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「アップル進出は日本の競争力の証」。JEITA山本会長会見

テレビ市場は底打ち感。国内生産も回復へ

JEITA 山本正已会長

 電子情報技術産業協会(JEITA)の山本正已会長(富士通社長)は、12月16日、電子情報産業の世界生産見通しを発表した。2014年には、日系企業の電子部品・デバイスの伸びが、前年比13%増と最も高い成長を遂げたことを示しながら、「米アップルが、横浜市のみなとみらいに開発センターを設置したことは、日本の競争力があがっていることの証。アップルが、日本の技術力に注目した結果であり、日本の地位が上昇していると考えている。日本の技術がある限り、日本の将来は明るい」などとコメントした。

 JEITAが発表した2015年の電子情報産業の全世界の生産額は、前年比5%増の297兆9,000億円と予測した。

 2015年は、インターネットの入口端末の市場が拡大するとともに、自動車市場の堅調な拡大を取り込んだ電子部品、デバイスが伸張。攻めのIT投資が活発化することなどを要因にあげた。

 JEITAの山本会長は、「電子情報産業は、2011年度を底に4年連続でプラス成長となる。IMFが発表した世界経済実質成長見通しは3.8%増が見込まれるが、電子情報産業は、世界経済の伸びを上回る成長が期待できる」と、同産業が成長基調にあることを強調した。

電子情報産業の全世界生産見通し

 なお、JEITAによる「電子情報産業」とは、AV機器や通信機器、コンピュータおよび情報端末、医用電子機器などで構成される「電子機器」と、ディスプレイデバイスなどによる「電子部品・デバイス」の2つを合わせた「電子工業」と、ITソリューション・サービスを加えたものとなっている。

 電子情報産業の内数となる電子工業(ハードウェア)全体の市場規模は、2015年には前年比5%増の217兆3,000億円、電子部品・デバイスは5%増の74兆6,000億円、ITソリューション・サービスは6%増の80兆6,000億円と予測した。

 電子工業のうち、電子機器は前年比4%増の142兆7,000億円。そのうち、AV機器は3%増の21兆9,000億円、通信機器は6%増の55兆3,000億円、コンピュータ情報端末は3%増の50兆9,000億円、その他の電子機器は6%増の14兆6,000億円。

 また、同様に電子工業の内数になる電子部品・デバイスは、前年比5%増の74兆6,000億円。そのうち、電子部品は4%増の22兆5,000億円、ディスプレイデバイスは10%増の16兆7,000億円、半導体は3%増の35兆5,000億円となった。

 ITソリューション・サービスのうち、SI開発は5%増の23兆9,000億円、アウトソーシングその他が4%増の22兆2,000億円、ソフトウェアが7%増の34兆5,000億円となった。

 一方、2014年の電子情報産業全体では、前年比10%増の284兆円となった。

 そのうち、薄型テレビは、大画面化、高精細化の進展により、前年比21%増の15兆4,689億円。薄型テレビにおける日系企業の生産割合は、全体の約23%にあたる3兆5,673億円で、このうち国内生産は715億円。日系企業の国内生産比率は約2%となった。

 薄型テレビの世界生産は、中国で4Kディスプレイ搭載テレビの販売が開始されたほか、南米でのワールドカップ効果による需要拡大、米国での景気回復を背景に大画面テレビへの買い換えが促進。これによりプラス成長となった。

 2015年は、東欧などの新興国での経済低迷、製品価格の下落などが懸念されるものの、スマートテレビの認知向上などが期待されることから、前年比4%増の16兆1,211億円を見込んでいる。

 薄型テレビにおける日系企業の生産額は、地デジ以降後の反動減が落ち着き、正常化に向かうことから、2014年は出荷台数のプラス成長が見込まれるとしたほか、2015年は、デジアナ変換サービスの2015年3月の終了と、124/128度CS放送における4K商用放送のサービス開始が予定されていることから、4Kディスプレイや、放送通信連携機能を搭載した薄型テレビの普及が本格化。高付加価値機種のラインアップが見込まれることを理由に、前年比4%増の3兆6,931億円と、プラス成長を見込んでいる。

