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パナソニックの4K/60対応カムコーダ“赤いDVX”が生まれた理由とは?
(2015/4/21 09:35)
パナソニックが、放送/映像制作関連の国際展示会「2015 NAB Show」で披露した製品のうち、海外メディアを含む多くの来場者が注目したのが、4K/60p対応の小型カムコーダ「AG-DVX200」。4/3型のMOSセンサーを搭載し、光学13倍ズーム/F2.8のライカディコマーレンズの一体型モデル。そして特徴的なのが、側面カバーの鮮やかな“レッド”だ。
「レンズ一体型」や「レッド」の採用、そしてターゲット層などについて、パナソニックのAVCネットワークス社 イメージングネットワーク事業部 プロAVシステムBU 宮城邦彦BU長らが説明した。
「AG-DVX200」は、'02年に業界初の24p対応DVカメラとして発売された「AG-DVX100」から12年以上を経て登場した、“DVX復活”のモデル。4/3型センサー搭載の4K/60pカメラは世界初としている。'15年秋に発売予定で、価格は5,000ドル以下の見込み。
'02年に“デジタルシネマ本格参入”を表明した松下電器産業(現パナソニック)が発表したのが、当時世界初となったVariable-Frame-Rateカムコーダの“VariCam”(AJ-HDC27F)。720/60pでDVCPRO HDテープに記録するというモデルだった。その約8カ月後に、初の24p対応DVカメラとして登場したのが先代DVXの「AG-DVX100」。当時のVariCamが約740万円だったのに対し、DVX100は約50万円。デジタル制作の導入期という背景もあり、多くのユーザーを獲得したという。
4K対応の業務用カムコーダとしては、「若干遅い参入」としながらも、'14年にスーパー35mmセンサーのハイエンドモデル「VARICAM 35」を発表。今回NABで発表された「AG-DVX200」は、機動力の高さなどを特徴とし、「VARICAM 35の理想的なコンパニオンカメラ(サブカメラ)」としている。
35mm換算の焦点距離は4K(4,096×2,160ドット)が29.5~384.9mm、フルHDは28~365.3mm。5軸ハイブリッド手ブレ補正なども備える。60p映像は3,840×2,160ドットで、SDカードにMP4/MOVで記録。フルHDの120p記録も可能。新VARICAMシリーズから継承されたV-Log L(12ストップ)を搭載する。
日本での価格や詳細な発売日は明らかにしていないが、11月18日に幕張メッセで開幕する国際放送機器展「Inter BEE 2015」に向けて、価格なども発表される見込み。
あえて“レンズ一体型”と“赤”を採用をする意味
宮城氏は、DVX200が生まれた理由の一つとして「4Kになって、撮り方が難しくなったこと」を挙げる。「センサーが大判になり、被写界深度が浅い撮り方が主流となってきた中、かつてのDVXのような“シネマっぽい4K”を撮るにはどうしたらいいかということを考え抜いた結果、あえて我々はレンズ一体型にした」と説明する。
「出展して、『レンズは別が良かった』との意見もたくさんあったが、それは実際使って判断いただければ。一体型だからこそのメリットを必ずこの中に入れていきます。具体的にいうと、フォーカスに合わせにくかったところもAFでピッタリ合わせられますし、手ブレ補正など、レンズとカメラが一体だからこそできる技術がここに込められます」と自信を見せている。
同社商品企画部 宮沢哲也部長は「レンズ一体型のいいところは、きちっとフォーカスがとれる、ズームのたびに光軸がずれないことなど。我々がENGで培ってきたものを、上手く制作に取り込んでいきたい」と説明。
本体とのバランスなどを考慮し、フォーサーズのMOSセンサーに合わせて使い勝手のいい13倍ズームレンズを新開発。それ以上のズーム倍率になると、持ち歩きには厳しいサイズになったという。DVX200のコンパクトなボディについては「モビリティの良い“ラン&ガン”シューティングスタイル」と説明。ターゲットとして「以前のDVX100ユーザー」を挙げており、ウェディングや、独立系の映像制作会社などを想定しているという。
そして、NAB会場でも他の出展社やマスコミなどを含め反響が大きかったのが、DVX200本体デザインのアクセントになっている、側面カバー部の“クリムゾン・レッド”。会場に置かれたパネルやパンフレットも赤を基調としたもので、「THE DVX 4K」というキーワードにより鮮烈なデビューを印象付けている。
同社のロゴなどを見ても分かる通り、パナソニックのコーポレートカラーはブルーであり、レッドといえばキヤノンなど他社を思い浮かべる人も多いだろう。パナソニック内でも「青がいい」との意見があり、実際に試してもみたとのことだが、宮城氏は「失敗したらその時はその時。とにかく1回イメージを変えよう」として踏み切ったという。シンプルな理由として「一番目立ってカッコよかったのが赤」とも説明する。
宮沢氏も「パナソニックは真面目な商品が多かったが、少しイメージを変えるためにも、冒険をしてみた。色だけでなく、カーボンテクスチャを使うことで、スタイリッシュに仕上げた」としている。
なお、NABで展示されていたのは、撮影した絵を確認できる実機ではなかった。実際はある程度動くところまで開発は進んでいるものの、展示会に出せる絵作りまでは仕上がっていなかったためだという。
宮城BU長は、まだ今回のDVX200が終着点ではないという意味で“4K制作の第2弾”とした。VARICAM 35に続くモデルという意味であり、それ以上は詳しく語られなかったが、その先のモデルについても既に何らかの準備が進められていることが期待できそうだ。