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ひかりTV、放送転送/VODダウンロードなどサービス強化。'14年2月に4K/60p試験配信
(2013/10/21 18:13)
NTTぷららは21日、映像配信サービス「ひかりTV」の2013年度下期における取り組みなどを紹介する記者説明会を開催した。この中で、11月よりDLNA/DTCP-IP視聴の放送転送に対応することや、2014年7月頃に4K IP放送のトライアルを予定することなどを、同社の板東浩二社長が明らかにした。
スマホ/タブレットへの放送転送や、VODのダウンロード視聴に対応
下期に開始される新サービスとして、多チャンネル放送や地上/BSデジタル放送のIP再配信番組を、録画せずに家庭内の別室のテレビやスマートフォン/タブレット/PCなどで楽しむDLNA/DTCP-IPの「放送転送」に11月から対応。Android搭載STB「スマートTV対応チューナ」(ST-3200)で利用できる。
従来は、別室でDLNA/DTCP-IP視聴する場合は一旦録画する必要があった。しかし、11月からは録画せずに、実際の放送から約10秒程度の遅れでリアルタイムに近い視聴が可能になる。スマホで視聴する場合はアプリのTwonky Beam(パケットビデオ製)から「ホームネットワーク上のコンテンツを再生」を選び、「外部機器」としてSTBのST-3200を選ぶと、好きなチャンネルを視聴できる。なお、同時に視聴できるのは地デジの場合2番組分、多チャンネル放送はSTB本体プラス2番組分となる。放送転送時に再エンコードは行なわず、MPEG-4 AVC/H.264のハイビジョン画質そのままで視聴できる。
なお、Twonky Beam以外のDLNA/DTCP-IP対応アプリを使った動作も検証中で、動作確認が取れ次第、順次案内するという。
2014年1月からは、VOD番組のダウンロード視聴にも対応。ひかりTVのVOD作品のうち、コンテンツホルダから許諾された作品については、スマートフォンなどにダウンロードして持ち出し、オフラインで視聴できる。
ダウンロードサービスは、スマホアプリの「ひかりTVどこでも」で利用でき、スマホだけで契約しているユーザー(月額1,000円または月額350円)も利用できる。ダウンロードした番組は、視聴期限が設けられているが、期限後も再び認証すれば再ダウンロードの必要が無く何度でも視聴できる。画質は最高1,280×720ドットで、3種類から選べる。
「NHKオンデマンド」番組のマルチデバイス対応も10月28日より順次実施。従来のテレビ視聴に加え、PCやスマホ、タブレットでも、単品や見放題パックの番組が視聴可能になる。NHKの「あまちゃん」など、人気作品より対応予定としている。
VODの「マイチャンネル」機能も10月23日より提供する。ドラマなどのシリーズ物を、毎回話数を選んで視聴ボタンを押す手間を省き、複数選択してまとめて連続視聴できるというもの。シリーズ作品一覧画面に新設される「連続視聴」ボタンを押すと、視聴開始するタイトル(話数)を選んですぐにノンストップで再生できる。
4K/60pのHEVC映像配信をデモ。'14年2月にVODトライアル開始
将来に向けた取り組みとしては、4月に発表した4K(解像度3,840×2,160ドット)映像制作/配信トライアルの現状を板東社長が説明。
同社のこれまでのIP放送やVODのノウハウ、NTTのフレッツ光ネクスト回線を活用し、次世代映像コーデックのHEVC/H.265を用いて4K映像のIP配信を行なうもので、'14年2月より4K VODのトライアルを、同7月頃に4K IP放送(マルチキャスト)のトライアルを実施予定。これに向けて、現在4Kコンテンツ「下町ボブスレー」の制作や、トライアル用のチューナ(STB)の開発を進めている。なお、これらのトライアルは家庭の4Kテレビなどで視聴できるものではないが、NTTグループの展示場などの施設で観覧できるようにするという。
トライアル時の仕様はHEVCの4K/60p映像を、30Mbps程度の帯域で配信することを想定。配信プロトコルは、既存のIPTVフォーラム仕様のVOD配信プロトコルを拡張したものになるという。説明会が行なわれた同社で、フルHDの映像(現行STBと55型フルHDテレビ利用)と、現在の試作機を使った4K/30p映像(58型市販4Kテレビに表示)、業務用のデコーダを用いた4K/60p映像(56型の業務用4Kモニタに表示)を比較して、画質の違いを説明するデモを行なっていた。今回のデモでは、4K/60p映像をデコーダから4本のHDMIで4K対応モニタに入力しているが、サービス開始時には、HDMI 2.0によりHDMI 1本で伝送可能になる見込み。
