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パナソニック、車載/住宅/家電で「売上2兆円×3」へ

'13年第2四半期決算。PDP終了、米TVは工場直販型に

津賀一宏社長

 パナソニックは31日、2013年度上期(2013年4月~9月)の連結業績を発表。その席上、パナソニックの津賀一宏社長は、プラズマディスプレイパネル(PDP)事業からの年内撤退を含む事業変革への取り組みなどについて明らかにした。

 なお、プラズマテレビ事業からの撤退について詳しくは、こちらの記事でレポートしている。

プラズマテレビ事業から撤退

 津賀社長は、2013年4月からスタートした事業部制が半年を経過したことに触れながら、「49の事業部が開発、製造、販売の全てにおいて責任を持つ体制で進めている。まだ十分ではないが、半年を経過し、当初の狙い通りに順調に動き出していると感じている。自責という考え方が意識にも仕組みに表れてきている」とした。

「競争力のある事業は伸ばす、将来像が描けない事業は統廃合」を徹底していく

 具体的には、事業部同士で競い合うように、事業課題をタイムリーに把握して素早く手を打つことができるようになったという。

 そして、「今後も事業部基軸の経営を推し進める」と語る一方で、「将来が描けない事業は統廃合するということを、『当たり前のこと』として徹底していく」と厳しい姿勢で臨む考えを示した。

主要赤字5事業の取り組み

 課題事業の構造改革については、「テレビ・パネル」、「半導体」、「携帯電話」、「回路基板」、「光事業」(ドライブ・ピックアップ)の5つの赤字事業に関して、事業の見極めや、転地、アセットライト化、拠点再編といった手を打ち、具体的に携帯電話事業におけるBtoCスマートフォンの新製品開発休止、光事業における国内拠点の再編完了などを行なったとした。

 そして、新たな赤字事業の改善策として、PDP事業において、2013年12月にパネル生産を終了。今年度中をめどに事業終息を発表。さらにプラズマテレビによって大画面市場を切り開いていた米国および中国のテレビ事業においては、販売チャネルを絞り込み、とくに米国においては工場直販型の仕組みを導入し、オペレーションコストを大幅に削減するという。

 2013年度見通しで200億円の赤字であったPDP事業の終息、80億円の赤字であった米国、中国のテレビ事業の縮小によって、2015年度の赤字解消にめどをつけるという。

エアコン事業とDSC事業は年内の再建にめどをつけ、2014年度は黒字化へ

 一方で、中国における流通在庫や、海外生産からの日本への持ち帰り方式による円安の逆効果によって、今年度一気に赤字化することになるエアコン事業と、コンパクトカメラ市場の縮小による赤字拡大が影響するDSC(デジタルスチルカメラ)事業においては、それぞれ「新たな課題事業と位置づける」とし、エアコン事業では中国での在庫適正化、商品づくりの見直し、大型空調の強化を進め、年内の再建にめどをつける。

 また、世界最小のミラーレス一眼カメラ「LUMIX GM1」をはじめとした高付加価値ゾーンに特化し、固定費を圧縮し、通信や4Kを生かした新カテゴリの創出にも取り組むという。

 「構造改革のヤマ場は過ぎていない。構造改革が必要な事業はまだある。事態が深刻な事業もある。PDPのようにこと(事業撤退)を考えなくてはならない事業もある。下期にはさらに抜本的に改革を加速していく」として、「2013年、2014年で赤字事業にはめどをつけて、2015年には赤字事業ゼロを目指す」という姿勢を改めて強調した。

車載、住宅関連事業の両方で2兆円の売上高を目指す

住宅、社会、ビジネス、旅、自動車などの領域で「お客様のいいくらしを広げていく」

 パナソニックでは、2015年度を最終年度とする中期経営計画「CV2015」を掲げているが、その中で「目指す姿」として、家電のDNAを中核に置き、そこから住宅、社会、ビジネス、旅、自動車などの様々な空間・領域で、「お客様のいいくらしを広げていく」という方針を掲げている。

 中でも、2018年度には、車載事業で2兆円、住宅関連事業で2兆円の売上高を目指している。

 津賀社長は、車載事業に関しては、「EV車向けのバッテリーシステムのみならず、コックピットシステムや、センサー、カメラを含めた総合提案を行なうことで、ガソリン車では1台数万円のビジネスだったのが、一気に10倍以上に広がる。すでに1兆7,000億円規模の事業が見えてきた」としたほか、「車載電池事業は、5社10車種で受注しており、テスラ社とは2014年からの4年間で、約20億個の円筒形電池を供給することで合意した。決定していた130億円の投資計画に加えて、180億円の追加投資を決定した。パートナーの期待に応えて、増産に踏み込む」とした。

