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非磁性体パネルなどコストを音質に全投入。マランツ「SA/PM-14S1」のSEモデル

 ディーアンドエムホールディングスは、マランツブランドの新製品として、既発売のSACDプレーヤー「SA-14S1」と、プリメインアンプ「PM-14S1」に、音質を高めるアップグレードを施したスペシャルエディション「SA-14S1SE」、「PM-14S1SE」を7月中旬に発売する。価格は各29万円。どちらも100台の限定モデルとなる。

上から「SA-14S1SE」、「PM-14S1SE」

SEモデルと通常モデルの違い

 両モデルとも、SEがつかない通常モデルは各24万円であるため、SEモデルは5万円高価になっている。

「SA-14S1SE」、「PM-14S1SE」の使用イメージ

 マランツは他社に先駆け、古くからベースモデルに手を入れたリミテッドエディションを展開しているが、型番に“SE”をつけたモデルは90年に投入したCD-99SE、PM-88SE、SD-66SEが初めて。それ以降、様々なSEモデルを投入している。近年はSEモデルは発表されていなかったが、「2005年のSA/PM-13というモデルは、事実上15のSE版であり、考え方は継承してきた」(ディーアンドエムホールディングスのシニアサウンドマネージャーの澤田龍一氏)という。

ディーアンドエムホールディングスのD+Mシニアサウンドマネージャーで、マランツブランド アンバサダーの澤田龍一氏

 こうしたSEモデルの考え方について、澤田氏は、「コストは気にせず、開発者が自ら手に入れて、“もしこのモデルを自分用に使うなら、こういう風にしちゃおう”と開発したのがSEとモデル」と説明する。「通常、5万円プラスしたモデルとなると、どうしても機能を強化する方向になる。しかし、スペックやフィーチャー、回路を変えず、音質に関わるところだけに追加のコストをかけ、感覚的な満足度をアップさせたモデル」だという。

 2モデルで強化ポイントは共通している部分が多い。トップパネルが1.2mm厚の鉄板から、5mm厚のアルミ板に変更されている。厚みが増す事の利点に加え、素材が磁性体から非磁性体になる事で、音質面でより広い空間表現が可能になるという。フロントパネルにはSpecialEditionのロゴマークも付けられる。

トップパネルが分厚くなり、素材が非磁性体に

 脚部もアルミダイキャストからアルミブロックの削り出しに変更。「強度は変わらないが、純度が高いので、振動を与えた時の振動減衰特性が綺麗になり、澄んだ音になる」という。

インシュレーターもアルミブロックからの削り出しに

 さらに、背面の端子部にショートプラグを搭載。プレーヤーは同軸デジタル入力端子に、アンプはPhono入力にそれぞれ取り付けた状態で出荷される。これにより、ノイズ流入を抑え、聴感上のSN比を向上させるという。

 モデル個別の強化点としては、SA-14S1SEのドライブメカエンジンに、14S1と比べ、さらに振動をコントロールする技術を投入。より正確なデータ読み出しを可能にしたという。

 PM-14S1SEの電源トランスには1.5mm厚のアルミケースと、ケース内に配したコアリングによる二重シールド構造の大型トロイダルトランスを搭載し、巻線にはOFCを使っている。この電源部のブロックコンデンサに、ニチコン製の専用品を採用。容量を14S1の15,000μF×2から、20,000μF×2に向上させた。ブリッジダイオードには20Aの大容量パーツを使い、電源インピーダンスを下げ、瞬発力を向上させている。

 また、パワーブロックの下に配置されているパワートランジスタに、PM14S1SEでは純銅のカバーを追加。曲げた板で押さえ込む形になり、振動を抑えつつ、ノイズのシールド効果もあるという。

パワーブロックの下に配置されているパワートランジスタに純銅のカバーを追加

 その他の仕様は、通常モデルとほぼ同じ。

音の違いを聴いてみる

 まず、通常モデルの組み合わせとしてSA-14S1+PM-14S1を聴いてみる。楽曲は、ジェニファー・ウォーンズのSACDアルバム「Well 」の1曲目「Well, The」だ。

 マランツらしい、質感が豊かで、音圧や低域の深さもキッチリと出ている。音の広がる空間に枠のような制約は感じられず、美しいサウンドだ。

 この通常モデル組み合わせのプレーヤーを、SEモデルに変更すると、高域の伸びが格段にアップする。もともと音場が広いサウンドだが、天井までスッと自然に音が立ちのぼる。音場もより深くなっており、奥行き方向の見通しがハッキリわかるほど向上している。

 アンプもSEに変更すると、この傾向がさらに進化。音が気持ちよく広がり、奥行き、高さだけでなく、低域もより深くなる。サラウンドのように自分が包み込まれて気持ちがいい。また、低域のトランジェントも良くなっており、ドラムにもキレが出る。スピーカーの駆動力もアップしているのがわかる。

