ウエスタンデジタル、HDDメディアプレーヤーを発売予定

-日立のHDD事業買収で「シナジーを発揮したい」


1TB HDD内蔵メディアプレーヤー「WD TV Live Hub」

 ウエスタンデジタルジャパンは9日、同社の現状や今後の製品展開などに関する説明会を開催。7日に発表された米Western Digitalによる、日立製作所のHDD事業買収に関する説明や、日本国内での発売を検討している1TB HDD内蔵メディアプレーヤー「WD TV Live Hub」の参考展示を行なった。

 同社は現在、HDD事業をメインに展開しているが、そのHDDに蓄積された映像や音楽などを、リビングや家の外でも手軽に楽しめるようにするために、ネットワークに対応したメディアプレーヤーや、スマートフォン/タブレット用のコンテンツ再生アプリを、今後積極的に展開していくという。


 その一例として、海外で既に発売されている、1TB HDDを搭載したネットワークメディアプレーヤー「WD TV Live Hub」を紹介。国内発売が検討されているモデルだが、「日本のテレビやレコーダの市場動向、メディアプレーヤーの市場規模などを分析した上で、これから考えていこうという段階」(牛島学マーケティング マネージャー)だという。そのため、発売日や価格は未定。海外では199ドル程度で販売されている。

 搭載する1TB HDDや、同社のネットワークHDDに蓄積された動画/音楽/静止画ファイルなどを再生できるのが特徴。HDMI出力を備えており、最高1080pの映像をテレビなどに出力できる。DLNAに準拠しているため、他社のネットワークHDD内のコンテンツを再生する事もできる。なお、海外版はDTCP-IPには対応していないが、国内投入をする場合にこの仕様がどのようになるかは未定。「日本のユーザーから要望が多いだろうとは予測している」(牛島氏)という。

テレビとの接続を想定している薄型筐体が特徴。1TBのHDDを内蔵している前面向かって右端にUSB端子を装備。USBメモリや外付けUSB HDDなどが接続できる。デジカメなども接続可能

 iPhoneやiPod touch、iPadとの連携も可能。同社ネットワークHDD内の静止画を表示するためのアプリ「WD Photos」が、「WD TV Live Hub」でも利用でき、内蔵1TB HDDの静止画をiPhoneなどから表示できる。さらに、iPhoneで撮影した画像を、「WD TV Live Hub」の内蔵HDDにアップロードする事も可能。ペアリングは、「WD TV Live Hub」側に表示される12桁のアクティベーションコードを、iPhone側で入力するだけ。屋外からも自宅の「WD TV Live Hub」やネットワークHDDにアクセスできるという。また、アプリの次期バージョンでは、動画ファイルのやり取りにも対応する予定。

背面端子部。EthernetやHDMI出力、光デジタル音声出力などを装備。オプションでUSB無線LANアダプタも用意されているというiPod touchと連携したところ。テレビ画面に表示されるアクティベーションコードをiPod touchから入力すると、メディアプレーヤーとiPod touchがペアリングされ、HDD内の静止画・動画をiPod touchのアプリで表示できるようになる「WD TV Live Hub」以外にも、同社ネットワークHDDなどにアクセス可能

 本体には2つのUSBポートも搭載。外付USB HDDやUSBメモリを接続し、保存されているファイルを再生できるほか、ストレージクラスに対応したデジタルカメラやビデオカメラを接続し、内部のファイルを再生する事もできる。

 オンラインサービスにも対応しており、BlockbusterのVODや、Netflixにも対応。ただし、これは海外向けモデルの話で、「こうしたオンラインサービスも、日本で発売する場合には、日本のユーザーに使いやすいものに対応した上で発売したい」としている。またネットラジオの受信にも対応する。

デザインを一新したというUI。背景画像は自由に設定可能静止画を一覧表示しているところネットサービスの一覧。海外向けモデルであるため、日本では利用できないサービスも表示されている

 出力端子としてバージョン1.4に対応したHDMI端子を装備。1080pまでの出力が行なえる。ほかにも、コンポーネント、コンポジット、光デジタル音声出力も各1系統備えている。電源は付属のACアダプタを使用。リモコンも同梱する。

 海外版の対応映像フォーマットは、AVI(Xvid、MPEG-4 AVC/H.264、MPEG-1/2/4)、MPEG、VOB、MKV(MPEG-4 AVC/H.264、x.264、MPEG-1/2/4、VC-1)など。静止画はJPEG、GIF、TIFF、BMP、PNG。音楽はMP3、WAV、リニアPCM、WMA、AAC、FLAC、MKA、AIFF、OGG、ドルビーデジタル、DTSに対応する。

SNSにも対応。写真はfacebookにログインしたところ付属のリモコン

 なお、このプレーヤーとは別に、HDDを内蔵せず、ネットワークHDD機能を省いたタイプ「WD TV Live」を既に国内市場に投入しており、こちらは1万円を切る程度の価格で販売されている。同モデルのUIは、WD TV Live Hubのものとは異なる。

HDDを内蔵しないタイプ「WD TV Live」は、既に発売中「WD TV Live」の背面
「WD TV Live」のUI。「WD TV Live Hub」とはデザインが異なる

牛島学マーケティング マネージャー
 牛島氏は、2014年頃には、1世帯あたり約1TBのデジタルコンテンツを、何らかの形で保有する事になるという米国での調査結果を交え、「テレビ、PC、タブレット端末、スマートフォンは、日本のマーケットでは別々に普及が進んでいるが、今後はこれらを有機的に結びつけていく必要がある。その動機となるのがデジタルコンテンツだ」と説明。

 「WD TV Live Hub」のような、リビングで、家族が保有するコンテンツを楽しめ、なおかつ、離れた場所にいる家族に簡単に写真や動画を送信(アップロード)できるようなソリューションの提案と、それを実現する製品の提供に注力していく姿勢を示した。

 また、HDD事業に関しては、BDレコーダなどに搭載されるHDDも、同社が積極的に手がけている事を説明。PC用HDDとは異なり、24時間ずっと動作している必要があり、同時に高い信頼性も求められる、そんな日本のレコーダ市場で培われたHDDに関する技術を本社にフィードバックし、製品のクオリティを向上させてきた経緯も説明。そうした技術が、録画対応テレビ用に展開している、外付けUSB HDD「My Book AV」などに活かされているという。


外付けUSB HDD「My Book AV」の1TBモデル外付けUSB HDD「My Book Essentials」の3TBモデルも発売中

 こうした取り組みもあり、同社のHDD事業は順調に拡大しており、約1年前にはSeagateを抜いて世界シェア1位を獲得。現在も31.1%のシェアで首位を維持しているという。

ウエスタンデジタルジャパンの金森苧社長

 こうした流れの中で、既報の通り、米Western Digitalは日立製作所の100%子会社である日立グローバルシステムテクノロジーズ(HGST)を、現金35億ドルおよび株式2,500万株(7億5,000万ドル相当)で買収すると発表した。

 ウエスタンデジタルジャパンの金森苧社長は、「'80年代には70社以上があったHDD業界だが、現在は5社。極めて競争の厳しい世界だ。そして9月以降は4社となる。(Western DigitalとHGSTは)9月末に統合という形になるが、これからが険しい道程でもある。2つの会社が合わさることで良いシナジー効果を発揮し、より良い、より便利な製品を提供していきたい」と決意を語った。


HDDメーカー数の推移HDD主要メーカーの買収の歴史。Western Digitalは他社と比べて少なく、「Western Digitalは買収で大きくなったわけではないと考えている」(金森社長)メーカー別シェア

(2011年 3月 9日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]