「NHKワールドTV」や「AKB48グループ ドラフト会議」などを放送予定
'13年下期の新しい映像配信コンテンツとしては、ニュースや情報などの番組を英語で提供する「NHKワールドTV」の24時間放送を11月4日より開始。同番組は全国15地域のCATVやネット配信などでは提供されているが、一般ユーザー向けに全国エリアで放送するのは、ひかりTVが初だという(2.5m以上のパラボラアンテナで受信する場合を除く)。エリアカバー率は、NTT東西のフレッツ光が利用できる全国90%以上としている。
そのほか、ひかりTV初のオリジナルドラマも10月25日より放送。毎回1人の女優が映像監督とペアを組み、それぞれわずか24時間で短編ドラマを撮影するというもので、主演女優は夏帆や波留、刈谷友衣子、橋本愛などを予定している。
11月10日に開催される「AKB48グループ ドラフト会議」の完全生中継も実施。プロ野球のドラフト会議と同じくグランドプリンス新高輪において、AKB48の各チームが、事前審査通過者から必要な人材を選んで「ドラフト候補」としてグループ入りを決めるという。
映像以外のサービスでは、「ひかりTVゲーム」が11月よりタブレットなどのモバイル端末に対応。従来はスマホをコントローラとして利用することはできたが、新たにゲーム画面をスマホにも表示可能になる。その第1弾として、麻雀の手牌を各プレーヤーが手元のタブレットで確認し、捨て牌などをテレビ画面に表示するというゲームを配信予定。テレビに表示する映像も、タブレットの映像も同一のクラウド上で処理されるため、テレビと同等のイメージを手元に表示可能だという。
また、音楽配信の「ひかりTVミュージック」には、'14年1月より「新レコメンド機能」を実装。詳細は明かされなかったが、今後改めて発表するという。ショッピングサービスでは、スマホ/タブレットでカタログを見ながら購入するように利用できる「かたろぐマーケット(仮称)」を'13年第3四半期より開始予定。
会員数は上期で18万人増。VOD視聴ランキング1位は「進撃の巨人」
ひかりTVの会員数は、'13年9月末時点で263万人。上期で18万人増となったが、これまでに比べて伸びが鈍化しているのは、NTT東西の「フレッツ光」純増数が落ちたことに伴ったものだという。同社はこの現状に対し、スマホ/タブレットユーザー向けやPC向けのサービスなどを開始しており、板東社長は「既存PCユーザーの取り込み」を今後の課題として挙げた。
現状のコンテンツラインナップは、テレビ向けが94チャンネルで、HD化率は業界最大級という85%。ビデオは約3万本で、うち見放題は約8,000本。ミュージックは邦楽を含め120万曲以上。アプリは使い放題で約110タイトル、ブックは約91,000冊、ゲームは遊び放題が約50タイトルとなっている。
上期のVOD視聴ランキング(見放題作品)は、アニメ「進撃の巨人」が総合でも第1位になる人気で、多い時は1週間で40万回視聴されたという。全体のVOD視聴数は1カ月あたり約2,600万回で「国内最大級」としている。個別課金作品(見逃しなど)のランキングは、アニメ「クレヨンしんちゃん」や、ドラマ「半沢直樹」、映画「アイアンマン3」などが人気。進撃の巨人は見逃し視聴でもアニメの3位となった。
板東社長は、同社事業展開の現状について、これまでの「第1ステップ」(100万会員獲得)、「第2ステップ」(新たなVODマーケットの構築)に続く、「第3ステップに入った」と説明。第3ステップのうち「(スマホ/タブレット/PC視聴などの)マルチデバイスの仕組みはほぼ確立できた。テレビ/ビデオ配信だけでなく、音楽やクラウドゲーム、ブック、ショッピング、アプリなどの投入で、映像だけでなくマルチプラットフォームを構築してきた」と説明。
新たなビジネス展開として、ゲームクリエイターの専門学校などと協力してゲームを制作、ひかりTVユーザーに無料提供して、好評だった作品の続編や商用化を目指すコンテンツ制作スキームも'14年1月より開始。これを、今後は映像など他のサービスにも展開することも計画しているという。