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ひかりTV、4K映像の商用配信を10月開始。犬向け動画や“キャリアフリー”も

NTTぷららの板東浩二社長

 NTTぷららは、NTT東西の光回線を使った4K映像のビデオオンデマンド(VOD)商用配信サービスを10月に開始すると発表。これに先駆けて、トライアル配信を4月8日から行なう。同社は7日に記者説明会を行ない、板東浩二社長が「ひかりTV」の2014年度以降における取り組みを説明。会場で4Kトライアル配信のデモも行なった。

 8日からのVODトライアルでは、全国の量販店やNTTグループのショールーム、エントランスなど合計12カ所に視聴できるコーナーを配置。その後、6月にはIP放送での4Kトライアル配信を予定。これらの検証を経て、10月にはVODでの商用サービスを開始する予定。

4K VOD商用放送を10月、IPトライアルは6月に実施予定

4K配信への取り組み

 VODトライアル配信では、動画のコーデックにHEVC/H.265を使用。NTT東日本/西日本の「フレッツ光ネクスト」上で、約30Mbpsのビットレートで配信。今回のトライアル用に住友電工ネットワークが開発したチューナ(STB)と4K対応テレビをHDMI 2.0接続して3,840×2,160ドット、60p/30p/24pの4K映像を配信。音声はAACで256kbps。タブレット上で動作する専用リモコンアプリを使って画面を操作する。

 なお、STBのHDMIがHDCP 2.2をサポートするかどうかは現時点で決まっていないが、10月の商用サービス開始時点には、著作権保護なども最新規格に合わせて実装していく方針だという。コンテンツ数は、10月時点で「100本以上は集めたい」(板東浩二社長)としている。

 配信の方法や料金の詳細はこれから決まっていくが、「今のVODと同様に見放題サービスの中に組み込む番組と、個別にPPVで購入する番組に分かれていくのでは」(板東氏)としている。STBはレンタル/売り切りの両方を用意する予定。STBだけでなく、チューナ機能を4K対応テレビに内蔵し、テレビを買って契約するだけで4K配信が観られる環境の実現も目指しており、テレビメーカーと調整を行なっているという。

4Kトライアル配信のデモ
トライアル用に開発したSTB

 配信番組は、NHKエンタープライズ制作の「微速度映像の新世界」、「高度8000mからの日本列島」などを独占で提供するほか、NTTぷららが自主制作した「下町ボブスレー」、「宮里美香 Shot in 4K」など合計10作品を用意する。

 トライアル配信が観られる場所は、NTTグループショールーム NOTE、NTTコミュニケーションズ 日比谷ビルエントランス、NTT東日本 本社エントランス、NTT西日本 本社エントランス、NTTぷらら 本社エントランス。全国の大手量販手7カ所でも順次上映を開始予定。

4K VODトライアル配信の概要
トライアルで配信する作品の一覧
商用化に向けたロードマップ

 今回のトライアルを通じて技術開発と検証を進め、10月からはNTTの光回線を利用した商用サービスの開始を目指す。今後も4K映像の自主制作を進めるほか、NHKエンタープライズなどの他社とも協力し、4K配信コンテンツの拡充を図る。

 10月の商用VOD配信に先立ち、6月にはIP放送での4K映像のトライアル配信も予定。板東氏はIP放送での4K商用化について「24時間流すためには、4Kコンテンツの調達が非常に大変になってくる。2014年度中に開始できればいいと思うが、マーケットの立ち上がりを見ながら、放送系4Kサービスの商用化を始める時期を決めていく。まずはVODで4K映像配信することでマーケットを構築していく」とした。なお、今回の4K VODトライアルは放送ではないため、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)との共同ではなくひかりTVが独自で行なっているが、板東氏は「放送系サービスはNexTV-Fと歩調を合わせる。コンテンツ提供などの取り組みで、一緒にやっていきたい」(板東氏)とした。

NHKエンタープライズの今井環社長

 4K映像コンテンツを提供するNHKエンタープライズの今井環社長も来場。「6年前に米国で4Kカメラが発売された時に購入し、取り組み始めた。4Kコンテンツ制作には、ピント合わせ、データ量の増大による編集時間など課題はあるが、徐々にノウハウを蓄積して、コンテンツを作り貯めたい」と述べた。

4Kコンテンツの楽しみ方の例として、無線LAN接続したタブレットでピンチイン操作すると映像の好きな部分をズームできるという「4Kフォーカス」のデモも行なった

ひかりTVゲームにディズニーのゲームを配信。ペットが観る「DOGTV」も

ひかりTVゲームの新規追加タイトル

 ひかりTVのクラウドゲームサービス「ひかりTVゲーム」において、ディズニーとディズニー/ピクサーのゲームを6月より順次提供することも発表。現在VOD配信している映画や、ショッピングサービスで販売するフィギュアなど関連グッズとも連携し、「ディズニーコンテンツを楽しめるひかりTV」として訴求していく。

 提供予定のゲームは、「プレーンズ」、「トイ・ストーリー3」、「メリダとおそろしの森」を先行して配信。その他にも、ディズニーキャラクターを操作して、映画の世界観に基づいたオリジナルストーリーを楽しんだり、自分でフィールドを作成できる「ディズニーインフィニティ」、「ディズニー エピックミッキー2:二つの力」など合計6タイトルを用意する。

