ソンティア、リニアフェイズ音声処理技術で日本参入

-テレビやサウンドバーなどでの採用を目指す


ソンティア・オーディオ・プロセッシング・ソフトウェアのデモ

 音声技術を手掛ける英ソンティアロジックは、位相の最適化を重視したリニアフェイズ音声処理技術ソフトウェアの日本導入を本格的に開始する。サウンドバーやテレビ用スピーカー、iPodスピーカーなどでの採用を目指し、AV機器メーカーなどに採用を呼びかけていく。

 同社が「ソンティア・オーディオ・プロセッシング・ソフトウェア」と呼ぶ技術は、組み込み型のソフトウェアで、スピーカーユニットの能力を最大限に引き出す最適化処理によりオーディオシステムの音質を向上するなど、複数のオーディオ処理を統合したもの。

 正確な音声処理や、自然で劣化の無い音質、安定したバーチャルサラウンド、スムースかつ深い低域再生などが特徴で、「SPEAKER OPTIMISATION(スピーカー最適化機能)」、「ACOUSTIC IMAGING(音響イメージング機能)」、「BASS ENHANCEMENT(低音成分強調機能)」、「CENTER SPEAKER(センタースピーカー機能)」の4つの機能から構成される。


ソンティアの特徴より没入感の高い3Dを実現ソンティアの強み

 スピーカー最適化は、無響室で測定したスピーカーのドライバやキャビネットの性能に基づき、各製品ごとにアルゴリズムを調整。さらに、位相(時間領域)の最適化や周波数領域の処理により、単に周波数のみを制御する技術に比べ、正確なサウンド再生が可能という。また、大型スピーカー向けのSPEAKER OPTIMISATION PLUSでは、複数ユニット利用時のクロスオーバーネットワークをソフトウェアで構築することで、精細な帯域分割が可能になる。ハードウェアのクロスオーバー部品が不要となるため、コスト削減にも寄与するという。

サウンドバーやiPod用スピーカーなどに展開

 音響イメージングは、ステレオ入出力の空間的な幅を向上させ、広いサウンドステージを実現。リスニングポジションのワイド化も特徴という。

 低音成分強調は、音源のダイナミックイコライゼーションを利用して、低音を強化するもの。有機的な有限インパルス応答フィルタの利用により、係数がダイナミックかつリアルタイムに変化。PLUS版では、欠落した基音(ミッシングファンダメンタル)処理により、小型スピーカーでも深く豊かな低音を実現できるという。センタースピーカー機能は、サウンドバー製品用で、セリフなどを自然に再生する。

 同技術を組み込むDSPは、TIやアナログ・デバイセズなどの多くの製品に対応。ソンティアでは、ソフトウェアIPをAV機器メーカーに提供し、ライセンス料を徴収。特に音響メーカーでの採用を期待しているという。

 なお、同技術は基本的にスピーカーユニットに対し、最適な処理を個別にカスタマイズして実装する必要があるため、市場展開当初はスピーカーとアンプが一体になったテレビやサウンドバーなどが中心となる見込み。AVアンプのような別スピーカーを前提とした製品への展開については今後検討していくという。


 


■ 耳音響放射などの研究成果が他社との違い

クリス・バーノンCEO

 ソンティア・ロジック創業者でCEOを務めるクリス・バーノン氏は、2004年の企業以来、「3D HDオーディオの世界で主要なプロバイダになるべく努力を続けている」とし、同社の技術の特徴を解説した。

 他社との違いとして、音響心理学や、耳音響放射などのさまざまなサウンド技術を取り入れていることを挙げる。「実際に人間の耳がサウンドを認識する過程、どのように音が入り込むかを研究し、その成果を入れている。ダミーヘッドを用いてサンプルを取得している他方式と比べ、ワイドレンジかつ奥行きがあり、広いスイートスポットを実現できる」とする。

 会場では、リファレンスデザインとなるサウンドバーを使ったデモも実施し、ONとOFFでの音場や、サウンドセパレーション、音量感などの違いについても説明した。


(2010年 10月 13日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]