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東芝、テレビ/PCと生活家電の統合など10月から事業再編

経営方針説明。裸眼3D医療モニタの年度内発売も

 東芝は7日、同社の'13年度経営方針説明会を開催した。このなかで、大規模な組織再編による10月1日からの新体制や、テレビ/PCを含むデジタルプロダクツ事業の構造改革、新たな収益の柱とする医療分野の方針などについて、田中久雄 代表執行役社長が説明を行なった。

 現在の取締役副会長である佐々木則夫氏から、6月25日より社長を引き継いだ田中氏は、「市場の伸長に過度に依存しない、東芝ならではの手法で自らの成長エンジンを生み出していく“創造的成長の実現”が必要」とし、これに向けてヘルスケア(医療)分野とエネルギー/ストレージなどの連携による事業機会の創出や、成長分野への人材投入を含めた生産性向上などを今後の方針として掲げた。

田中久雄 代表執行役社長
東芝グループ経営方針
「エネルギー」、「ストレージ」に加え、「ヘルスケア」を新たな柱と位置付けた

テレビ/PCと生活家電を事業統合。下期黒字化へ「聖域なき改革」も

テレビなどを含む「コンシューマ&ライフスタイル」分野の方針

 医療分野の強化などに向け、'03年以来という大規模な組織再編を行ない、10月1日より新体制が発足。これまで、社会インフラ事業に含まれていた医療分野を「ヘルスケア事業」とし、「電力・社会インフラ事業」、「コミュニティ・ソリューション事業」、「電子デバイス事業」などと並ぶ1つの事業として展開。

 また、テレビやPCなどの「デジタルプロダクツ事業」は、10月1日からは生活家電などの「家庭電器事業」と統合され、「コンシューマ&ライフスタイル事業」として展開する。組織再編により、各事業を横断した資産/資源活用などで新たな成長に結びつける狙い。

 既報の通り、同社は26日にデジタルプロダクツ事業の収益改善に向けた構造改革を発表している。国内でテレビやPCに関わる従業員総数の約20%に相当する設計開発、営業、スタッフなど約400名の従業員を、'13年度中に社会インフラ事業などに配置転換。'13年度は、テレビ事業とPC事業の合計で'12年度比で約100億円、'14年度は約200億円の固定費削減を図り、下期黒字化を目指す。

 田中社長は、同事業を含む10月1日からの「コンシューマ&ライフスタイル事業」について、従来のコンシューマビジネス中心から、BtoBや、(医療や環境分野を含む)スマートコミュニティビジネスへ展開していく方針を示し、これまで培った技術を、より広い分野で活用していくことを説明。具体例として、テレビのREGZAに採用した「グラスレス3D」(裸眼3D)技術を医療用モニターに活用して'13年度内に製品化することを明らかにした。また、REGZAで培った3D再構成などの高度な映像処理技術を、高速道路など老朽化したインフラ設備の診断に用いるといった例も紹介した。

10月1日から、新体制(右)に移行する
ものづくりのコンセプト説明
グラスレス3D技術を用いた医療用モニタを'13年度内に製品化予定

 田中社長は同事業の現況について「再編が急務。急激な円安の進行により、国内販売の収益悪化が顕在化している。(26日の)構造改革の第1弾として、“集中と選択”の実施と、更なる事業の軽量化を発表したが、下期黒字化に向けては不十分な内容」との認識を示し、「もう一段踏み込んだ施策が必要。聖域を設けず大胆な構造改革を行なう予定で、できるだけ早い時期に、具体的な内容をお伝えする」とした。

 なお、同事業の構造改革や他分野への転用が説明された一方で、コンシューマ向けの具体的な製品などについては示されなかった。コンシューマ向け製品の今後について田中社長は「長年培った資産が多く、ブランドイメージを向上させる大きな役割を持っている。事業が厳しいからといって今すぐ撤退するといったことは一切考えていない」と説明。「昭和30年代を振り返ると、カラーテレビなどの家電は景気が良かったが、重電は不況だった。過去の実績からも、全ての事業が良いということはなかなか無い。悪い時には他の事業が支え、そこで培った技術を活用していくことで十分意義がある。とは言え、赤字では継続する意味が全く無い。テレビは構造改革により機種削減や大型化へのシフトを行なうほか、BtoBへのシフトや、新興国市場への注力などで、下期は黒字を達成したいと考えている。もう少し温かく見守っていただければ」とした。

医療分野における事業拡大の計画
ストレージ・デバイス分野
エネルギー分野(原子力関連)

生産効率化、グローバル人材活用。'15年度は売上高7兆円目指す

生産性向上への施策

 生産性向上への取り組みについては、営業拠点の集約/連携強化や、生産機能/拠点の再配置による構造転換などを図っていくほか、物流についても複数購買化や倉庫拠点集約などで効率化を目指す。人員についても、現在の27部門から10月には部門数を半減するという組織の簡素化に伴い、シェアードサービス(間接業務の人員を集約するコスト削減)の活用領域を拡大していく。さらに、人材のグローバル化を進め、主要連結現地法人社長のローカル比率を50%以上とすることや、国内の外国籍従業員を倍増するといった方針を明らかにした。

 中期経営計画の概要についても説明。'12年度の売上高5兆8,003億円/営業利益1,934億円から、'13年度は売上高6兆1,000億円/営業利益2,600億円、'15年度は売上高7兆円/営業利益4,000億円との見通しを示した。国内と海外の売上比率は、'12年度の海外55%、国内45%から、'15年度は海外65%、国内35%を目指す。BtoBは、現在の80%から、'15年度は90%へ拡大を図る。また、'13~'15年度の研究開発費は1兆900億円、設備投資/投融資は1兆4,400億円を見込む。

環境関連の取り組み
'15年度の見通し
研究開発費、設備投資/投融資など

(中林暁)