三菱電機、カーボンナノチューブ配合の振動板を開発

-チタン並の伝搬速度/紙と同等の内部損失を両立


試作された振動板。左上が中低音用、右下が高音用
振動板用材料の伝搬速度と内部損失の関係

 三菱電機は25日、カーボンナノチューブを樹脂に配合することで、金属製振動板に匹敵する高い伝搬速度と、紙製振動板と同等の適度な内部損失、高い生産性をあわせもつという「NCV(Nano Carbonized high Velocity)スピーカー用振動板」を開発したと発表した。

 今後、自動車向けや家庭向けの、音響製品やAV製品への採用が検討されている。

 スピーカーの振動板には、低音から高音に至る複雑な振動を正確に伝達する伝搬速度の高さと、振動板自体の共振音や固有音を発しないための適度な内部損失が求められる。例えばチタンやアルミニウムなどの金属系素材は、伝搬速度は高い反面、内部損失が小さく、固有音を発するという問題がある。紙やポリプロピレンなどのプラスチック素材は、適度な内部損失を持つが、伝搬速度が低いという問題がある。

 三菱電機ではこれらを両立する振動板素材の研究開発を進めており、カーボンナノチューブと数種類の樹脂とを最適配合し、射出成形による薄肉成形が可能な材料を新たに開発。チタンに匹敵する毎秒5,000m以上の高い伝搬速度と、紙と同等の適度な内部損失を実現したという。

 さらに、射出成形により製造可能なため、生産性の高さもあわせもっている。そのため、様々な大きさの振動板を製造でき、低音用から高音用の振動板を同一素材にすることが可能。マルチウェイスピーカーでも、全音域で統一感のある音質を実現できるとしている。


(2010年 10月 25日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]