020」も発表。有料多チャンネル事業は、放送事業者と組んでコンテンツの差別化をさらに進めることを第1の重点施策としながらも、加入者の増加をDTH(衛星放送)依存からOTTサービス、FTTH経由の加入獲得などへ重点をシフトしていくことを目指す。

「中期経営計画2020」の骨子
有料多チャンネル事業の重点施策

 具体的なコンテンツとしては、昨年も放送したサッカー南米選手権の「コパ・アメリカ」が、メキシコや米国を加えた拡大版「コパ・アメリカ・センテナリオ」として開催され、スカパーでは専門チャンネルの「コパアメリカチャンネル」を5月29日に開局。また、リオでのパラリンピックにも専門チャンネルを用意する。

 4K放送では、既報の通り5月1日から4K放送の新チャンネル「スカパー! 4K体験」を開局し、スカパー!への登録を必要としない無料放送(ノースクランブル)を展開している。今後は、4K放送に加えて、明るさの表現を大幅に広げるHDR(ハイダイナミックレンジ)にも積極的に取り組み、プレミアムサービスの規模拡大を図る。

コンテンツ/サービスの差別化として、サッカーのコパアメリカチャンネルや、HDR放送などを挙げた
4月より開始したFTTHによる加入者獲得施策を推進

 今後も競争の激化が予想されるインターネット動画配信の分野では、マルチデバイス向けIPリニア配信を強化したOTTプラットフォームの展開を図る。高田社長は「生活のスタイルに合わせた、時間軸で編成するリニアチャンネルの強みを最大限に活かす。今後は、ユーザーインターフェイスが格段に優れた、スマートテレビ向けのサービスを、できるだけ早い時期に提供することでサービスの差別化を図る」とした。

マルチデバイス向けIPリニア配信を強化

 衛星放送は4K/8Kなどの次世代化を進め、今年秋に打ち上げる予定のJCSAT15を使って、2018年度までに110度CS左旋を用いた4K/HDR放送の実現と、有料放送に必要な新CASの導入を計画。また、スカパー東京メディアセンターの大規模な設備改修を、'18~'19年度にかけて行なう。そのほか、海外コンテンツ事業では、現在3カ国で展開しているWAKUWAKU JAPANについて32カ国、4,000万世帯まで拡大し、黒字化を目指す。

総務省の4K/8Kロードマップから、スカパーに関連した部分を抜粋した図
海外事業も拡大

 有料多チャンネル事業、宇宙・衛星事業を合わせたグループ全体の'20年度数値目標としては、連結売上を2,000億円以上、連結営業利益300億円以上、有料多チャンネル加入目標を400万件以上(スカパー! オンデマンドの有料加入者含む)に設定。営業利益300億円の内訳は、有料多チャンネル事業が100億円、宇宙・衛星事業が200億円としている。

2020年度の数値目標
北米上空からインド洋上空まで16機の衛星を保有

(中林暁)