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カスタムイヤフォン作りがもっと気軽に? 「3D耳型スキャン」を体験した

 10月24日(土)と25日(日)の2日間、東京・中野の中野サンプラザで「秋のヘッドフォン祭 2015」が開催されている。Westone(テックウインド)ブースでは、ユーザーの耳型を採って作成するカスタムイヤフォンの購入者に対して、3Dスキャナーを使った「耳型スキャン」体験も実施している。今回、会場で耳型スキャンを体験することができた。

低価格なカスタムイヤフォン「Sシリーズ」

 ヘッドフォン祭のWestoneブースでは、約34,000円からというカスタムイヤフォン(カスタムイヤモニター)の低価格モデル「Sシリーズ」や、ハイエンドモデル「ESシリーズ」などが展示されている。

 現在の一般的なカスタムイヤフォンは耳穴にシリコンなどを流し込んで型をとり、それを元に作られている。一方、光を発する機械を耳孔に挿入し、光の反射を用いて耳孔の形状をデータ化する3Dスキャナも活用されており、既に米国では、3Dスキャナのデータを元にイヤフォンを作るサービスも始まっているという。

 今回のヘッドフォン祭では、カスタムイヤフォンを購入した人などを対象に、Westoneブースで3Dスキャナーによる「耳型スキャン体験」を実施。実際のカスタムイヤフォン製作はインプレッション採取による型を使用するが、今後普及が期待される3Dスキャンがどういったものかを試すことができるようになっている。

筆者が昨年、インプレッションで耳型を採取した時の様子と、採取した耳型

 なお、5月に大阪で行なわれた「ポタフェス大阪」では、Westoneのカスタムイヤフォンなどの購入者に対して3D耳型スキャンのサービスを行なったが、今回のような東京でのイベントで実施するのは初となる。

3Dスキャンに使われた道具

10分ほどで簡単に耳型採取。今後の普及に期待

 スキャンを始める前に、まずは耳穴を掃除。アルコールのような液体を付けた綿棒で掃除した。その後に、耳の部分に穴が開いたヘッドフォンのようなものを装着。これは、スキャンする際に座標となるものだ。

ヘッドフォンのような器具を頭にかぶり、穴から耳を出す

 そこから先は、スキャンされている本人としては見えていないので何が起きているか正直わからない。そこでスキャン中のモニタリング映像を見ると、カメラからの耳の中の映像と、作成された3Dデータが同時に表示されているのが分かる。最初は大まかに耳の内部をなぞるように型が採られ、最後に微調整として隙間が埋めるように3Dデータが作られていく。

使用されたスキャナ

 写真で見ると耳に強い光が当たっているようだが、熱さなどは特に感じない。時折、スキャナの細い先端が耳穴に触れることはあるが、インプレッションを注入する方式に比べると耳に触る回数は圧倒的に少ない。

採取中の様子。こんなに光が当たっているとは自覚していなかった
モニタリング中の映像。カメラからのリアルタイム映像と、スキャンされたデータが同時に表示されている

 なお、今回の体験では、耳型を採る際に口にくわえる「バイトブロック」を使用しなかった。口を開けた状態にすると耳穴もわずかに広がり、それに合わせたサイズの型が採れるため、口を開けてもフィット性が損なわれないのがバイトブロックを使用する理由。ただ、アーティスト以外のユーザーによっては、イヤフォンを着けて口を大きく開ける機会がそれほど多くないため、逆に閉じたままで採りたいという人もいるとのことだ。

耳穴の形になった

 そうこうしているうちにスキャンは終了。両耳合わせても10分程度だった。以前、インプレッションを採ったときも特に不満はなかったが、時間や手間、耳への負担のどれをとっても、スキャンの方が楽だと思う。現在はスキャナ自体が高価なため、普及は簡単ではないかもしれないが、今後これが主流になれば、耳型をデータとして管理でき、カスタムイヤフォン作りのハードルもいまよりぐっと下がりそうだ。

 Westoneが3Dスキャンでの耳型採取に取り組んでいるのも、ユーザーの裾野を広げることが大きな目的だという。同社は補聴器の製造も古くから手掛けているが、補聴器の業界では既に3Dスキャナの耳型採取は進んでいるとのこと。

 耳穴の形や大きさは加齢によっても変化が起きるので、1回採取すればずっと同じ型が使えるというものではない。2回目を採りたいといった場合にも、今より気軽にスキャナで作成できるようになれば、カスタムイヤフォンを作る機会ももっと増えるかもしれない。

(中林暁)