SA-14S1SEの主な仕様

 SACD/CD再生に加え、USB DAC機能も搭載。PCMは192kHz/24bitまで、DSDは5.6MHzまでサポートする。ASIOドライバによるネイティブ再生、およびDoP(DSD Audio over PCM Frames)により、PCからのDSD信号を受信して再生できる。その際にはPCのクロックと同期せず、SA-14S1本体のクロックで制御を行なうアシンクロナスモードに対応。PC側のジッタに左右されない、ジッターフリー伝送が可能。

SA-14S1SE

 PCからのノイズ流入を排除するために「コンプリート・アイソレーション・システム」を搭載。18回路におよぶ高速デジタルアイソレーターと、2系統のリレーにより、USB B入力インターフェイスと、デジタルオーディオ回路間の信号ライン、さらにグラウンドも電気的に絶縁。ノイズの回り込み、グラウンド電位の変動を排除している。

 ハイレゾ対応の超低位相雑音クリスタルのデュアルクロックも装備。44.1kHz系、48kHz系、それぞれに専用のクリスタルを搭載する事で、入力信号のサンプリング周波数に最適なクロックを供給。ジッタを抑制している。DACは、DSDのダイレクト変換と192kHz/24bitのPCMに対応するTI・バーブラウンの「DSD1792A」。

 同軸、光デジタル入出力を各1系統搭載。ジッタリデューサーによりジッタを低減してから、DACに送られる。なお、同軸/光デジタルも、192kHz/24bitまでサポートする。

 DAC以降のアナログステージには、独自の高速アンプモジュール「HDAM」と、「HDAM-SA2」を使ったフルディスクリート構成を採用。初段のHDAMを使ったI/V変換アンプと、HDAM+HDAM-SA2による電流帰還型フィルタアンプ兼送り出しアンプの2段構成とした。DACのディファレンシャル出力を受けるI/V変換アンプまでは完全バランス構成。次段のディファレンシャルステージで差動合成を実施。出力端子には、L/Rチャンネル間のグラウンド電位差を排除する「ゼロインピーダンス・プレート」も配置する。

 ヘッドフォン出力も装備。ディスクリート・ヘッドフォンアンプを搭載しており、HDAM-SA2による高速電流バッファアンプにより、メインのアナログオーディオ出力回路との相互干渉を抑制している。スルーレートの低いオペアンプICは使っていない。

 出力端子は、アナログ(RCA)×1、同軸デジタル×1、光デジタル×1、ヘッドフォン×1。入力は、同軸デジタル×1、光デジタル×1、USB A×1、USB B×1。リモート端子も備えている。消費電力は37W。待機時消費電力は0.3W。外形寸法は440×419×123mm(幅×奥行き×高さ)。重量は15.3kg。リモコンが付属する。

SA-14S1SEの背面

PM-14S1SEの主な仕様

 プリアンプ部にHDAM-SA2モジュールを使った、CD専用の入力バッファと、その他のライン入力用バッファを搭載。バッファアンプにより、入力信号を低インピーダンス化する事で、左右チャンネル間や、各入力ソース間の相互干渉を低減。ハイスルーレートなHDAM-SA2、HDAM-SA3を各回路に使うことで、ハイスピードでチャンネルセパレーションに優れた電流帰還型プリアンプを実現したという。

PM-14S1SE

 音質チューニングのために、ボリュームアンプ初段のHDAM-SA3の素子として、低歪でSN比に優れた、フェアチャイルド・セミコンダクターのトランジスタを採用。

 MICRO ANALOGSYSTEMSのボリュームコントロールIC「MAS6116」と、HDAM-SA2、HDAM-SA3を使った、ハイスピードな電流帰還型アンプ回路で構成された、デジタル制御の可変ゲインアンプによって、ボリュームを調整する「リニアコントロール・ボリューム」も備えている。

 F.C.B.S.(Floating Control Bus System)により、最大4台までのPM-14S1/14S1SEのボリュームを連動させる事もでき、複数台のアンプを使ったバイアンプドライブやマルチチャンネルシステムの構築にも対応できる。

 独自のコンスタント・カレント・フィードバック・フォノイコライザも搭載。オープン・ループ時の周波数特性をRIAAカーブとし、CR型のRIAAネットワークを介して帰還をかけることで、負荷帰還を一定にするのが特徴で、低域から高域までキャラクターが変化しないという。

 定格出力は90W×2ch(8Ω)、140W×2ch(4Ω)。出力帯域幅は5Hz~40kHz。パワー部には、高い安定度を持つV/Iサーボ方式の電流帰還型パワーアンプを採用。入力回路とDCサーボ回路には、HDAM-SA3を使用。オペアンプを排除したフルディスクリート構成により、ハイスピード化を徹底した。

 位相補償回路のコンデンサには、純銅箔とPPS樹脂を使った高音質フィルムコンデンサ「ブルースターキャップ」を使用。

 入力端子は、アナログアンバランス×5、Phono×1、パワーアンプダイレクト×1。出力は、レックアウト×2、プリアウト×1、ヘッドフォン×1。リモート端子なども備えている。消費電力は220W、待機時消費電力は0.2W。外形寸法は440×457×127mm(幅×奥行き×高さ)、重量は19.1kg。リモコンを同梱する。

PM-14S1SEの背面