プレーンズ
ディズニーインフィニティ
ゲームを提供するウォルト・ディズニー・ジャパンのテレビジョン バイス プレジデント&ゼネラルマネージャー 児玉隆志氏も来場。「新しい技術を先取りしていくひかりTVに対し、コンテンツも進化させないといけない」として、新ゲームを紹介した

 VODサービスの新たなコンテンツとして、室内で飼う犬が留守番の時などに観るペット専門チャンネル「DOGTV」を6月1日0時より日本で初めて放送。プレミアムチャンネルとして月額1,944円で視聴できる。チャンネル番号は「ch880」。

 「DOGTV」は、留守番をしている犬のリラクゼーションやストレス緩和などを目的に、2013年8月より米国で放送を開始。科学的研究に基づき開発され、リラックス、アクティビティ、教育の3つのカテゴリで構成。犬の視覚や聴覚、生活サイクルにあわせて編成しているという。

「DOGTV」の概要
犬視点の映像などが流れる

 その他の新たな取り組みとしては、前述したベーシックチャンネルのハイビジョン化率100%も予定。5月1日までに「BBCワールドニュース」、「FOODIES TV」、「囲碁・将棋チャンネル」の3つをHD化、4月より「TBSチャンネル2」を加え、ベーシックチャンネルの全43チャンネルを全てハイビジョン化。プレミアムチャンネルなどを含めた全チャンネルのHD化は93%まで拡大する。

 また、ひかりTVミュージックの配信曲数は、3月末時点の約150万曲から、9月末には約780万曲、'15年3月末には現在の約6倍となる約1,000万曲まで拡大する予定。

スマートTV進化のための新たな取り組み
ベーシックチャンネル全43chを5月には全てハイビジョンに
ひかりTVミュージックの提供楽曲数を約1,000万曲に

会員の半数が多チャンネルを利用。年度内に“キャリアフリー”化も

ひかりTVの会員数

 NTTぷららの板東浩二社長は、ひかりTVにおける“スマートテレビ”への取り組みについて、「現時点で、スマートTVの仕組みの確立はほぼできたと思う。中核であるスマートTVプラットフォーム」は、300万人近いひかりTVユーザーに利用いただいている。テレビを中心に、スマホ、タブレット、PCのマルチデバイスで楽しんでいただけるところまで達した」と説明。

 今後の課題としては「このプラットフォームに新しいアプリとコンテンツをのせて、スマートTVの拡充を図っていくこと」とし、今回の4Kトライアル配信やゲーム強化など「コンテンツ」への注力を強化していく方針を示した。

 ひかりTVの会員数は3月末時点で282万人を達成。「1カ月3万人前後のペースで純増している」という。会員のうち、実際に映像配信を利用しているアクティブユーザーの実数は公開していないが、板東社長は「会員の約半分弱が多チャンネルを視聴している。よく観られるコンテンツはアニメ、ドラマなどのシリーズ物。VODの利用回数は2,500万回を毎月超えるところまで高まった」という。音楽配信の「ひかりTVミュージック」や「ひかりTVゲーム」の会員数は非公開だが、ここ最近でそれぞれ約1万人ずつ会員が増えたという。

ひかりTVの目指す方向性
スマートTVプラットフォーム
スマホ/タブレットなどでマルチデバイスを進めてきた

 ひかりTVは、スマホ/タブレットなどのマルチデバイス対応により、NTT光回線以外のユーザー獲得も進めてきたが、テレビ向けサービスのユーザーもさらに拡大するため、フレッツ光以外の光/ADSL回線でもVODや多チャンネル放送サービスを使えるようにするマルチネットワーク化を推進することも発表。携帯電話の業界では、「dビデオ」(NTTドコモ)など、通信会社を問わず利用できる“キャリアフリー”サービスが始まりつつあるが、ひかりTVは今回の取り組みをキャリアフリーと呼び、他社の固定回線でひかりTVのVOD/放送サービスを使えるチューナの提供を'14年度内に予定。なお、現在スマホ/タブレットで利用できる映像配信はVODのみだが、第2四半期には多チャンネル放送に対応予定であることも明らかにした。

 現在の放送サービスは、フレッツ光ネクストのIPv6マルチキャストで配信しているが、他社回線で利用するには、視聴するテレビやスマホ、タブレットに向けて配信ノードを用意するユニキャスト方式を採用する。ユニキャストの場合、同時に多くのユーザーが接続すると回線がひっ迫する恐れがあるため、全国に配信ノードを設置。利用環境に応じて配信速度のバリエーションを複数用意するかどうかについても検討中としている。

マルチネットワーク/マルチデバイス対応への取り組み
NTT光回線以外にも対応する「キャリアフリー」を予定
スマホ/タブレットでも放送サービスが利用可能に
会員数の目標

 同社は「スマートTV化」の推進により、2015年3月末に、約40万人増の320万会員を目指す。板東社長は「スマートTVにより、テレビそのものがどう変化するかは、人によって考えが違い、実際どうなるかは分からないが、携帯/モバイル端末を見るとある程度予測できるのでは。携帯がネットにつながって10年しないうちにスマホに進化したように、テレビがブロードバンドにつながれば大きく変わっていく。そこに大きなビジネスチャンスがあり、乗り遅れずにやっていきたい」と述べた。

(中林暁)