地デジ需要が終焉、薄型テレビは前年同月比4割減に

-BCNが販売動向を発表、通期でも前年割れの見通し


薄型テレビの地デジ化特需は終焉

 BCNは、地デジ完全以降後の薄型テレビの需要動向などについて発表した。

 2011年7月24日の地デジへの完全移行後の薄型テレビの売れ行きは大きく落ち込んでおり、2011年8月の販売台数は前年同月比39.9%減、販売金額では57.3%減という結果になった。同調査は、全国23社2,355店舗のPOSデータを集計している。

 BCNの道越一郎アナリストは、「地デジ化特需は終焉し、『祭り』は終わったといえる。2011年通年では、販売台数で前年比2割減、販売金額で4割減の水準になる」と予測した。


薄型テレビの販売台数、金額指数

 だが、販売台数は前年同月からは大幅に落ち込んだものの、2009年8月の販売水準とほぼ同じで、「見方を変えれば、地デジ需要の終焉後でありながらも2年前の水準に留まったともいえる」とした。しかし、販売金額に関しては、過去3年間で最低の水準にまで減少しているという。

 8月の画面サイズ別の販売台数をみると、20型未満の薄型テレビが唯一前年実績を上回り、前年同月比25.2%増。2台目需要が促進されていることが裏付けられた。

 これに対して、20型台は42.9%減、30型台が41.2%減、40型台が58.8%減、50型以上が28.3%減。なかでもリビングの薄型テレビとして需要が多い40型台は半減するという結果になった。

 サイズ別構成比では30型台が最も多くて39.1%。続いて20型未満の22.0%、20型台の20.1%、40型台の16.9%、50型以上では1.9%となっている。

 また、2011年8月の薄型テレビの平均単価は、52,400円となっており、前年8月の76,100円から大幅に減少している。

 なかでも下落率が大きいのが30型台で31.0%減。20型未満では24.6%減、20型台が17.8%減、40型台が20.5%減、50型以上が10.7%減となった。「30型台の価格が再び下落傾向にある」としている。

 録画機能搭載テレビの平均単価は69,400円、録画非対応テレビでは36,900円となった。

薄型テレビはほぼ半数が録画対応に小型製品の比率が高い。30型台は再び価格下落20型未満だけが前年を上回る
薄型テレビのメーカー別販売シェア

 なお、メーカー別シェアでは、シャープが36.3%とトップシェアを獲得。続いて東芝の20.2%、パナソニックの15.5%、ソニーの11.5%となっており、東芝は、6月および7月に10%台中盤に落ち込んでいたシェアを20%台までに回復させた。

 また、3Dテレビの販売台数構成比は市場全体で7.9%、50型未満では6.4%となったが、50型以上では81.8%と8割を超えている。またLEDバックライトタイプの販売台数構成比は68.7%に達したほか、録画機能搭載テレビの構成比は51.3%と、今年6月以降、過半数に達している。

市場全体は下げ止まり傾向大型製品は録画対応が当たり前に

■ レコーダのピークは2011年7月

レコーダの地デジ化特需は7月

 一方、2011年における薄型テレビの需要のピークが2010年11月であったのに対して、レコーダの需要のピークは2011年7月と、時期に差が出ていることも明らかになった。

 2011年7月のレコーダーの販売台数は、前年同月比167.0%増、販売金額では112.1%増となった。薄型テレビはエコポイント制度の終了などが影響しているが、その影響を受けないレコーダは、地デジ完全移行直前に需要が集中した格好だ。

 しかし、8月は薄型テレビ同様、大幅な落ち込みがみられ、販売台数では前年同月比10.2%減、販売金額では28.6%減となった。

 レコーダーの平均単価は45,400円と、前年同月の56,900円から大きく下落。BD対応レコーダーの平均単価は44,000円(前年同月は61,100円)、BDXL対応レコーダの平均単価は5万2000円(同146,000円)となっている。

 なお、レコーダ全体における構成比は、BDが21.0%、BDXLが61.4%、その他が17.6%となったほか、3D非対応のレコーダーは、売れ筋上位20機種のうちわずか4機種だけとなり、3D対応が急速に進んでいることが明らかになった。

 レコーダのメーカー別シェアは、パナソニックが30.4%で首位。続いてシャープの27.6%、東芝の22.2%、ソニーの13.9%となっている。

レコーダと録画対応テレビのメーカー別販売台数構成比率

 BCNは、今回の調査において、「レコーダと録画対応テレビのメーカー別販売台数構成比率」というユニークな見方での分析も公表した。

 これによると、パナソニックはレコーダが68.8%を占めているのに対して、シャープは録画テレビが72.8%を構成。サードパーティの外付けHDDを接続する提案で先行した東芝は、意外にもレコーダが62.9%を占める結果となった。

 道越アナリストは、「薄型テレビは、パネルのだぶつき感もあり、エントリーモデルを中心とした低価格競争が続く一方で、録画機能や3D機能、スマートテレビ、壁掛けテレビ、有機ELなどの台頭が期待される。薄型テレビとデジタルデバイスとの連携強化も大きな要素になるだろう」としたほか、「録画テレビが台頭するなかで、レコーダの新たな存在意義が問われている。ホームサーバーへの進化を捉えた動きも出てくるだろう。薄型テレビやレコーダ、デジカメ、パソコンなどにおいては、これまでの延長線上での改善、改良では世の中のニーズに刺さらない。新たな価値を世に問う勇気が、メーカーには求められている」と総括した。



(2011年 9月 7日)

[ Reported by 大河原克行]