キヤノン、実売30万円の4:2:2/50Mbps対応ビデオカメラ

-赤外線撮影にも対応。3D撮影支援機能も装備


XF105

 キヤノンは、ファイルベース記録形式(MPEG-2 フルHD 4:2:2)を採用したフルHD業務用ビデオカメラ2機種を、2011年1月中旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格はHD/SD-SDI出力などを搭載した「XF105」は40万円前後、それらを省いた「XF100」は30万円前後。生産台数は2モデル合計で2,500台/月。

 XF105とXF100の違いは、XF105のみにHD-SDI(Serial Digital Interface)出力、GENLOCK/タイムコード入出力兼用端子を搭載していること。XF100で、それらの機能が省かれている以外の仕様は共通で、両機種ともファンタム電源対応のXLR端子を2チャンネル装備している。


XF105(左)のみにHD-SDI(Serial Digital Interface)出力、GENLOCK/タイムコード入出力兼用端子を搭載しており、XF100(右)には搭載していない

 XF105/100は、6月に発売された、同社の業務用ビデオカメラで初めてファイルベース記録形式(MPEG-2 フルHD 4:2:2)を採用した、フルHD業務用ビデオカメラ「XF300/305」の下位モデル。最大の特徴である、記録方式や基本機能はそのままに、撮像素子の単板化やレンズの小型化などにより、XF300/305に比べて体積比で約42%、質量比で約41%の小型・軽量化を実現。外形寸法は約121×250×148mm(幅×奥行き×高さ)、本体のみの重量は約1,070g(XF105)/約1,020g(XF100)となっている。

XF105

XF300/305より大幅に小型、軽量化された
 操作部や端子、マイクなどの配置や、グリップ部を中心とした重量バランスの最適化を図ることにより、「プロのニーズを満たす優れた操作性とホールディング性を実現した」としている

 ファイルフォーマットはXF300/305と同じ、国際標準コンテナフォーマットのMXF(Material eXchange Format)で、同一MXFファイル内に映像と音声を格納するOP1aを採用している。コーデックはMPEG-2 Long GOPを使用しており、録画モードは、50Mbps(CBR/4:2:2/422P@HL)、35Mbps(VBR/4:2:0/MP@HL)、25Mbps(CBR/4:2:0/MP@H14)の3種類から選択できる。

 解像度とフレームレートも変更なく、50Mbpsと35Mbpsでは1,920×1,080ドット(60i/30P/24P)、1,280×720ドット(60P/30P/24P)、25Mbpモードは1,440×1,080(60i/30P/24P)から選べる。音声は全モード、リニアPCM(16bit/48kHz)2ch。

 記録メディアはCFで、2スロットを装備。ファイルシステムはFAT32を使用する。スロットをまたいだ、リレー記録に対応し、メディアが切り替わった場合でも、シーンは欠落しない。また、ホットスワップにも対応するほか、新たに2枚のCFに同じ動画を記録する「HD同時記録」にも対応した。使用可能なCFは、UDMA対応のType I。内蔵メモリに常に約3秒分の映像をストック記録し続け、約3秒前の映像からCFカードに録画を始めるプレRECモードも備えている。メディア間のコピーもできる。


レンズの操作リングは1つだが、絞りなどを割り当てられるカスタムダイヤルも装備するフリップ下にHDMI端子や、アナログ映像出力、USB端子も備える
底面

 撮像素子はXF300/305と同じ、1/3型有効画素数約207万画素(総画素約237万画素)の「キヤノン フルHD CMOS」を搭載。XF300/305は3板式だが、XF100/105ではカラーフィルターを追加し単板化している。

 レンズは、XF300/305の光学18倍ズーム「キヤノン HDビデオLレンズ」から、新設計の光学10倍ズーム「キヤノン HDビデオレンズ」に変更。F値はF1.8~2.8、絞りは8枚羽根の虹彩絞り。焦点距離は35mm判換算で、30.4~304mm。最至近撮影距離は、ズーム全域で60cmを実現している。

