Suaraさんも参加し、「Soundgirl」第4回イベントが開催

-1,300万円超システムでSACD「アマネウタ」を試聴


イベントはティアックの試聴室で行なわれた

8月21日開催


試聴室の様子

 アニメソングを高音質で楽しむためのオーディオガイドブック「Soundgirl~音響少女~」。そのスピンオフイベント第4回「Soundgirl-音響少女-Showroom Special Vol.4」が8月21日に東京・多摩市のティアック試聴室で行なわれ、第2回にも参加したアーティストのSuaraさんらが再び登場した。

 「Soundgirl~音響少女~」は、美少女のイラストと共にピュアオーディオシステムの特徴や音質などを紹介する同人誌(融雪カンテラ)で、録音エンジニアでオーディオライターとしても活躍している岩井喬氏が文章を執筆。イラストレーターや漫画家などが、システムの音から導き出されるイメージを具現化した美少女イラストと組み合わせているのが特徴。試聴に使うソースもアニメや声優のCDなどを使っている。


Soundgirl -音響少女-
(C)2009 Soundgirl製作委員会/融雪カンテラ
(C)2009 音響少女

 スピンオフイベントは、書籍を読むだけでなく、様々なオーディオ機器で実際にアニメ関連や声優のCDなどを再生し、アニメファンなどのオーディオ入門者に、家でいつも聴いている楽曲が、本格的な機器でどのように聴こえるのか? を、体験してもらうのが目的となっている。

 第4回の特徴は、「TEAC・ESOTERIC・TASCAM×F.I.X.RECORDS」と題して、アニメ/ゲーム関連の楽曲を多数手がけ、音質にもこだわりを持ったソフトをラインナップするF.I.X.RECORDSが協力し、所属アーティストであるSuaraさんと、ディレクターの有村健一氏が参加した事。7月21日に発売されたSACD「アマネウタ」(KIGA-8/2,200円)の制作秘話が披露されたほか、有村氏がマスターレコーダーとして使っているTASCAMのDV-RA1000で作成したマスターデータを持ち込み、DSDミックスダウン素材を試聴ソースとして使うという、興味深い試みも行なわれた。




■ 会場はティアックの試聴室

多摩センター駅近くにある、ティアック本社

 スピンオフイベントは、第3回までJVCケンウッド丸の内ショールームが使われていたが、第4回はティアック&エソテリックの協力を得て、ティアック本社にある開発用の試聴室で実施。この試聴室の一般イベントへの開放は、今回が初だという。試聴システムも入門機から超ハイエンドまで、幅広いラインナップが揃えられた。

 入門機の組み合わせとして用意されたのは、ティアックのプリメイン「AG-H600」、CDプレーヤー「PD-H600」という各126,000円の組み合わせ。スピーカーはタンノイの銘機をコンパクトに再現した「Autograph Mini」(ペア31万5,000円)というコンパクトなシステムが用意された。

 イベントのナビゲーターを務める岩井氏は、SACD「アマネウタ」のCD層再生を交えつつ、低価格/コンパクトながら、高級パーツを大量投入して作られたAG-H600/PD-H600のポテンシャルの高さや、Autograph Miniの同軸2ウェイならではの音像定位のシャープさ、ヴォーカル再現のリアルさなどの特徴を解説。

 また、SACD版「アマネウタ」は、Suaraさんが2006年にリリースしたデビュー・アルバム(CD)を、新たにリミックスしてSACD化したものであるため、従来の楽曲と、新リミックスでどのように音楽が変化したのかを聴き比べる試聴も行なわれた。


ティアックのプリメイン「AG-H600」、CDプレーヤー「PD-H600」スピーカーはタンノイの銘機をコンパクトに再現した「Autograph Mini」サラインネットを外したところ。同軸ユニットを採用しているのが特徴

新しいSACD版(左)と、従来のCD版(右)の比較も

 高級セパレートとして用意されたのはエソテリックのシステムで、CD/SACDトランスポートの「P-03」(126万円)、DACが「D-03」(126万円)、クロックジェネレータが「G-03X」(31万5,000円)、プリアンプが「C-03」(84万円)、ステレオパワーアンプ「A-03」(94万5,000円)。スピーカーはタンノイの「Definition DC10T」(37万8,000円)という総額500万円超のシステム。

 入門システムと比べると、主に低域方向がワイドレンジ化し、情報量が増加。“高級システムではどのように聴こえるか?”を実感できる場となった。さらに、収録曲「星座」を使い、SACDのCD層とSACD層の比較再生も実施。SACDでは音場の奥行きがCDよりも広がるほか、冒頭の盛大なドラムの低域/高域がより伸びやかになること、個々の音がSACDでより自然に聴こえる事などが体験できた。


上からエソテリックのCD/SACDトランスポート「P-03」、DAC「D-03」、プリアンプの「C-03」中央にあるのがタンノイの「Definition DC10T」

 また、事前に告知されていなかったAvantgarde Acoustic(アバンギャルド・アコースティック)の超ハイエンドスピーカー「primo Ω G2」も急遽登場。duoシリーズの最高峰となるオールホーンシステムで、670mm径ホーンのミッドレンジ、180mm径ホーンのツイータと、300mm径のパワーアンプ内蔵のウーファ(ホーン付)を2基搭載した大型システム。一般向けの音出しは今回が初だという。

 価格もペア945万円と別格で、エソテリックのセパレートと組み合わせると1,300万円以上のシステムとなる。押し出しの強い、生々しいサウンドはホーンスピーカーならではの魅力で、Suaraさんのような女性ヴォーカルソースとの相性も極めて良好。価格が価格だけに滅多に聴けない組み合わせだが、超ハイエンドならではの世界が展開した。