「車載2兆円」に向けて、EV車向けバッテリ以外も総合的に提案していく
車載電池への投資も実施。「増産に踏み込む」という

 また、住宅関連事業に関しては、「パートナーと手を組むことで、1棟あたり200~300万円規模のビジネスを倍増させることができる。現在、HEMS関連やリフォーム事業の展開、アジアや中国、インドなどでの増販によって、1兆7000億円まで見えた。残りは、未参入分野と海外販路のM&A、アライアンスなどで展開する」と述べた。

 HEMS関連では、上期に290億円の売上げを計上。スマートハウスではエコ・コルディスが上期500棟の受注を達成。年間1,000棟以上の目標に対して、順調な滑り出しとなったという。

 さらに、トルコの配線器具メーカーであるヴィコ社を買収。「配線器具グローバルナンバーワンを目指す」と宣言した。

 こうした取り組みを通じて、創業100周年を迎える2018年には、車載事業で2兆円、住宅関連事業2兆円に加えて、現在1兆9,000億円の事業規模を誇る家電事業に関しても2兆円を計画。「2兆円×3という姿を目指したい」と述べた。

「住宅2兆円」に向けた施策
HEMS関連事業も拡大へ

2013年度上期の純利益は1,693億円の黒字に

 一方、パナソニックが発表した2013年度上期(2013年4月~9月)の連結業績は、売上高は前年同期比1.9%増の3兆7,063億円、営業利益は67.8%増の1,465億円、税引前利益は前年同期の2,786億円の赤字から黒字転換し、2,074億円。当期純利益は6,851億円の赤字から、1,693億円の黒字に転換した。

第2四半期(3カ月)の連結決算概要
第2四半期(累計)の連結決算概要
河井英明常務取締役

 パナソニックの河井英明常務取締役は、「利益は固定費削減や合理化効果など、徹底した収益力強化により大幅な改善を実現した。事業別には、住宅関連が順調なエコソリューションズと、車載関連が好調なオートモーティブ&インダストリアルシステムズが牽引している。財務体質は着実に改善しており、第2四半期末のネット資金は第1四半期末よりも、565億円良化した」と総括した。

 地域別売上高は、円ベースで、国内が5%減の1兆7873億円。海外では、米州が14%増の5,539億円、欧州が11%増の3,543億円、中国が1%減5,106億円、アジアが14%増の5,002億円となったが、現地通貨ベースではすべての地域で前年割れとなっている。

第2四半期(累計)セグメント別実績

 セグメント別では、AVCネットワークスの売上高が前年比9%減の7,554億円、営業損失は33億円悪化で165億円の赤字。製販連結では、売上高は4%増の8,443億円、営業損失は16億円改善したものの、217億円の赤字となった。

 テレビ事業において収支を優先し、不採算機種の販売を絞り込んだこと、デジタルカメラ事業の販売不振、スマートフォンを担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズの販売不振など、デジタルコンシューマ製品が不振となったことが影響。前年同期比および年初計画値を下回る結果となった。「BtoB事業は堅調だったが、BtoCの不振を挽回できるところまではいかなかった。だが、パネル事業は着実に改善しており、固定費削減も収益改善にはプラス影響となった」という。

 テレビ事業部の売上高は前年同期比14%減の1,638億円、営業損失は27億円の赤字となった。

 テレビ・パネル事業の連結収支では、256億円の赤字となっている。だが、「非テレビ用途を推進して、前年同期に比べて100億円の改善となっている」とした。

 携帯電話事業を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズの売上高は前年同期比45%減の261億円、営業損失は14億円悪化の76億円の赤字となっている。

第2四半期(累計)セグメント別実績のAVCネットワークス
第2四半期(累計)主要課題事業の実績
第2四半期(累計)セグメント別実績のオートモーティブ&インダストリアルシステムズ

 なお、レッツノートなどのPC事業を担当するITプロダクツ事業部は、前年同期比12%増の493億円となったほか、デジタルカメラを担当するDSC事業部は、売上高は40%減の358億円となった。

 アプライアンスの売上高は前年同期比5%増の6,104億円、営業利益は40%減の172億円。アプライアンスの製販連結では、売上高が7%増の8,262億円、営業利益は28%減の291億円となった。

 エコソリューションズは、売上高が7%増の8,557億円、営業利益が110%増の414億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が6%増の1兆3,559億円、営業利益は108%増の582億円。その他事業では、売上高が10%減の3,934億円、営業利益は118億円改善し、54億円の黒字となった。

 また、2013年度の通期見通しを上方修正。売上高は前回公表値に比べて2,000億円増の7兆4,000億円、営業利益は200億円増の2,700億円、税引前利益は700億円増の2,100億円、当期純利益は500億円増の1,000億円とした。さらにネット資金についても、マイナス4,000億円以内としており、「ターゲットに対して、1,000億円以上の改善となり、想定以上のものになる」とした。

(大河原 克行)