3D普及のための「3DC安全ガイドライン」最新版を策定

-視聴者やメーカー向けの基本ルールを集約


3Dコンソーシアム 千葉滋 安全ガイドライン部会長

4月19日発表


 3Dコンソーシアム(3DC)は、人にやさしい3D普及のための「3DC安全ガイドライン」を20日に全面改訂する。

 このガイドラインは、視聴者、コンテンツ製作者、機器製造業者など、3Dに関わる全ての人に知ってほしい最小限の知識や方針、ルールをまとめたもの。機器メーカーがユーザーに3D視聴に関する注意を促す場合なども、メーカーがこのガイドラインの内容を参考とし、ユーザーに告知することを想定している。

 3DC安全ガイドラインは、2008年11月に一般公開。その後、3Dテレビの商品化も具体化する中、撮影、映像制作、表示技術が急速に進歩したこともあり、安全ガイドラインの内容が現状の技術に必ずしも合わない点が出てきたため、2009年11月30日に開始された経済産業省快適3Dプロジェクトの活動の一環として、文献調査や3D研究者、事業関係者との議論を進め、全面改訂した。

ガイドライン発表の意義

 改定版の3DCガイドラインは20日に3Dコンソーシアムのホームページで公開予定。この中では、両眼視差角を使った3Dの基本原理などから、視聴者やコンテンツ制作者、メーカーなどに向け注意点を紹介している。視聴者向けには、「両目を水平にした姿勢が基本」などの視聴姿勢や、視聴位置や視聴時間の注意のほか、発達段階の視機能への影響などを考慮し、低年齢層の視聴を制限することなどを提言している。

 コンテンツ制作者向けには、ディスプレイ上の視差を瞳孔間距離5cm以内に収めることや、一度以上の急な視野角変化を抑えることなどを推奨しているほか、快適に見える視差範囲のデータを提示。また、カメラ撮影時の注意点などについても案内している。

 製造者向けには、左右画像のクロストークをできるだけ抑えること、シャッターメガネ利用時にはできるだけ、高い切換え周波数を利用するよう推奨している。

 2008年版のガイドラインからの大きな変更点は、カメラ撮影について。「従来は、『カメラの光軸を平行にすべき』と記載していたが、技術の進歩により、カメラに輻輳をつけても見やすい映像を作れるようになったため、その点を改めた」(3Dコンソーシアム 千葉滋 安全ガイドライン部会長)とする。また、視聴距離などディスプレイに関する規定についても、ハイビジョンテレビを想定した記述に修正している。

 3Dコンソーシアム安全ガイドライン部会長を務めるNPO法人映像評価機構の千葉滋氏は、「2010年は立体テレビ元年とも言われている。家庭に普及させるためには、不適切な使用、不適切なコンテンツによる眼精疲労や映像酔いなどの防止策を充実しなければいけない。快適な3Dのための基盤として活用してもらい、円滑な産業立ち上げに寄与したい」とガイドラインの意義を説明した。

快適な3D環境のために、安全ガイドラインの策定や生態影響の研究などに取り組む業界ガイドラインとして提案。国際ガイドラインと学術基盤を同じとしながら、新しい技術に対応する国内の関連団体が協力してガイドライン化

 

ISOにおける標準化も視野に
 コンソーシアムにおいては、安全ガイドラインに加え、左右逆の映像や大きな視差変化を伴うような不適切なコンテンツを発見、修正可能にする自動評価立体映像自動評価システムの開発や、映像の生態影響の先端研究なども行なっている。

 JEITA(電子情報技術産業協会や3DCだけでなく、産業技術総合研究所(AIST)は情報通信研究所(NICT)、デジタルコンテンツ協会などとも連携。ガイドライン以前にもJEITAによるガイドライン試案('99年)や、ISO-IWA3などの3Dに関する指針が用意されていたが、今回のガイドラインは、産業化に向けて最新の事例を盛り込んでいる点が特徴という。この安全ガイドラインは、今後ISOにおける標準化に向け作業を進めていく方針。



(2010年 4月 19日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]