 イベントの最後には、このシステムのプレーヤーを、マスターレコーダーTASCAM「DV-RA1000HD」に変更。有村氏が「アマネウタ」や「Pure-AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS」の、SACDになる前の、DSDミックスダウンした素材をそのまま再生するという試みも実施。販売されているSACDと比べると、個々の音のバランスが厳密に調整されていない段階の素材だが、音そのものの鮮度が極めて高く、SACD版よりもさらに生々しく、抜けが良いサウンドで、非常に興味深い試聴となった。


独Avantgarde Acousticの「primo Ω G2」ミッドレンジホーンを横からみたところ


■ SACD「アマネウタ」の制作秘話も

ディレクターの有村健一氏

 試聴盤に使われたSACDの「アマネウタ」は、2006年に発売されたSuaraさんのファーストアルバムをSACD(ハイブリッド)化したもので、当時収録した音素材をリミックス/リマスターして収録しているほか、Suaraさんが作詞した新曲1曲を追加収録。さらに、ボーナストラックとして「星座~アコースティックバージョン~」も収録しているのが特徴。リミックスは、「Pure~AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS~」でも録音/ミックスを担当した、エンジニアの橋本まさし氏が手がけている。

 有村氏によれば、「(2006年のCD版は)アレンジャーのイメージを活かして作り上げたものですが、今回のSACDでは、F.I.X.RECORDS社長の下川(下川直哉氏)の意向も含めて、プロデューサーの意見や、エンジニアの橋本さんの遊び心、また、“プロジェクトPure”として、『Pure~AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS~』からの流れも踏まえて、新しいアレンジをする事がコンセプトだった」という。

 ファーストアルバムから約5年という節目でのSACD化について、有村氏は「普通なら“ベスト盤”の発売が多いと思いますが、新たなファン層を拡大する前に、“アマネウタ”をまだ広めきれていないなという気持ちがありました。お客さんからもSACDで聴きたいという声があり、現場にも、アマネウタのシリーズ的なものを創りたいという気持ちが、プロジェクトPureからの流れも含めてありました」とのこと。


Suaraさん

 Suaraさんは「アマネウタ」について、「デビュー当時の歌を改めて聴くと、表現力が乏しく、照れくさい部分もあるのですが、当時できることを精一杯出せていて、逆に迷いなく、自分の想いをストレートに声に乗せられていると感じます。今が迷っているというわけではないのですが(笑)、表現力の幅が増え、様々な歌い方ができるようになった事で、もし、今、新しく録り直すとなると、“どういう風に歌おうか?”と迷うかもしれません。そういった意味で、当時の自分にピッタリとハマッた、原点的な作品。“よくぞこんな風に歌えたな”と、当時の自分を褒めてあげたいような作品ですね」と振り返る。

 SACD版に追加された新曲は、アルバムタイトルと同名の「天音唄」(アマネウタ)」で、作詞をSuaraさんが担当している。「5年間の集大成として、歌とは何か? 歌手とは何か? Suaraとは何か? そういったものを歌詞にしたいと思ったのですが、テーマが大きく、なおかつ完結しているわけでもないので非常に難しかったです。それでも、沢山ある歌の中から、私の歌を選んでくれた人の心の中に残るものが“答え”なんじゃないかなと思い、それを歌詞にしてみました」という。

 Suaraさんによれば、前述のような様々な想いを歌詞に織り込む際に、“いろはにほへと ちりぬるを”で始まる“いろは歌”になぞらえた構成にしたという。こうした生の制作秘話を聞きながら試聴できることで、単なる試聴の枠を超え、歌の世界をより深く味わえる貴重な一時となった。

 イベント終了後には、会場で「雪の魔法」(24bit/96kHz、WAVE形式トラックダウン/未マスタリング音源)、「夢想歌」のプロモーションビデオ(QuickTime形式)などが収録された「SuaraUSBフラッシュメモリカード」(FM-001/4,000円)の販売も実施。スペシャルサービスとして、有村氏がその場で「星座」のPureバージョン(1コーラス分)を追加し、Suaraさんがサインもしてくれるというファンには嬉しい心配りも。USBメモリでの高音質データの販売はまだまだ珍しい試みであり、有村氏は「SACDに加えて、今後は高音質配信も検討していきたい」と語っていた。



「Soundgirl~音響少女~」を手がけ、イベントではナビゲーターも務める岩井氏

 また、今回のイベントは、同じソースを用いて入門機からハイエンド機、そして超ハイエンド機を体験する事で、音のステップアップが実体験として理解しやすいイベントになったとも言えそうだ。

 さらに、製作段階の音を超ハイエンドシステムで体験することで、1つのオーディオの到達点まで垣間見ることができ、機器の選択やセッティングなど、より良い音を追求する上での“1つの指標”も得られるという、密度の濃いイベントという印象を受けた。

 なお、「Soundgirl~音響少女~」の書籍にも新たな展開が予定されている。第2弾となる「Soundgirl Duo -音響少女-」が2010年冬に商業誌として発売予定。ピュアオーディオ、ヘッドフォン、PC用のUSB接続デジタルアンプ/ヘッドフォンアンプなどを、よしづきくみち氏ら、30人を超えるイラストレーターの美麗なイラストと共に紹介。機器は国内外25社以上の協力を得て、前作の4倍以上の製品を収録するという。こちらの発売と共に、さらなる関連イベントの展開にも期待したい。


(2010年 8月 25日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]