ソニー、今期最終赤字2,200億円に。テレビ不振など

-タイ洪水でカメラなどに影響も


加藤優 EVP CFO

 ソニーは2日、2011年度第3四半期(10-12月)決算を発表した。売上高は、前年同期比12.6%減の4兆8,927億円。営業損益はマイナス658億円、税引前利益はマイナス827億円、純損益はマイナス2,014億円となった。

 第3四半期単体では、売上高は前年同期比17.4%減の1兆8,229億円。営業損益は917億円のマイナス。これにあわせて2011年度通期業績予測も下方修正し、売上高は1,000億円マイナスの6兆4,000億円で、営業損益は950億円のマイナス、純損益は2,200億円のマイナス(当初予測は900億円のマイナス)。

 主な要因は、「タイ洪水で、工場への直接被害を受けただけでなく、サプライチェーンが広くダメージを受けた。実際の営業の数字だけでなく、機会損失もある(加藤優CFO)」としたほか、先進国における市場環境の悪化、為替の影響などを上げている。なお、決算発表後に開催した、次期CEOの平井一夫氏による会見の模様については、別記事で紹介している。


第3四半期連結業績連結業績見通しを下方修正

■ テレビ不振も粛々と対応策。タイ構造でDIも悪化

セグメント別の売上高、営業利益

 コンスーマープロダクツ&サービス分野(CPS)の売上高は、前年同期比24.4%減少の9,965億円。主に、欧米の市場環境悪化などによる価格下落の悪影響を受けた液晶テレビや、タイの洪水の影響、ならびに為替の悪影響によるもの。

 営業損益は857億円のマイナス(前年同期は635億円の利益)。売上減や原価率の悪化によるもの。また、1月にソニーはSamsungとの液晶パネル合弁会社であったS-LCDの持分すべてを売却し、CPS分野の持分法による投資損失に634億円計上している。

 構造改革費用とS-LCDの減損を除き、分野全体の損益変動にマイナスの影響を与えたのは、価格下落の大きい液晶テレビとマーケティング費用拡大とPlayStation 3の価格改定を実施したゲーム事業。

 液晶テレビの第3四半期は売上台数は600万台で通期2,000万台を見込む。'11年11月の第2四半期決算発表時には、'11年度のテレビ事業赤字は1,700億としていたが、「100億円ほど改善できそう(加藤優CFO)」とのこと。2012年度に赤字幅の半減(約800億円)、2013年度のブレイクイーブンを目指す。収益改善の一貫として、S-LCDの合弁を解消し、「パネルの購入価格も下がるだろう。第4四半期からは確かに下がっており、商品力強化と付加価値を上げていく施策、オペレーション改善、固定費改善などを組み合わせて粛々とやっていく」という。

営業利益増減要因

 タイの洪水で影響を受けたのは、デジタルイメージング(デジタルカメラ/ビデオカメラ)で、タイ生産していたコンパクト機のほか、サプライチェーンにも大きな影響が出た。また、欧米の景気動向による販売台数減や円高も響いたという。第3四半期の売上台数はコンパクトデジタルカメラが610万台、ビデオカメラが120万台で、通期の見込みはコンパクトが200万台下方修正の2,100万台、ビデオカメラも40万台下方修正の440万台。

 ゲームはPS3値下げで減収となったが、PS3のハード販売台数は過去最高の650万台を記録。通期は100万台下方修正の1,400万台。PlayStation Vitaは「想定通りの販売状況」とのこと。

 プロフェッショナル・デバイス&ソリューション分野は、売上高が前年比20.7%減の3,041億円、営業損益はマイナス148億円。タイの洪水影響で、法人顧客の需要減によりコンポーネントが減収。電池やストレージは東日本大震災の影響が減収要因となっている。

 映画分野は、売上高が7.7%増の1,606億円、営業利益は84.8%減の7億円。映像ソフトは「スマーフ」が好調なほか、米国のネットワーク向けに製作したテレビ番組収入が増加し、増収。ただし、作品数の増加による広告宣伝費増により減益となった。

 音楽分野は売上高が11.7%減の1,234億円、営業利益は21.7%減の153億円。金融分野は売上高が5.2%増の2,201億円、営業利益は0.4%減の326億円。ソニー・エリクソンは売上高が前年比15.7%減の12億8,800万ユーロ、純損益は8億5,300万ユーロ。ソニーエリクソンの子会社化にあたり330億円の投資損失を計上し、持分法によるソニーの投資損益は431億円の損失。

 加藤CFOは、「震災やタイの洪水、円高などを受け、結果としては大変厳しい数字になった。先に向けて収益改善の施策を打っているが、最も懸案のテレビ事業は、S-LCDの合弁解消などのステップを踏んでいる。ソニーエリクソンも100%子会社に組み込み、重要なモバイルの事業領域で将来の成長の布石を打っていきたい。ゲームもPlayStation Vitaを欧米でも発売する。厳しい環境だが粛々とアクションを取っていく」とした。


(2012年 2月 2日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]