 だが、薄型テレビの国内生産については、国内需要の縮小や、価格競争の激化により、海外委託生産の動きが進行。円安でもその流れを変えられずに、2014年はマイナス成長を見込んだ。しかし、今後の国内需要の回復に伴い、2015年には国内生産は底を脱し、プラスに転じると予測した。

 DVD//BDレコーダー・プレーヤーによる映像記録再生機器は、2014年の世界生産額は5,233億円。世界生産額に占める日系企業の生産割合は約52%の2,713億円と過半数を突破。だが、今後のスマートテレビの普及などに伴い、映像記録再生装置に対するニーズは減少するとみており、2015年は前年比4%減の5,009億円とマイナス成長になると予測した。

 そのほか、成長する品目としては、携帯電話が、スマートフォンの需要拡大、高精細化、新興メーカーによる低所得層への広がりなどで高い成長を予測。電子タブレット端末も企業業務への広がりなどを期待した。また、電子部品・デバイスは、自動車向け、省エネ家電向けの需要が好調で、裾野が拡大すると見込んでいる。

アベノミクスによる回復は2015年度も継続

 一方、電子情報産業における日系企業の世界生産の見通しは、前年比3%増の41兆9,000億円になると予測。「日系企業の生産は、2013年にプラスに転じ、2014年もアベノミクス効果や、PCの買い替え需要に支えられてプラス成長。2015年度も回復基調は継続し、3年連続のプラス成長が見込まれる。日系企業における生産は、海外、国内ともにプラスになると予測している」とした。

日系企業の世界生産見通し
電子工業の国内生産見通し

 電子工業における国内生産は、スマートフォンの大画面化や、ディスプレイデバイスおよび半導体の輸出が増加していることを背景に、2014年には前年比3%増の11兆8,000億円と、4年ぶりのプラス成長となった。

伸びている項目(世界生産)

 「月別に見ても、2013年8月~2014年4月まではプラスで推移している。その後は消費増税前の駆け込み需要の反動があり、減少しているが、輸出はプラスで推移している。国内生産は、2015年も前年比2%増の12兆1,000億円とプラス成長が見込まれる。電子部品・デバイスを牽引役とした回復が顕著であり、4年ぶりに12兆円を超える水準になる」と述べた。

 また、2015年における日系企業の世界シェアは、前年並みの14%となり、「電子部品、ITソリューション・サービス、半導体などの成長に牽引された。日系企業のシェア低下に歯止めがかかっている」と語った。

 一方、日系企業の海外生産比率は前年並みの66%。「2年連続で66%の水準となったが、海外生産比率の増加は頭打ちになったとみている。国内生産が回復するのではないだろうか」とした。

 とくに、スマートフォンの需要拡大に支えられている「半導体」、スマートフォンや薄型テレビの大画面化および高精細化による「ディスプレイデバイス」、レーダーや基地局装置、衛星固定通信の輸出が増加している「無線通信装置」などで国内生産が増加しているという。

 なお、電子機器の海外生産比率は77%、電子部品・デバイスの海外生産比率は51%となっている。

伸びている項目(日系企業生産)
伸びている項目(国内生産)

 さらに、JEITAでは、2010年から開始している注目分野に関する動向調査についても説明。今回は、セキュリティ対策ニーズの高まりを背景に、セキュリティに注目。サイバーセキュリティとセキュリティ機器についての世界市場動向を調査したという。

注目分野サイバーセキュリティー
セキュリティ機器
202X年 街・東京セキュリティ未来像

 これによると、2025年のサイバーセキュリティの世界需要は、16兆9,000億円に達すると予測。今後12年間の年平均成長率は9.4%になるとした。また、セキュリティ機器は2025年には41兆7,000億円の市場規模が見込まれ、12年間の年平均成長率は8.9%。「日系企業が得意とする映像監視機器の需要額は3兆4,086億円が見込まれ、年平均成長率は10%に達する」と予測した。

 そのほか、JEITAとして、2020年の東京オリンピックおよびパラリンピック後のセキュリティの未来像を描いた「202X年 街・東京セキュリティ未来像」を公表したことにも言及した。

 なお、山本会長は、消費税率10%への増税が先送りになったことについては、「政府の考え方に従っていくものだと考えている。JEITAとしては、経済産業省と連携して、対応を協議するなかで決めていきたい」と述べた。

(大河原 克行)