 ズームと手ブレ補正を同時に制御するレンズ群が3次元でリアルタイムに動くメカ機構を新たに開発したことにより、広角化と小型化の両立やレンズ駆動音の静音化を実現している。手振れ補正は、歩き撮りでの手ブレ抑制に効果的な「ダイナミックモード」、望遠撮影時の手ブレを軽減する「パワードIS」などを装備する。

0.8倍ワイドコンバーションレンズ「WD-H58W」が、2011年2月に47,250円で発売される

 また、XF300/305と同様に顔検出AFも装備しているほか、検出した顔のみでAFし、フレームアウトまたは顔を検出できない状況でピントが固定される「フェイスオンリーAF」を新たに搭載した。

 フィルターサイズはiVIS HF S21と同じ58mm径で、テレコンは同じものが使用できるが、ワイコンについては2011年2月に新製品「WD-H58W」(0.8倍/47,250円)が発売される。レンズの操作リングは1つだけだが、フォーカス、ズーム、絞りから任意の1つの操作を割り当てることができる。

内蔵左右マイクの間に近赤外光LEDライトを搭載
 新機能としては、放送局からのニーズ高いという、赤外光撮影モード「INFRAREDモード」を搭載した。レンズに独自のコーティングを施し、従来機種に比べて赤外光の透過を高めることで、より少ない赤外光下での撮影を実現。近距離での撮影用にデフューザーを内蔵した近赤外光LEDライトも搭載しており、画面周辺まで明暗差の少ない近赤外光撮影が可能としている。撮影画像は緑と白黒の選択が可能。なお、十分照度下で「INFRAREDモード」をONにすると、撮像防止機能が働くようになっている。

 さらに、2台同時使用した3D映像制作支援機能も装備した。手振れ補正用シフトレンズを使用して、ズームの光軸中心ズレ補正と、光軸調整が可能。リグなどに固定したままカメラ側の設定だけで微調整ができるようになった。さらに、2台のカメラの画角を合わせてからセットするとで、画角の変化量を数値で確認できる「画角調整ガイド」や、遅延なしに上下、左右、上下左右反転可能なスキャンリバース機能なども装備している。

設定の保存や読み出し用のSDHCカードスロット
 映像エンジンは「DIGIC DV III」。ガンマカーブやカラーマトリクスなどを、項目ごとに細かく設定できるカスタムピクチャー機能も装備。カスタムピクチャー機能の設定内容は、カードへの保存や読み出しが可能だが、XF305/300との互換性はなく、XF100/105専用となっている。また、カスタマイズが可能な操作ボタンが10個用意され、33項目の中から割り当てることが可能。設定内容はSDカードに保存することもできる。

 撮影時のフレームレートを変更することで、オーバークランクなどの可変速撮影にも対応。24Pでの再生を基準として、スローモーションは1/2.5倍速(720p記録時)から、ファーストモーションは5倍速(720p)まで対応。また、インターバル記録機能やクレイアニメーション制作に適したフレーム記録機能も備えている。

付属品
 液晶モニターは3.5型約92万ドットで、対面撮影可能。アンダースキャン表示に相当する100%視野角となっている。ビューファインダーも、0.24型約26万ドットのカラー液晶で、視野角は100%。ピントの状態を波形で表示するEdgeモニター機能も搭載している。

 連続撮影時間は、付属の「BP-925」使用時でXF105の場合は約2時間45分(液晶モニター)/約2時間40~45分(ビューファインダー)、XF100の場合は約3時間15~20分(液晶モニター/ビューファインダー)。

 ファイルの再生、バックアップ保存、メタデータの編集ができるブラウザソフトとして、「Canon XF Utility」が付属する。対応OSは、Windows 7/Vista(32bit/64 bit版)、Windows XP(32bit版のみ)、Mac OS X。その他にも、ワイヤレスコントローラー、レンズフード、コンパクトパワーアダプター「CA-930」、DCケーブル「DC-930」、バッテリーパック「BP-925」、ショルダーストラップなどが同梱される。



(2010年 11月 4日)

[AV Watch編集部 古川 敦]