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ネットラジオ局「OTTAVA」、高音質配信や'15年にオリジナルレーベル設立へ

 クラシック専門のインターネットラジオ局OTTAVA(オッターヴァ)は17日、事業ビジョンやロードマップを説明するメディア・プレゼンテーションを開催。その中で、現在Webで実施している無料放送や、ニコニコ動画のOTTAVAチャンネルで実施している高音質放送を超える「次世代音楽プロジェクト」として、より高音質な放送の実現に向けて取り組んでいる事を明らかにした。

クラシック専門のインターネットラジオ局OTTAVA

昨年に“第2の開局”をしたOTTAVA

 OTTAVAは2007年4月に、デジタルラジオの実用化試験放送の1チャンネルとしてTBSが展開、合わせてインターネットでのストリーミング配信もスタートさせた。しかし、昨年TBSがデジタルラジオへの不参入を決定、デジタルラジオの実現に向けた施策を一旦見直すことになり、今年の4月1日に、OTTAVAも6月末で休止すると発表された。

 しかし、リスナーや音楽家、クラシック業界関係者から継続を望む声が上がり、OTTAVAの音源調達先であるナクソスジャパンが商標・ドメインを引継ぎ、運営会社としてOTTAVA株式会社を設立。それから3カ月の準備期間を経て、昨年1月に“第2の開局”を迎えた。今年の1月には千代田区一番町にオフィスを、4月にはスタジオをオープン予定。

ニコニコ動画に開設された「OTTAVAチャンネル」

 さらに、昨年12月にはniconicoのニコニコ動画に、「OTTAVAチャンネル」を開設。通常の無料配信はビットレート64kbpsでの配信だが、OTTAVAチャンネルでは月額540円(税込)の有料配信となる代わりに、128kbpsの高音質配信を実施。ニコ動向けの独自コンテンツも用意するほか、オンデマンド聴取にも対応している。

 このように新生OTTAVAでは、TBS時代の広告収入による運営スタイルから、有料課金モデルも追加。さらに、CDやコンサートなどを自主企画制作したり、オーディオ機器などを販売するeコマースビジネスも展開する運営スタイルに変更。リスナーからもスポンサーを募集する「OTTAVAスポンサーシップ」(1口5,000円)も開始し、既に450人から約500万円のカンパが届いているという。

昨年10月には番組のリニューアルも実施された。月~金曜日の午後7時~11時の生ワイド番組として「OTTAVA Salone」を、日曜日の午後1時~5時のワイド番組「OTTAVA Domenica」などが放送されている

“良い音楽を良い音で”という潮目になってきた

 OTTAVAの佐々木隆一社長は、元々ナクソス・ジャパンの社長であり、音楽のネット配信の著作権処理の指南などでOTTAVAを支援していた“OTTAVA応援団”だったという。しかし、OTTAVAプロジェクトの終了を聞き、「こんなに素晴らしいプロジェクトを続けていく方法が何か無いのかと言っていたら、引き受ける事になっていた」と笑う。

OTTAVAの佐々木隆一社長

 佐々木社長は、「熱心で素晴らしいプレゼンター、そしてリスナーに支えられ、これから大きく発展するだろうという段階でやめてしまうのは勿体無い。IT技術でリスナーとメディアを、そしてリスナー同士も繋ぎ、ヒューマンネットワークを築いていきたい」という。

 さらに、「日本には素晴らしいコンサートホールが沢山あるが、今はホール単体で終わってしまっている。CD化される何倍もの演奏が日本全国で行なわれており、ホールに来たお客さん以外にも聴いて頂けるような技術もある。今は過度にCDに偏っていて、CDとコンサート&ライブの間に垣根があるが、ネットワークとIT技術でそれらを有機的に繋ぎ、日本の音楽シーンを活性化させていきたい」と展望を語る。

 また、音質については、「配信サービスは“何万曲だ”と曲数を競い、音質は二の次になっている。音楽を無料だと思ってしまっている人も多い。逆に、お金を払ってでも音楽の感動を身近に感じたいという人も増え、ハイレゾという言葉も話題となっている。ネットワーク端末で高音質な音楽が聴けるようになってきており、“音質は悪いけれど沢山”ではなく、“良い音楽を良い音で”そういう風に潮目が変わってきている」と、ユーザーニーズの変化がOTTAVAの追い風になると予測した。

OTTAVAのリスナー属性

 なお、総登録者(OTTAVAを聴いた事がある人)は約150万人、月間ユニークリスナー(月に1度は聴く人)は約20万人、アクティブリスナー(OTTAVAサイトをチェックし、情報に反応する人)は約6万人としている。

 リスナーの男女比は、男性56%、女性42%。クラシックのメディアとしては、女性の比率が高いという。年齢層は30代後半から50代前半がメインで、CD購入層やコンサートに通うクラシックファン層と比べると若い人が多いのが特徴。なお、クラシックは家で聴くというイメージが強いが、OTTAVAでは「自宅以外で聴いている」と答えた人が5割近くに達している。CD購入枚数や、コンサートに行く回数も多く、活発な消費行動をするリスナーが多いという。

さらなる高音質化や他プラットフォームでの配信も

 こうした流れや、ユーザーニーズに対応するため、今後はさらなる高音質化も検討。慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科と共に、次世代音楽プロジェクトを立ち上げ、新サービスの準備が進められており、「近いうちに発表できる見込み」だという。

 さらに、Webでの無料配信、ニコニコ動画での有料チャンネルに加え、4月以降は順次、他プラットフォームでの有料配信も予定しているという。

 Webサイトから、ECサイトへ誘導する事で得られるアフィリエイトも大きな収入源になっており、本やパソコン・周辺機器、家電、おもちゃ、ヘルス・ビューティーなど、様々な商品が購入されているという。

 コンピレーションCDも販売しているほか、今後はOTTAVAのノベルティ商品や、コンポ、スマートフォンを天面に置くだけで音が出る小型スピーカーなどをセレクトし、販売していく予定。

スマートフォンを上に設置すると音が出るスピーカー
OTTAVAノベルティのバッグは、アナログレコードが入れやすいサイズを意識している

 さらには、2015年に独自のレーベル設立も目指している。あまり知られていないが、実力のあるアーティストを発信するレーベルとして検討されており、OTTAVAでのパワープレイや、サロン・コンサート、レギュラー番組、音源リリースと、音源を販売するだけでなく、放送をからめた独自のアピールも行なっていく。レーベル名は仮称「OTTAVA Records」。

 クラシック情報のニュースサイト「クラシック・ニュース」とも連動。アーティストへのインタビューや、コンサート/ニュースリリース情報などを中心に、連動した展開が企画されている。

(山崎健太郎)